Tweet |
平成11年10月19日 夕刊フジ
須田慎一郎が抉る金融クライシス
悪らつ商工ローン資金繰り心配なし!?
メリル、パリバ批判よそに調達支援
「われわれは自分でリスクを背負い、もうけた分は税金を払い、積極的に雇用す
る。一方で銀行は国民の税金が導入されているのに(中小企業の融資姿勢で)批判
されない。議論が逆だ」今や完全に社会問題化した観のある"商工ローン問題"に
関して、各方面から批判の集中砲火を浴びた格好となっている松田一男日栄社長
が、ある銀行業界紙紙上で、前述のような"暴言"を吐いたことから、銀行業界か
ら猛反発を食っている。「要は『銀行が貸し渋りをするから日栄をはじめとする
商工ローンの業容が拡大しているのに、そのことで批判を受けるいわれはない』
とでも言いたいのでしょう。私も"松田発言"を紹介する記事を読みましたが、そ
の中に一片の反省の言葉がないことに驚かされてしまいました」(大手都銀役員)
そもそも"商工ローン問題"の本質は大別して三点ほどある。その三点とは、1,
高金利2,過剰融資3,いわゆる"包括根保証契約"に代表される詐欺的保証シス
テム、と言っていいだろう。「その三つの問題点に加えて明らかに貸金業規制法
に抵触するとみられる激烈な取り立てが問題点としてあげられるでしょう」(金融
監督庁幹部)
こうした状況を受けて、行政-金融監督庁、各財務局(金融監督庁と大蔵省の出先
機関)、捜査当局-各都道府県警本部が連携する形で、商工ローン包囲網が構築さ
れつつあることは、当コラムでもすでに紹介しているところだ。そして、こうし
た状況に加えて、大手都銀を中心に商工ローンとの取引から撤退しようという動
きも水面下ではあるが、徐々に出てきているのが実情だ。「対マスコミ的には
『個別企業の問題には答えられない』としていますが、行内的には日栄をはじめ
とする商工ローンとの取引は順次、全面的に解消するということで合意をみてい
るのです。その理由として.は、商工ローンとの取引は、コンプライアンス(法令順
守)の観点からみて大いに問題があるということです」(大手都銀幹部)まさに完全
に追い詰められた状態にある商工ローン各社だが、その一方で冒頭の"松田発言"か
らもうかがえるように、開き直りともいえる、ある種の余裕が感じられることも
事実だ。それはナゼなのか?「その理由は、上場している日栄、商工ファンドな
ど、商工ローン大手の資金繰りについては、そのほとんどを外資が支えているた
め、日本国内の"商工ローンバッシング"の影響がまったくといっていいほど受け
ないからです」(大手都銀幹部)
批判の矢面に立つ日栄は今年八月末、融資資金の調達を名目に、総額二百五十億
円にのぼるノンバンク社債を発行しているが、その全額をメリルリンチが引き受
けているのである。「しかも、日栄は今年七月にも自社が抱える商工ローン債権
を証券化することで五億ドル(約五百三十億円)にものぼる資金を調達しているの
です。そして"アレンジャー"として、この証券化に関する一切合財を請け負った
のがパリバ銀行(仏)だったのです」(大手都銀役員) もうけるためなら"悪魔にも
魂を売る"こともいとわない、"外資"の面目躍如といったところだろう。一連の商
工ローン問題の解決に向けては、こうした"外資"の経営姿勢も問題にせざるを得
ないだろう。