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【ニューヨーク24日真能秀久】
国連の前事務総長ブトロス・ブトロス・ガリ氏(76)が、6月に出版する
「不屈-合衆国と国連」の中で、当時の米国連大使だったオルブライト国務長官を
はじめとする米国政府を徹底的に批判していることが24日、明らかになった。
ガリ氏は、1996年に再選を目指したが安全保障理事会15カ国中14カ国の賛成を
得ながら、米国の拒否権行使によって阻まれた。
新著の中でガリ氏は「米国の実質的な関与なしに行った国連モザンビーク活動
などは目的を果たした。しかし、米国が関与したボスニア、ソマリア、ルワンダでは
国連の力が誤用され、ひどい失敗に終わった」と、当時から指摘された米国との
確執を吐露。
ガリ氏の再選反対の先ぽうとなったオルブライト国務長官に対しては、国連大使と
なるまでは「取り立てて卓越しない政治アドバイザーだった」とし、外交能力にも
疑問を投げかけ、こき下ろしている。
ガリ氏は、米国の国連代表幹部が聞いた話として、オルブライト国務長官が
「友人のように思わせた後、ブトロス(ガリ氏)の脚をへし折ってやる」との言葉まで
引用している。
再選阻止の理由については、大統領選を控えたクリントン政権が、93年のソマリア
平和執行活動の失敗に対する共和党の批判をかわす狙いだったと指摘している。
国家からの国連の独立性を強調したガリ氏と、国益実現のための道具として国連を
利用しようとした米国との対立が、ガリ氏によって克明に語られており、早くも話題の
書として注目を集めている。
(1999/5/25 中日新聞 夕刊)