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ラビン人気を再び盛り上げるために狂言暗殺
オスロでラビン・イスラエル元首相の追悼式典
4年前、パレスチナ和平に反対するユダヤ人学生に暗殺されたラビン・イスラエル
元首相の追悼式典が2日、ノルウェーの首都オスロで開かれた。和平推進を目指す首
脳外交の場を提供したオスロは、しばし、使命に殉じた故人への思いに浸った。
バラク・イスラエル首相は、ラビン氏が5年前、同じ会場でノーベル平和賞の授賞
式に臨んだ際、戦争で死んだ兵士たちに思いをはせて「その死に意味を持たせるため
に和平を選んだ」と語ったことを挙げ、「われわれは、あなたの死に意味を持たせる
ことを約束する」と語った。平和賞を共に受賞したアラファト・パレスチナ自治政府
議長は、ラビン氏の遺影に深々と頭を下げ、敬礼して「自らの血をもって信念を守っ
た」と故人をたたえた。そして「隣人であるイスラエル国民に、和平への道を共に歩
こうと呼びかけたい」と語った。「和平に反対する人々は夫を暗殺したけれども、そ
の志は生きている」と語ったレア・ラビン夫人は、前日のノルウェー国王による追悼
晩さん会でバラク、アラファト両氏に向かって「夫が手がけ、そのために命という高
い代償を払った和平の決着に、正しい道筋がつけられるかどうかは、あなた方にかか
っています」と述べた。2人が、この要望にどうこたえるか。困難な課題を抱える最
終地位交渉をめぐる話し合いが、式典後のクリントン米大統領を含む3首脳会談から
また始まる。
これは邪悪な、しかも見事な謀略だ
「ラビン首相暗殺について、イスラエル政府のシャムガール委員会は単独犯説をとっ
ている。これは、下降気味だったラビン人気を再び盛り上げるために狂言暗殺が仕掛
けられたという事実を隠蔽するものだ。犯人とされたイガル・アミールは、イスラエ
ル諜報界にいる黒幕の支持を受けて、単独犯の役を演じたに過ぎない。アミールが撃
ったのは空砲だった。それに、三発撃ったとされているが、実際は一発だけだった。
現場で発見された薬莢が、イスラエル警察によって弾道テストにかけられたが、アミー
ルの銃の弾道とは一致していない。ラビン首相の体には出血が認められなかった。さ
らに、首相が出席した平和集会のために、警察の手で交通が遮断されていて、病院ま
では車で45秒で行けるはずだったのに、ラビン首相を乗せた車が8分ないし12分
も要したことも、理屈に合わない。熟練した運転手が、病院までわざわざ時間をかけ
て車を走らせている途中で、ラビンは二発の銃弾を撃ち込まれた。しかも、それは、
首相のボディガードであるヨラム・ルビンの銃から発射されたものだった。病院に着
いたときには、この銃は姿を消し、二度と発見されなかった。首相の体から摘出され
た銃弾も、11時間の間、行方が知れなかった。ルビンは後に自殺を遂げている。も
し私が事実を語れば、体制が完全にひっくり返る。この国を破壊するにじゅうぶんな
ことを、私は知っている。」(イスラエルのジャーナリスト、バリー・シャミシュの
主張)
シャミシュは、首相の救命手術に尽力した三人の外科医と話をし、アミールが発砲
したとき現場に居合わせた警察官たちの証言についても、検討を重ねている。警官た
ちは全員、車に乗せられたイツハク・ラビンの体には外傷が見あたらなかったと証言
した。外科医たちはこの証言を認めようとしない。ようやく病院に着いたときのラビ
ン首相は、明らかに胸に受けた大きな傷の痛みに喘いでおり、首の下方には脊髄のひ
どい損傷が認められたという。医師たちは、銃で撃たれた傷の場合、現場で負傷の兆
候が見られず、病院に着いたときに複数の損傷が表れることなどあり得ないと断言す
る。シャムガール委員会は、このような外傷があったことを示す証拠はないと結論づ
けた。それ以降、外科医たちはこの問題について論じることを拒んでいる。アミール
が首相を撃ったときそばにいた、あるシン・ベットの捜査官は「警官が聴衆に向かっ
て、落ち着けと叫ぶのが聞こえました。これは空砲だから、と・・・」と非公式の法
廷で証言している。同じ審理において、レーア・ラビンは、夫が至近距離から撃たれ
たにもかかわらず、よろめいてくずおれたりはしなかったと述べている。「夫はちゃ
んと立っておりましたし、異常は見受けられませんでした」。彼女はまた、自分が病
院に到着してから一時間ものあいだ、夫に会うことを禁じられたと言っており、シャ
ミシュによれば、諜報の高い地位にある人物から「すべて予定通りのことであり、心
配には及ばない」という説明を受けたらしいラビン首相の未亡人は、この件について
も、また夫の暗殺に関連したいかなる問題についても、公的な発言をかたくなに拒ん
でいる。
シャミシュは、首相が収容された病院に勤務する17人の看護婦と同じく、未亡人
も沈黙を強いられていると睨んでいる。「これは邪悪な、しかも見事な謀略だ。ラビ
ン首相は、人気回復をエサに、狙撃の的となるよう説得されたのだ。首相が防弾チョ
ッキを身につけていなかった理由もそこにある。つかの間の脚光を浴びる役者として、
アミールが慎重に選ばれた。彼は黒幕に操られる道具だった。自分の撃つ空砲が、病
院に行く途中でラビン首相を暗殺するのにどう利用されるのか、つゆほども知らなか
っただろう」。これらシャミシュの証言は全てインターネットで公開されている。
【『憂国のスパイ』原題GIDEON'S SPIES 198-200頁】