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1999年6月16日(水) 10時45分
94―95年朝鮮半島の有事想定 米が後方支援要求 福岡空港も対象 防衛庁文書
(西日本新聞)
朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核疑惑をめぐり朝鮮半島情勢が緊迫した一九
九四年から九五年にかけ、米軍が有事を想定して日本政府に支援を要求していたこと
が十五日、西日本新聞社が入手した防衛庁の内部文書で明らかになった。要求は民間
空港の使用、軍需物資輸送から毛布や弁当の提供まで千項目を超え、項目別に各省庁
への割り振りが検討されていた。この要求が日米防衛協力のための新指針(ガイドラ
イン)法制化の引き金になったとの見方もある。
文書は九四年四月から九五年十二月までの三次にわたる在日米軍司令部(東京)か
らの支援要求項目と問題点、対応措置などをまとめたもの。
それによると要求は、一次案の九百九十六項目が、二次案では第七艦隊などの分を
加え千九百項目に増加。三次案で千五十九項目に整理された。
内容は輸送、施設提供、補給を中心とした後方支援が大半。空港、港湾の使用や艦
船、航空機の修理、医療、米避難民の支援、基地警備、給食の提供まで広範囲で、多
くが十日以内の開始を求めている。
九州・山口、沖縄では福岡、長崎、宮崎、鹿児島、那覇の各空港を物資・兵員輸送
に使用し、通信、宿泊給食などの提供を要求。福岡、長崎、那覇空港は二十四時間通
関体制を求めた。港湾は福岡市などで公共岸壁の確保を挙げるなど、九州・山口、沖
縄を重要な後方支援地域として位置づけている。
米軍からの支援要請について防衛庁はこれまでの国会答弁の中で「支援要求を受け
たとか、内容の検討作業を行ったなどという事実はない」との見解を示している。
[西日本新聞1999年6月16日]
1999年6月16日(水) 10時45分
有事九州は支援基地 半島危機米軍の対日要求 衣食住まで詳細に(西日本新聞)
空港、港湾、基地施設など九州・山口、沖縄地域の輸送、軍事拠点を網羅した米軍
の対日支援要求。艦船修理や輸送機の支援はもちろん、非戦闘員の衣食住の確保に至
るまで、その内容は詳細でかつ幅広い。地域全体が米軍の支援基地に―。防衛庁の内
部文書からは、有事の際、日米新ガイドラインに基づく九州の対米協力の状況が、お
ぼろげながら見えている。
米軍の要求でまず挙げられるのは、輸送の重要な拠点となる空港の優先使用。中で
も福岡、長崎、那覇の各空港には二十四時間通関体制を求めている。
福岡、長崎の両空港は現在でも米海軍佐世保基地の「足」として、人や物資の輸送
に活用。特に長崎空港では米軍機の着陸回数が一九九八年には年間三百九回となり、
前年に続いて全国の民間空港で最多。二十四時間通関の実現でさらに「使い勝手の良
さ」を獲得するのが狙いだ。
また、空港では非戦闘員避難作戦(NEO)の支援もある。この三月には米民間人
を韓国から福岡空港経由で米海軍佐世保基地に避難させる訓練が行われたが、宮崎、
鹿児島、那覇の各空港もこの経由地としての役割を求められている。
大量の物資輸送や艦船の修理、補給の拠点となるのが港湾。佐世保港では艦船修理
施設が求められるほか、米軍基地と海上自衛隊基地が近い佐世保、岩国、那覇の各港
では岸壁確保や水先案内人、タグボート、荷役人など港湾全体の支援に関し民間の協
力を想定。民間に支障がある場合には、海自による協力も検討している。
こうした港湾業務を統括するため、宿泊や給食機能がある事務所の確保が必要とさ
れており、海自基地内での設置も想定している。
また、港湾荷役などの作業に伴い、岩国と沖縄では輸送用トラックや荷揚げ用クレ
ーンの準備、岩国と佐世保ではコンテナの確保と輸送を要請。いずれも量が多く、政
府は内部文書の中で「民間での対応の可否や民需への影響の検討が必要」としてい
る。
■九州・山口、沖縄関連の主な支援要求■
福 岡
《福岡空港》施設使用と24時間通関体制▽通信、労務、宿泊給食、非戦闘員避難作
戦(NEO)を含む人員、物資用輸送機の支援
《博多港》施設使用
長 崎
《長崎空港》施設使用と24時間通関体制
《佐世保市》海自基地での艦船停泊・修理施設などの提供▽岸壁確保、水先案内人、
タグボート、船舶修理、荷役人などの港湾支援▽海自基地での宿泊、給食機能付き施
設の設置▽コンテナの確保と輸送(240個)▽NEO支援(輸送、宿泊、給食、医
療など)
鹿児島
《鹿児島空港》人員、物資用輸送機の支援
《鹿屋市》海自航空基地での米海軍P3C分遣隊(3機)の駐機場の確保、整備、警
備、宿泊、食事(1日当たり189食)
宮 崎
《宮崎空港》人員、物資用輸送機の支援
山 口
《岩国市》海自基地での米海軍P3C分遣隊の支援▽海自基地での宿泊、給食機能付
き事務所の設置▽輸送用トラックやトレーラー計1370台(沖縄含む)、荷役用ク
レーンやフォークリフト計114台(同)の確保▽タグボート、荷役人など港湾支援
▽コンテナの確保と輸送(228個)
沖 縄
タグボート、荷役人など港湾支援▽海自基地での宿泊、給食機能付き事務所の設置▽
那覇空港の施設使用と24時間通関体制▽人員、物資用輸送機の支援▽NEO支援で
簡易ベッドや毛布など約25000セット
地域特定なし
電話回線やインマルサット端末の調達、設置▽携帯無線機の周波数割り当て▽防弾チ
ョッキなど警備用資器材▽港湾・航路の海上警備▽米軍基地周辺警備
[西日本新聞1999年6月16日]