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…二つの世界が激しく衝突するのは、日本列島においては縄文から弥生への移行期であり、アメリカ大陸においてはコロンブスによる「発見」に始まる。それ以前、北アメリカ大陸は先住民族たちに「亀の島」と呼ばれていたという。亀の島の中央には背骨と呼ばれるロッキー大山脈が走っている。その山麓に現在のアメリカ中西部から国境をまたいでカナダまで広がる途轍もなく広く美しい国があった。そこを母なる大地として、彼(女)らの始まりも終わりもない歴史の中で暮らしてきたのはアルゴンキン語を話す人たちで、その中の一つにシャイアンと呼ばれる有名な部族がある。
アルゴンキン語を話す人たちは、アメリカ大陸の先住民の中でかつては最も数の多い人たちであったが、徹底的に平定された結果、現在アメリカに四万人、カナダに四万人ほどが残っているだけである。
この人たちに伝わっている聖なる予言(夢)は、二つの世界の衝突によって、どのような世界の終わりを迎えるかを、警告として一族の者たちに語り伝える話であり、彼(女)らがまだ西洋人と遭遇する以前にこの予言は、一人の偉大な予言者によってなされたものだという。
彼はもともと「鷹ノ巣(イーグルズ・ネスト)」と名乗っていたが、部族の草創期、一族によって予言の能力を認められ、部族に多大なる貢献をなしたとして、一族の人たちは尊敬を込めて以後この予言者を「スウィート・メディスン」とか「甘い根を持って立っている人」と呼び続けてきた。シャイアンの人なら知らぬ人はいないというくらい一族の精神の基盤を創っている伝説の予言者で、「スウィート・メディスン」とは、彼(女)らが使ってきたある薬草の根のことをさし、これは母親に乳の出を良くする植物として広く知られている。
スウィート・メディスンの教えは、文字通りシャイアン一族の精神的基盤を形作った知恵のミルクであったといえるだろう。その話は、今もとても聖なる話とされ、話す前には身と心を清める儀式が行われる。ストーリー・テラーはこの予言者の話をする際には必ず「私は自分の知っていることのみを話し、何ごとも加えず、何ごとも隠さず、この話を語る」と誓ってから話すべきものとされ、一族の語り部が語るのでも四日四晩はかかるというぐらい膨大なものでもあるから、ここではシャイアン一族に伝わる偉大なる予言者の紹介をかねて、二つの世界の衝突が何を生むかの予言についてのみ紹介したい。
シャイアンの人たちはロッジと呼ばれる大きな小屋の中で胡座をかいて皆で輪になって座り、しばしば会議をする。これはスウィート・メディスンが出席していた大昔の、西洋人の到来以前の頃のそんな会議で、彼が自らの見た白人との接触というヴィジョンについて語ったとされる話の中の核心部分である。そこで予言者はこう語っている。
注意深く、私の言葉を開いてほしい。注意深く、私の言葉を聞いてほしい。注意深く、私の言葉を聞いてほしい。注意深く、私の言葉を聞いてほしい。
我々の偉大なる曾祖父が、まずそのように私に言われたのだ。「注意深く、私の言葉を聞いてほしい」と、彼はその言葉をいきなりまず四回繰り返した。
それから「自分が地球に人間を置いたのである」と言われた。全て人間は彼によって地球に置かれたのであると。私たちを創られたのは彼だ。そして彼は私たち以外の人間も創られたのだ。彼はこう言われた。
「そうしたいろいろな全ての人間たちと、太陽に向かう、大きな河の側で、おまえはいつの日にか出会うだろう」
「黒い人間もいる。が、いつの日にかおまえたちは白い人々と出会う。この人たちはなかなかに見栄えがよい。明るい髪の毛の色、そして白い肌−」
誰かがスウィート・メディスンの話の腰を折るように「会えばこの人たちのことだとわかるのだろうか?」と聞くと、スウィート・メディスンは「勿論、はっきりと、わかるとも!」と答えて、さらに続けた。
「この人たちは顔にかかるぐらい長い髪をしていて、ここにいる誰ともはっきりと違っているから、誰の目にもすぐわかる。着ているものからしてまるで違っているのだ」
「よく湧き水がたまってできた泉などで、水面に緑色の藻のような気味の悪いものができているが、あれと似たようなもので、その人たちは気がつくとすぐそこに浮かんでいるだろう。おまえたちはその人たちと口をきくようになる。その人たちは光を反射するもの(鏡か?)や、砂のように見えるやけに甘いものを、おまえたちにくれようとするだろう。だが、その人たちが差し出すものを受け取ってはならない」
「その人たちは何か特別な石を探している。おまえたちが見たこともないようなものを着ているが、そこにはありとあらゆる色が使われていて、たいそう綺麗だったりもする。恐らくおまえたちが、その人間に何を言ったところで、その人たちは何一つ聞く耳をもたないだろうが、おまえたちはその人たちがおまえたちに向かって話すことにじっくりと耳を傾けることになるだろう」
