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(2ヶ月前のアジア国際通信より引用)
◆「誤爆」なんて本当にあるの?
●「誤爆無罪」のやりたい放題
ブッシュ大統領はCIA長官時代(1976年1月30日から1977年3月9日)以来、数々
の汚い作戦の手下として存分に利用したパナマのノリエガ将軍を、一方的に「悪役」
に仕立て上げ、パナマを侵略した。このブッシュの“汚い戦争”は、アメリカの『エ
ンパワーメント・プロダクト』が、92年に「暴かれた真実・1989年米軍パナマ侵攻」
というドキュメンタリー作品で、余すところなく検証されている。
この作品は世界的に高い評価を得た。アカデミー賞では、「アメリカの権力構造に
真っ向から挑戦、事実関係が正確で内容も優れている」と賞賛され、93年度アカデ
ミー賞ドキュメンタリー部門賞を獲得し、93年6月12日、NHKがこれを放送したこと
はすでに記した。
CIAのプロパガンダ作成の秘訣は「30%の真実を加えることだ」といわれるが、ノ
リエガはアメリカの奥深くに幽閉され、完全に口封じされたまま10年の歳月が過ぎ
た。
今日アメリカは、同じことをユーゴで引き起こしている。
ブッシュは「麻薬撲滅」という大儀を掲げ、「麻薬密売の元凶であるノリエガを逮
捕する」と豪語した。しかし、これが真っ赤なウソであることがその後間もなく明ら
かになる。米軍によるパナマ国軍の殲滅(実際、パナマ国軍はこの時に完全に消滅し
てしまった)の後、実は「パナマから米国への麻薬の密輸は(それ以前の)2倍に増
えた」という統計が米会計検査院から発表されたのであった。
パナマ侵略の大儀は「麻薬撲滅」であった。しかし、軍事的に勝利した後、それが
さらに悪化するという逆の結果になっていた。にもかかわらず、それを放置したまま
「麻薬撲滅」は口先だけで、それ以上の熱意は何も示さないという欺瞞的なもので
あった。
本来の軍事侵攻の目的は、「暴かれた真実・1989年米軍パナマ侵攻」が明確に実証
しているように、「パナマ運河を永遠にアメリカの領土にする」という、文字通りの
帝国的野心に他ならなかった。
グレナダとこれに続くパナマという極端な弱小国を、圧倒的な軍事力で押さえ込
み、その延長線上に「湾岸戦争」、「ソマリア」、「ハイチ」などの武力介入の失敗
が位置し、辛うじて“面目”を保った「ボスニア」へと続く。そして今日の「イラ
ク」と「ユーゴ」である。いずれも『戦略爆撃』を伴ったことが共通項である。
ユーゴ空爆の大儀は「人道、人権」であったが、パナマ侵略の時と同じで、それは
単なる介入の口実に過ぎない。そんなことは、現実を見ればだれにでも判ることだ
が、本音は帝国的野心に基づく、世界覇権を求めた戦争であった。
「ユーゴ空爆」では、マスコミに「誤爆」という活字がしばしば登場する。しかし
それは、だれに頼まれたものでもない。『戦略爆撃』に踏み込まないマスコミが、勝
手に使っている用語である。あたかも間違いが発生したかのように報じることで、辛
うじて自らの命脈を保っている。米軍およびNATOには、そんな用語は存在しないであ
ろう。たまたま公然化しただけで、“テレビに映らない”他のケースは「誤爆」です
らない。
下記の出撃回数をみても想像がつくはずだが、爆撃のほとんどが「誤爆」であろ
う。『戦略爆撃』の思想とはそういう残忍なものだ。米軍に被害が出て、「アメリカ
人の命だけが尊い」と考えるアメリカ人から、「空爆やめろ」の大合唱が沸き起こ
り、身動きがとれなくなることを一番恐れている。そうならない最も安全な選択が
「空爆」である以上、“虫けら”がどうなるかなど眼中にない。
それよりも肝心なことは、一刻も早くミロシェビッチにネをあげさせることであ
る。できればノリエガのようにアメリカに拉致監禁したいだろう。そのためには、な
りふり構わず空爆のターゲットを限りなくエスカレートさせ、敵を可能な限り急速に
追い込むことだ。民間人を最大の被害者にすることが、戦意を喪失させる最も有効な
手段であることは、戦争の専門家でなくともだれにでも判る。
「革命無罪」の論理と同じで、「誤爆」の償いがなされたことは無い。これまで
に、ドレスデン、東京大空襲、広島、長崎、朝鮮半島、ベトナム、カンボジア、ラオ
