(レポート)わが国の盗聴法案と米国の国外情報収集活動(小倉利丸氏)


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投稿者 やました 日時 1999 年 6 月 16 日 00:33:01:

小倉です。下記のようなレポートを、参議院法務委員と参議院の記者クラブ
に送りました。転載自由です。

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(レポート)わが国の盗聴法案と米国の国外情報収集活動
盗聴法成立阻止ネットワーカー連絡会
ネットワーク反監視プロジェクト
1999年6月15日
priv-ec@jca.apc.org
http://www.jca.apc.org/privacy/
0908-261-7041
担当 小倉利丸


参議院で審議中の通信傍受法案(以下「盗聴法案」と呼ぶ)について、米国の
情報公開法(情報の自由法=Freedom of Information Act)に基づいて、米国自
由人権協会(ACLU)のバリー・スタインハード氏が、日本政府と米国政府の間
で、上記盗聴法案の法制化に関して何らかの協議その他を行ったかどうかにつ
いて、政府文書の開示請求を行った。

これに対して、米国中央情報局(CIA)は、5月21日に回答を文書で出した。こ
の回答は、米国の情報公開法の規定に基づき、開示請求対象の文書の存在、不
存在そのものについて回答しない、というものである。

米国情報公開法では、「グローマー応答拒否」("Glomar" response)と呼ばれ
る開示請求に対する特別な拒否権が認められており、今回はこの特例を用いて
回答を拒否したものである。このグローマー応答拒否は、米国の国家安全保障
に関わるばあいにのみ許される態度である。実際に米国政府と日本政府との間
でどのような協議があったのか、なかったのか、そのこと自体はこの回答から
は直接うかがい知ることはできないが、しかし、同時に、CIAはACLUへの回答
のなかで、「こうした記録の存在、または不存在の事実は、また、直接諜報機
関の情報源や情報収集の方法に関する情報と関わる」とも述べた。

私たちは、このCIAの回答が日本政府による盗聴法案の立法趣旨と次の点で
食い違うことにおおきな関心を持っている。つまり、

第一に、 CIAが開示請求にたいして回答を寄せたこと自体に私たちは強い違和
感を抱かざるを得ない。なぜならば、CIAは本法案が対象とする日本国内の一
般刑事犯罪の捜査や組織的犯罪捜査上の国際協力と間接的にも関わる組織では
ないからである。

第二に、 CIAのグローマー応答拒否は、米国の情報公開法の規定から、米国の
国家安全保障に関わる事項にたいしてのみ許される例外規定である。私たちは、
いままでの政府の提案趣旨や国会での審議において、盗聴法案が米国の国家安
全保障と関わるなどという話を一度も聞いていない。

他方で、盗聴法案が米国の米国外における情報収集に盗聴法案がなんらかの関
わりがあるということについては、いくつかの状況証拠からその可能性が否定
できないと考える。

第一に、米国では、一般の刑事事件の盗聴とは別に外国諜報機関盗聴法がある
が、日本にはなく、本法案でこうした諜報機関への盗聴もまたカバーする可能
性があること。

第二に、おおくの規制が盛り込まれているという政府の必死の宣伝にもかかわ
らず、この法案は、予備盗聴、別件盗聴などが可能であり、記録をとらない盗
聴も可能であり、コンピュータ通信に至っては、通信事業者の管理者パスワー
ドを取得してしまえばオールマイティの盗聴が可能であり、立会人の権限はほ
とんどなきに等しいこと、氏名不詳での令状発付が可能など、信じられないほ
ど捜査機関の自由が認められていること。

第三に、諜報機関が一般に情報源とする可能性の高いジャーナリスト、政治家
への盗聴が認められていること。

第四に、日本の犯罪状況はおおきな変化はないにもかかわらず、強引に盗聴法
整備を打ち出していることから、犯罪捜査とは別の意図があるのではないかと
の疑いがあること。

第五に、緒方議員宅盗聴事件のように、日常的な監視と情報収集のための盗聴
が行われてきたという経緯があるとともに、こうした活動への批判を政府、警
察当局ともに必死でかわそうとする反面、このような諜報活動を禁止したり否
定する真剣な態度がみられないこと。

日米の安全保障に関する分野では、核持込疑惑をはじめとして「密約」は常套
手段である。今回の盗聴法案もまた、こうした意味で密約があるとの疑いは拭
い去れない。また、米国側の最近の動向からも、日本における情報収集活動の
一環として、組織的な盗聴、監視がおこなわれても不思議ではない。昨年春に、
米国が英国の情報機関などと協力してEU諸国の電話、コンピュータ通信などを
大規模に長期にわたって盗聴していることが発覚した。「エシュロン」
(ECHELON)と呼ばれるこのプロジェクトは、欧州議会で大きな問題となり、さ
らに現在米国議会でも問題視され始めており、議会はCIA,NSAなどにたいして
「エシュロン」についての報告書の提出を要求している。日本はこの「エシュ
ロン」の対象国にはなっていないが、アジア地域ではオーストラリアが情報収
集に協力していることが知られている。

日本の捜査当局は、従来の非合法な盗聴捜査が限界に来ていることをよく知っ
ている。回線のデジタル化、通信手段の多様化と技術の高度化のため、捜査当
局は通信事業者を合法的に盗聴に協力させ、国家予算を公然と利用した大規模
な通信監視の必要を感じている。それは、単に、犯罪捜査のためではなく、あ
きらかに私たち市民生活の監視のためであり、米国との軍事的、政治的な安全
保障のための日常的な監視のためでもある。

以上の点からみて、盗聴法案は、従来のような一般刑事事件における「組織的
犯罪」のための法律だという説明はあきらかに一つの口実であり、実際には、
監視目的の盗聴のための制度となる危険がきわめておおきいのである。したが
って国会では、少なくともCIAが日本の盗聴法を米国の国家安全保障に関わる
と暗にみとめた背景にある日本政府の米国との関係について、徹底した究明を
行うべきである。私たちは、日本の政府、警察が憲法を無視してプライバシー
の侵害を合法化しようとしていることにたいして強い憤りを感じているが、さ
らに政府はこの国に住む人々のプライバシーをCIAにも売り渡そうとしている
とすれば、どのような大義名分も通用しない明らかな政府の犯罪である。

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CIAによるACLUへの回答(別紙添付)
http://www.neoteny.com/ciafoia/

欧州議会報告書
http:/ /jya.com/stoa-atpc.htm
http://www.europarl.eu.int/dg4/stoa/en/publi/166499/execsum.htm
欧州議会報告書のフォローアップ
http://jya.com/stoa-atpc-so.htm
米国の欧州における諜報活動について
http://www.iptvreports.mcmail.com/ic2kreport.htm#Report

米国の情報公開法について
岡本篤尚『国家秘密と情報公開――アメリカ情報自由法と国家秘密特権の法理』
〔法律文化社・1998〕

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Ne! Kasxkonekto legxprojekto
toshimaru ogura
ogr@nsknet.or.jp
http://www.jca.apc.org/~toshi/
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