『エシュロン』(Echelon)を陥れるハッカーたち

 
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投稿者 倉田佳典 日時 1999 年 10 月 08 日 09:39:57:

『エシュロン』を陥れるハッカーたち
James Glave

10月6日 3:00am PDT  モサド。爆弾。ダビディアン。MI5。

 もし、あちこちに散らばっているサイバー活動家グループの直感が正しければ、上に挙げた単語は、米国家安全保障局(NSA)が一部を管理している世界的なスパイ組織のキーワード認識フィルターにひっかかってしまう。

 まるで神話のように実体の見えない世界規模のコンピューター・スパイ・ネットワーク、『エシュロン』(Echelon)は、テロリストの疑いのある者や敵側の通信を探り出すために世界中のあらゆる電子メール、パケット通信、電話での会話などをチェックしていると報じられている。

 ひとたびこれらの特定のキーワードが電子の雲の中から引っ張り出されると、その会話や電子メールは記録されてしまうと言われている。

 プライバシー擁護活動家たちは、何年もの間、自分の署名ファイル中にこれらの単語を入れてオトリとして使用してきた。しかし10月21日、『ハックティビスト』メーリングリストから生まれた活動家グループが、もっと大規模にエシュロンを罠に掛けようとしている。

 「(エシュロンが)何の役に立つのか?」と、人権擁護派の弁護士であり、米国公正連盟(American Justice Federation)の議長であるリンダ・トンプソン氏は言う。

 「そうすることで犯罪者を捕まえられると主張したいのかもしれないが、誰かがどんな人の会話をも盗聴できるようにすべきだというのは、常軌を逸している」

 「犯罪者は、犯罪を犯してから逮捕されるべきだ。警察は、たった2%(の犯罪絡みの通信)を傍受する目的でわれわれ全員のプライバシーを侵害するために存在しているわけではない」とトンプソン氏。

 トンプソン氏については、1994年の名誉毀損反対同盟の報告には、「国民軍運動に関しては全国的に影響力のある人物」と述べられている。また、米国公正連盟についても、同報告は「新世界秩序を無力化し、一般米国市民に真実を明らかにすることに力を注ぐ団体」と評している。

 名誉毀損反対同盟によると、トンプソン氏は、全50州の国民軍と接触があると主張しているという。

 トンプソン氏は、米国公正連盟のニュース・サービスの記者であるダグ・マッキントッシュ氏やハッキング活動家メーリングリストのコミュニティーのメンバーたちとともに、このシステムに関心のある人たちに対して、10月21日に引き金となる単語のリストを自分の電子メールに付記するように呼び掛けた。

 彼らは、特に以下のキーワードを提案している。

 FBI(米連邦捜査局)、CIA(米中央情報局)、NSA(米国家安全保障局)、IRS(米国税庁)、ATF(アメリカ教育連盟)、BATF(米アルコール・タバコ・火器局)、DOD(米国防総省)、WACO(ウェーコ)、RUBY RIDGE(ルビーリッジ)、OKC(オクラホマシティー)、OKLAHOMA CITY(同左)[以上4つテロ事件があった場所]、MILITIA(米国民軍)、GUN(銃器)、HANDGUN(拳銃)、MILGOV(軍事政府)、ASSAULT RIFLE(突撃銃)、TERRORISM(テロリズム)、BOMB(爆弾)、DRUG(薬物)、HORIUCHI、KORESH(コレシュ)[米国の宗教家]、DAVIDIAN(ダビディアン教団)、KAHL、POSSE COMITATUS(民兵隊壮年団)、RANDY WEAVER(ランディー・ウィーバー)、VICKIE WEAVER(ビッキー・ウィーバー)、SPECIAL FORCES(特殊部隊)、LINDA THOMPSON(リンダ・トンプソン)、SPECIAL OPERATIONS GROUP、SOG、SOF(以上3つ特殊戦部隊)、DELTA FORCE(デルタ部隊)、CONSTITUTION(憲法)、BILL OF RIGHTS(権利章典)、WHITEWATER(ホワイトウォーター)、POM(パークオンメーター)、PARK ON METER(同左)[イランコントラに関わった企業]、ARKANSIDE、IRAN CONTRAS(イランコントラ)、OLIVER NORTH(オリバー・ノース)[イランコントラ関係者]、VINCE FOSTER(ビンス・フォスター)[クリントン大統領弁護士]、PROMIS、MOSSAD(モサド)[イスラエルの情報機関]、NASA(米航空宇宙局)、MI5(英国諜報部)、ONI(海軍情報部)、CID(ロンドン警視庁刑事部)、AK47[旧ソ連製突撃銃]、M16[米軍突撃銃]、C4[爆薬]、MALCOLM X(マルコムX)、REVOLUTION(革命)、CHEROKEE(チェロキー)、HILLARY、BILL CLINTON(ヒラリー/ビル・クリントン)、GORE(ゴア)、GEORGE BUSH(ジョージ・ブッシュ)、WACKENHUT、TERRORIST(テロリスト)、TASK FORCE 160、SPECIAL OPS、12TH GROUP、5TH GROUP、SF[以上5つ特殊部隊関係]。

 このキャンペーンは、ネットで広まり、ドイツ語に翻訳された。主催者たちは、このシステムに対する意識を高める手段としてこの『エシュロンを窒息させる日』(gag Echelon day)が世界中で実施されることを望んでいる。

 NSAも、英国のGCHQ(Government Communications Headqaurters)も、エシュロン・システムの存在を認めている。その能力に関しては、欧州議会で議論がなされている。

 エシュロンに関係しているとされるオーストラリアの防衛信号理事会は最近、『UKUSA』の存在を認めた。UKUSAとは、5ヵ国の通信機関が交わした合意で、このシステムを管理していると伝えられている。

 昨秋、ワシントンに本拠を置く市民権利擁護団体、自由議会財団は、このシステムに関する詳細な報告書を議会に送付したが、このシステムは議題に上らなかった。

 10月21日のキャンペーンは、このシステムについて一般の意識をさらに高めたいと願ってのことだ。

 「大部分の人がこのシステムに対して腹を立てている」とトンプソン氏は述べた。「これがSF映画などではないことを知れば、大半の人は激怒するだろう」

 しかし、活動家のコミュニティーに所属するオーストラリアの会員の1人は、『エシュロンをやり込める日』が、一般市民が政治的に管理されている技術について知る日となって、被害妄想を育む日とはならないで欲しいと願っている。

 「一般市民の意識を高めることによって力を与えるべきで、怖がってインターネットを使わなくさせるようなことがあってはならない」と、サムとだけしか名乗らないこの活動家は語った。


[日本語版:喜多智栄子/岩坂 彰]

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