「その人たちは疲れることを知らず、いついかなる時にでも前へ、前へと突き動かされているかのように前進し続ける。そして後から後から、続々とその人たちはさらにやって来る。その人たちはいつでもおまえたちに何かをくれようとし続けるだろう。だが、そうしたものを何一つ受け取ってはならない。その人たちの差し出すものを一つでも受け取れば、それが原因で悪い病気が広まるだろう。その人たちは、私たちが歩いているような祖先の祖先のそのまた偉大なる祖先たちが歩いてきたような道の上を歩いているわけではない。その人たちは別の道の上にいる。その人たちは、私たちの偉大なる曾祖父がこの地球の沢山の場所に、予め埋め置かれた石を求めて、どこまでも旅を続ける」
「私たちの偉大なる曾祖父によって、おまえたちに与えられた筈のバッファローや他の動物たちの皆殺しを、この人たちは、始める。そしてその際、おまえたちがまだこれまで一度も見たことがないような、我々が動物たちと戦う時に使うのとは似ても似つかない、耳障りな音を立てて丸い小さな石を相手に撃ち込んで殺す道具を使うだろう」
「それから暫くすると、その人たちはいままでに見たことがないような生き物を連れてくる。バッファローのような頭に、白い角を生やし、長い尻尾を持つ動物だが、しかたなく食べようとして肉に鼻を近づけただけで、バッファローとは全く異なる臭いがするのがわかるだろう。皮を剥いだだけで肉がはじけ落ちる病んだようなこの動物だが、おまえたちは結局その肉を口にするようになり、おまえたちもいずれは同じような病にかかることになる。そしてそれを飲むと正気を失うような飲み物までもが、おまえたちには与えられるだろう。この人たちは生命を奪うだけの目的で、その動物に食べさせるものまで持っている」
「この人たちの数は増加の一途を辿るだろう。あまりに沢山の人になる筈だから、おまえたちはその人たちの前に立つことなどできない。河という河にその人たちが溢れて右往左往する光景を見ることになり、その人たちと共にこの乾いた大地の上を大量の物が移動するのを見るだろう」
「そしてまた別の動物がやって
来る。が、これはバッファローとは全く違う。首の後ろには長い毛が密集してはえており、地面につきそうなぐらい長くて立派な尻尾がある。この動物は南からやって来るだろう」
「この動物たちがやって来たら、おまえたちはそれを捕え、その背中にまたがって乗ることになり、やがてはそれに乗ったまま、一つの場所から次の場所へと移動するようになるだろう。おまえたちはこの動物を手に入れると、偉大なる旅行者となって、遠くまで旅するようになる。遠くを見て、そこに行ってみたいと考え、実際にその動物にまたがり、私の与えた弓を持って出かけていくことになるだろう。そしてまさにその時から、おまえたちのすることが、何もかも間抜けなことになっていく」
「おまえたちは一時も黙ることがなくなるだろう。次から次へと行きたい場所が現れるだろう。おまえたちは底の抜けた馬鹿になってしまい、もう何一つ知ることもなくなるのだ」
「その人たちはおまえたちの言葉に耳を傾けたりはしないで、とにかく自分たちのやりたいことをやってしまうだろう。やがて今度はおまえたちが変わりはじめる。そしてそうなった暁には、おまえたちは朝早く起きることもなくなるだろう。いつ夜が明けたのかもわからなくなる。おまえたちは、ベッドに横たわったまま、いきなり病気になって死んでしまうだろう。おまえたちは皆そうやって死んでいく」
「そして最後には、その人たちはおまえたちの肉を要求するようになるだろう。その人たちはおまえたちの肉を要求するようになるだろう。その人たちはおまえたちの肉を要求するようになるだろう。その人たちはおまえたちの肉を要求するようになるだろう」
「だが、おまえたちはその時、その申し出をきっぱりと断らなくてはならない。その人たちはおまえたちに『その人たちの生き方』を教え込もうとする。もしおまえたちがその要求に屈服したら、その瞬間におまえたちの生身の肉であるおまえたちの子供たちは、おまえたちのもとから、何処かへと永遠に連れ去られてしまうのだ。その人たちはあの手この手で、些かもその手を休めることなく、おまえたちの生き方を、その人たちと同じ生き方に変えようとする。その人たちは手で仕事をし、地球を引き裂くが、いずれおまえたちもその人たちと一緒になって同じことをするようになるだろう。そして、そうやってこの地球を一緒になって切り裂いた途端、おまえたちは私がいま教えていることを全て忘れ去ることだろう」
以上の話からわかることは、始まりもなければ終わりもない世界は、一族の人たちの記憶の中に存在するということである。この五百年で、スウィート・メディスンの予言は尽く的中してきた。彼は「大きな輪」が閉じる時をこのように解読し、一族の者たちに警告として残した。それは、一族の教えを守って生きる者が一人でもいる限り、そこには彼(女)らの国が存在するということである。スウィート・メディスンが、神秘体験による幻視として語ったことは、かなり多くのアメリカ・インディアンの部族でも似たような話が伝えられている。(以上『予言されたハルマゲドン』p216-222)