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◎米世論が変化促す可能性も 戦後補償めぐる企業の姿勢
第二次大戦中の強制労働をめぐり元米兵らが日本企業を相手に起
こした損害賠償請求訴訟は、日本企業の活動が最も活発な米国を舞
台にしている点が注目されている。法廷とは別に米国内で被告企業
への不買運動などが広がれば大きな圧力になるとみられ、日本側の
戦後補償をめぐる姿勢に変化を促す可能性がある。
「賠償問題はサンフランシスコ講和条約と各二国間協定で決着済
み」(上田秀明外務省社会協力部長)。これが戦後補償に関する日
本政府の一貫した立場だ。在日朝鮮・韓国人、中国人らが各地で起
こした約40件の訴訟も、時効や個人請求権の無効を理由に棄却さ
れる例が続いてきた。
ただ、最近になって司法の判断に変化が現れている。東京地裁は
22日、中国人らが日本政府に大戦中の損害賠償を求めた裁判で、
請求を退けながらも政府の謝罪の必要性などに言及。東京高裁は9
月11日、強制労働に耐えかねた中国人が決起、弾圧された「花岡
事件」の損害賠償訴訟で原告と被告の大手ゼネコン鹿島に和解を勧
告した。
「裁判所も国内法の限界を承知している。被害者救済のため別の
道を探り始めた兆しだ」と「戦後処理の立法を求める法律家、有識
者の会」の有光健さんは説明する。有光さんは「鹿島はカリフォル
ニア州内で大規模事業を受注している。米国内の訴訟の動きと世論
のすう勢は、国内裁判の対応にも必ず反映する」とも分析した。
ドイツの補償対策は、政府が取りまとめ役となって被告企業から
資金を集め、被害者のための基金を創設する形だ。米国のユダヤ人
団体などとの交渉は、金額面で折り合いがつかず難航しているが、
「解決済み」「門前払い」を繰り返す日本の対応との違いは際立っ
ている。(共同) (了)
[共同 9月22日] ( 1999-09-22-15:17 )