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回答先: Re: 狂牛病について(届いたメールより) 投稿者 比ヤング 日時 1999 年 5 月 22 日 04:06:23:
プリオン病の概念
18世紀以来ヨーロッパを中心として羊の間でスクレイピーという病気が流行して、畜産に大きな被害を及ぼしてきた。発病した羊は神経が冒され、はげしいかゆみのために身体を柵などにこすりつけて毛が抜けるのが特徴である。スクレイピーの名前はこする (scrape) に由来する。
発病した羊の脳乳剤を健康な羊の脳に接種すると病気が伝達されることは1930年代にすでに明らかにされていた。一方、ニューギニア高地の原住民の間で起きていた神経疾患・クールーの病変が、スクレイピーに極めて良く似ていることがヒントとなって、クールー患者の脳乳剤のチンパンジー接種実験が1960年代に行われ、この病気がスクレイピーと同じように伝達性であることが証明された。さらに、同様の病変を示すクロイツフェルト・ヤコブ病 (Creutzfeldt Jakob disease: CJD) もチンパンジーをはじめ種々のサル類に伝達できることが証明された。なお、クールーは現在ではCJDが、原住民の間での人食いの儀式を通じて広がっていたものとみなされている。
スクレイピーやCJDの病原体は高圧蒸気滅菌、紫外線照射、フォルマリン処理などに極めて高い抵抗性を示す。発病した動物では抗体がみつからず、そのために普通の微生物のような血清反応による病原体の検出もできない。このような奇妙な性質から、その本体は長い間なぞであった。
1980年代はじめにカリフォルニア大学のプルシナーは、病原体の本体が核酸をもたない感染性の蛋白粒子 (Proteinaceous infectious particle: prion) であるというプリオン説を提唱した。この説に対して猛烈な反発が起こったが、その後、プリオン説を支える成績が続々と発表されてきた。その結果、当初は特殊なウイルス疾患のひとつとみなされていたこれらの病気が、異常プリオンの蓄積によるという新しいタイプの疾患・プリオン病と呼ばれるようになった。