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大田原市をはじめ各地で地域住民とトラブルになっているオウム真理教は、住民らから「謝罪がない」と批判されている過去の事件への対応について、近く一定の方針を示すことが十五日、分かった。市民団体が同市の転入届不受理問題をテーマに宇都宮市内で開いたシンポジウムで同教団の荒木浩広報副部長が明らかにした。またパネリストとして参加した松本サリン事件被害者の河野義行さんは、シンポ開催前に教団関係者と事件後初めて話し合い、教団側が地域住民の理解を得るための方策を助言。シンポでは「人と人とが憎しみ合う状況はとてもつらい。早くなくなってほしい」と、感情論が先行した住民の行動に大きな憂いを表した。
この日、シンポを聞きに会場に姿を見せた荒木浩広報副部長は、司会者に発言を促されると「(住民の反対運動が)エスカレートする可能性が高く、指導的立場の人たちも一般信者の生活をどう守ればよいのか、真剣に考え始めている」と切り出した。
松本サリン事件被害者の妹が拉致(らち)された事件には「まだ疑われるのかと、私だけでなく上層部もショックを受けた」と述べ、「この事件と各地での反対運動が重なる形で、社会における教団の位置付けを見直す動きが出ている。(上層部の)長老部でも検討されている」と、教団の在り方を見直していることを明らかにした。
見直し作業では、広報部や法務部が入居する都内のビルの退去問題や破産管財人から求められている「オウム真理教」の団体名使用禁止の対応のほか、過去の事件について謝罪・反省問題なども対象としている。
特に住民とのトラブルについては「(過去の事件に対する)見解を教団が示せない不透明さに原因がある」とした上で「一定の見解を近々報告できる」と話した。
▽社会の理解を得る努力を 河野さん
シンポジウムにパネリストとして参加した河野義行さんは、大田原市の住民の行動について「あそこまで(信者らが)いじめられたら普通の人でもきばをむく。感情論でなくよく話し合ってほしい。被害者がまた出たらどうするのか考えてほしい」と冷静な対応を求めた。
最後に河野さんは、この日、荒木副部長らオウム関係者と松本サリン事件後初めて話し合ったことを明らかにした。
その中で「裁判で組織的犯罪と確定した時、オウムを名乗っているあなた方は被害者をどうするのか」と質問すると同時に「(活動の)余剰金が出たら法務局に供託し、有罪が確定した時に被害者に使います、と表明した時には世の中の見方も変わる」と、社会の理解を得る努力を教団に求めた。
これに対し荒木副部長は会場での発言の中で「(教団の上層部に)報告をして、何らかの形で生かせれば」と、前向きに受け止めていた。
▽住民票不受理は明らかに違法 「公共の福祉シンポ」
大田原市へのオウム真理教信者らの転入届不受理問題に関する「『公共の福祉』を考える」(人権と報道・連絡会など主催)シンポジウムが十五日、宇都宮市の県総合文化センター会議室で開かれた。
コーディネーターは同志社大の浅野健一教授が務め、パネリストは松本サリン事件の被害者、河野義行さんと山下幸夫弁護士。
河野さんは、松本サリン事件当時を振り返り、「一日二、三十件の嫌がらせ電話や脅迫の手紙で、社会から抹殺されるところだった」と述べ、「(大田原市居住の)信者が住民から『人殺し』と呼ばれているが、事実ではない。住民は感情的にならずによく話し合ってほしい」と提案した。
山下弁護士は法律家の立場から、オウム真理教信者の住民票不受理問題で熊本地裁が出した行政側の敗訴を例に、「行政が感情論で判断を出してはいけない。住民票の不受理は明らかに違法だ。日本には異質なものを認めない排除の論理が生きている」との見解を示した。
質疑応答で会場からは、大田原市の住民が「市民が寄付行為をすることや当番で見張り小屋に詰めることに疑問を持っているが、正面から反対意見はなかなかいえない。きょうの討論を参考に自分なりの結論を出したい」と、悩みを率直に語った。