スなどなど、生態系や地形が変わってしまうほどの空爆をどれくらい繰り返してきた
ことか。これらすべてが無数の「誤爆」から成ることは自明のことであろう。「西
側」が圧倒的な力を保持している限り、裁けるものなどだれもいない。「償い」など
問題外で、口の端にものぼらない。
5月13日、ユーゴ空爆での24時間の出撃回数は、過去最高の679回にも及んだ。し
かし、NATOのシェイ報道官はこの日、「誤爆によって作戦に変化はない」と言い放っ
た。もはやほとんど「狂気の沙汰」で、明確に「人道に対する犯罪」と断じるべき
だ。
この場合の「誤爆」は、ベオグラードの中国大使館にミサイル3発が命中した爆撃
を指したものだが、西側諸国関連施設を除く、その他の「誤爆」など何をかいわんや
だ。
これまで一体どれだけの出撃回数にのぼるのか、少し考えてみればその実態は、
「誤爆無罪」のやりたい放題であることはだれにでも判る。
●暴かれた真実・1989年米軍パナマ侵攻
アメリカの映像製作会社『エンパワーメント・プロダクト』が、1992年に制作した
作品であることはすでに触れた。この作品は、「パナマ運河は永遠にアメリカの領土
であり、その領土を守るのは唯一米軍であり、パナマ国防軍を抹殺するために米軍2
万6,000人がパナマを侵略した」という事実を実証するものであった。
米軍のパナマ侵攻開始(89年12月20日)以降、アメリカの有力新聞はじめ人気絶頂
のニュースメディアが、「何を伝え、何を伝えなかった」という事実検証を通じて、
「アメリカ人には真実を徹底的に隠し通しながら、自由と民主主義を誇らしげに語る
傲慢なアメリカ政府と、それに操られたマスメディアの正体」が見事に暴かれてい
た。
番組の中で、カリフォルニア州立大学のM・パレンティ教授は、「アメリカの
ニュースメディアは、徹底してアメリカ人の命だけを大切に扱っていた。アメリカ人
の命だけが尊く、アメリカ人の死だけが痛ましいとでも言いたげな報道の仕方であっ
た。彼らにとってパナマ人は、人間の数に入っていなかった。アメリカのメディア
は、米軍が多くのパナマ人を無差別に殺戮した事実を、一片も報じなかった」と証言
した。
同じことが、今も目の前で進行している。ユーゴの捕虜になっていた3人の米兵が
無事帰国した。アメリカの新聞の1面は3人の米兵帰国のニュースで埋め尽くされ、
ホワイトハウスでは大統領夫妻による歓迎とねぎらいの式典が執り行われた。時を同
じくして、日米軍事同盟強化のため、小渕首相が訪米していたが、滞在中それを伝え
る報道はほとんど皆無であった。
アメリカ人にとって、日本などその程度の存在に過ぎない。しかし、ユーゴ爆撃は
連日のように苛烈を極め、コソボのアルバニア系難民はもとより、多くのユーゴ市井
の人々が虫けら同然に殺傷されている。もちろん同じことが、休むことなくイラクに
対しても続けられた。パナマ人が人間の数に入っていなかったのと同様、アルバニア
系、セルビア系、アラブ系であれ、さらに言えば日本人でさえ、人間の数に入ってい
ない。
パナマ侵攻のドキュメンタリーに戻る。C・ランゲル米下院議員は、「米政府の報
道管制によって、すべてをお祭り騒ぎのように見せかけて、米軍はパナマに乗り込ん
で自由をもたらし、独裁者の圧制に苦しんでいたパナマの人々は、アメリカに感謝し
て飛び跳ねている、という演出を感じさせる映像だけが垂れ流された」と語ってい
る。
パナマ空爆も、第2次世界大戦で米英が行った『戦略爆撃』の延長上にあった。す
でに取り上げた『ディーヴァー方式』による情報操作がフル回転し、軍事作戦はメ
ディアに対しても完璧な勝利を収めていた。
米軍は、真実の発覚を恐れ、あらかじめそれを予防するため、まずパナマのラジオ
局を破壊した。同時にテレビ局を占拠し、米軍の暗号送信に使用した。そして、パナ
マのジャーナリストを片っ端から逮捕し、新聞を休刊に追い込み、極めて効果的にパ
ナマのニュースメディアを支配した。このため、侵略直後3日間のいかなる映像も残
らなかった。
米軍の作戦は、ステルス(「事故」といことになっているが墜落してしまった)を
はじめ、各種の新兵器を過剰に使用したため、パナマ人の犠牲がひどかった。これら
の事実が、番組では克明に明らかにされている。■