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平成11年10月26日 夕刊フジ
須田慎一郎が抉る金融クライシス
資産上位10位に邦銀3行入りは目立ちすぎ
米がニッポンメガ・バンクをけん制
第一勧銀、富士銀、興銀という大手3銀行の統合、あるいは住友銀、さくら
銀の合併などにより、ようやく復活の兆しを見せ始めてきた日本の金融業
界だが、ここに来て早くも米国サイドがこうした"メガ・バンク"の登場をけ
ん制するかのような動きを見せ始めている。「それというのも、米国の中
央銀行であるFRB(米運邦準備制度理事会)が、ここにきて東京三菱銀行、住
友銀行、三和銀行、富士銀行の邦銀四行をラージ・コンプレックス・バンキ
ング(LCBO)に指定してしまったのです」(金融監督庁幹部)
このLCBOとは、総資産規模十憶ドルが以上、資産規模のランキングで三十
位以内の銀行で、米国内外で多様な業務を行う銀行、と定義づけられてい
る。そしてLCBOをそのまま日本語訳にすると"大規模複合銀行"ということ
になる。「FRBは今年夏、米国内に拠点を持つ約二十五の銀行をLCB○に指
定しているのです。そして、十月に入って邦銀四行を新たに指定してきたの
です。FRBは、 LCBOについては年一回の割合で実施している通常検査に加
えて、各行専任の検査チームを置金融、四半期ごとに経営内容をチェックす
るとしています」(同) 今朝未明、ようやくコンタクトの取れたニューヨーク
連銀関係者が言う。「あくまでも一般論としてだが、合併や統合などで急激
に規模や業務が拡大している金融グループがある。そうした金融グループが
経営破たんに陥ったり、マーケットから突然、退場したりすると、国際シス
テムを大きく混乱させることになる。そうした事態を事前に防止するため
に、LCBOについては他の金融機関とは違った形の監督基準が必要だ、とい
うことだ。LCBOに指定された.金融機関は、より広範囲で詳細な情報開示が
求められることになるだろう」
そして、こう付け加える。「そもそもFRBがLCBOに対して新しい監督基準
を設けようとした背景には、大手ヘッジファンド、LTCMの経営危機をきっ
かけに、米銀のヘッジファンドに対する投融資状況をチェックする、とい
うことがあった。ところがここへ来て、その目的はメガ・バンク化への道を
急ピッチで進みつつある邦銀の動きを今のうちにけん制しようというもの
にかわりつつある」つまりFRBは前述の四邦銀、そして合併、統合によって
誕生する新銀行に対して、新たな規制の網を掛けてこようとしている、と
言っていいだろう。
大手マスコミは、こうしたFRBの動きについては、.ほとんど報じていな
いのが実情だが、これはまさに驚くべきことだと言っていいだろう。「第一
勧銀、富士銀、興銀の三行が統合することによって誕生する新銀行の総資産
は、今のところ世界ナンバーワン。住友銀とさくら銀の合併によって誕生す
る新銀行の総資産は世界三位ということを考えると、FRBが警戒するのも致
し方ない。しかも東京三菱銀が世界八位に位置しており、総資産上位十行の
うち、邦銀勢は三つあるのに対し、米国勢は二行に過ぎない。要はオーバー
プレゼンス(目立ちすぎ)ということだろう」(大手都銀役員)