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◎遺伝子操作で賢いマウス 記憶力高めることに成功
【ワシントン1日共同】脳神経に関係する遺伝子を操作して、学
習能力や記憶力を強化した“賢い”マウスをつくることに米プリン
ストン大のジョ・チェン助教授らが成功、2日付の英科学誌ネイチ
ャーに発表した。
記憶のメカニズムの解明につながるほか、記憶障害などの治療法
開発にも道を開く研究。遺伝子操作で人間の知能を高めることがで
きる可能性もあり、将来は遺伝子技術の利用をめぐる倫理問題も発
生しそうだ。
記憶は脳神経細胞の間に信号の通り道ができることで形成される
といわれる。同助教授らは、神経細胞の末端で信号を受け取る受容
体の数を増やせば、通り道ができやすくなると考えた。
そこで、NMDAと呼ばれる神経伝達物質の受容体が脳に多くで
きるように遺伝子を操作したマウスの系統をつくって、学習や記憶
力を調べた。
その結果、ドゥギーと名付けた系統の遺伝子操作マウスは、物体
の形の記憶、刺激と音や場所の関連を覚える能力、迷路脱出能力の
すべてで通常のマウスを上回った。具体的には、同助教授らがつく
ったマウスは、通常マウスに比べ、記憶時間が4、5倍長く、迷路
からの脱出も半分の試行錯誤回数で成功した。
同助教授らは「遺伝子操作で、動物の知能を高めることができる
ことが分かった」と指摘。同分野の専門家らは今回の研究で、記憶
障害などの遺伝子治療にも展望が開けてきたとみている。
(了)
[共同 9月 2日] ( 1999-09-02-06:00 )