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◎難民は家に戻らない恐れも コソボで権力闘争拡大か
【ワシントン4日共同】ユーゴスラビアの和平案受諾でコソボ情
勢の行方はどうなるのか。現地情勢に詳しい米専門家2人に聞いた。
(聞き手は杉田弘毅記者)
スーザン・ウッドワード米ブルッキングズ研究所上級研究員 ア
ルバニア系難民の大部分は元の家には戻らないと予想される。ミロ
シェビッチ・ユーゴ大統領は一定の民族浄化を達成でき、勝利した
と思っているのだろう。アルバニア系住民は恐怖の体験から、もう
セルビア人とは一緒に暮らせないと信じており、独立志向を強めよ
う。
北大西洋条約機構(NATO)軍の空爆は、ミロシェビッチ大統
領の権力を強化しコソボの中産階級を国外に追放した。若者が武装
しているだけで統率のないコソボ解放軍(KLA)が勢いを増し、
地域全体の民主化を遅らせたと言える。マケドニア、アルバニアに
逃れた難民は安全なこれらの国に残りたがるため、こうした国の負
担も増し、不安定化の原因となる。
ローレン・メトル米平和研究所研究員 ミロシェビッチ大統領の
予想外の大幅譲歩は、(1)NATOの軍事的決意が固く、空爆の
長期化で国内も荒廃し自らの権力基盤が揺らぐと懸念したこと(2)
ロシアと米国の協調で国際的に完全に孤立したこと−−などが理由
だ。大統領は議会が和平案に賛成したことで、国内の政治基盤も当
面失わずに済んだ。
だが、和平案は、NATOが大統領の合意取り付けを念頭に置い
て作ったもので、コソボ住民は和平合意の当事者になってはいない。
国際社会はKLAを責任ある組織と見ておらず、権力を握ることを
望んでいない。KLAは武装解除に応じず、コソボでの権力闘争も
深まろう。米国はコソボ住民の政治的意向をくみ、将来の地位を決
めていく難しい作業を続けなければならない。
(了)
[共同 6月 4日] ( 1999-06-04-18:01 )