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http://news.yahoo.co.jp/headlines/hwj/990520/cpt/15213900_wircpt005.html
1999年5月20日(木) 15時21分
イラクの有力紙がウェブサイトを開設(WIRED)
イラクの有力紙『アッサウラ』(Al-Zawra)が、オンライン版を開設した。敵に包囲さ
れたイラクの状況に対して世界の同情を集めようとの思惑からだ。ところが実際には
これが、これまで先端技術をもってしても知り得なかったイラクという1つの世界へ
の窓となっている。
『アッサウラ』紙は、サダム・フセイン大統領の長男であるウダイ氏が所有するイ
ラク有数の有力紙。ウダイ氏は、イラク政権の中でもテクノロジー推進派として知ら
れている。それが一族間の紛争の火種になっているとする報告もある。
同紙の http://www.index.com.jo/iraqtoday/alzawra.html サイトは、まだ初歩的
なもので、正常に動作するリンクはほとんどなく、ロードにも時間がかかる。
他の大半のアラブ諸国はインターネットをはじめとする先端的情報テクノロジーを
広く利用している。だが、『イラク国民キャンペーン』(Campaign for Iraqi
People)の活動家ジョージ・カパッチョ氏によると、イラク政府自身や国連による禁
止令のため、イラクはこの分野で大きく遅れをとっているという。「イラク国民は電
子メールやインターネットの存在は知っているが、あの国からはアクセスさえできな
いのだ」と同氏は言う。
『アッサウラ』紙以前にオンライン版を立ち上げた報道機関は1つだけある。先月
下旬、 http://www.nisciraq.net/ 国営イラク通信が開設したサイトがイラクの国内
情勢を報じている。
イラクの公式ウェブサイトは1つしかない。米国に本拠がある
http://www.undp.org/missions/iraq/index.html イラク国連使節団のサイトだ。イ
ラクは、国名ドメインの『.iq』を割り当てられているが、インターネットのインフ
ラストラクチャーがないため、このドメインでサイトを開設することはできない。
イラク国内のネットワーク技術事情に関する1998年の報告によれば、イラクで個人
がインターネットにアクセスできる唯一の方法は、イラク国外のインターネット・サ
ービス・プロバイダーへの長距離電話を利用するというものだ。
ちなみに『アッサウラ』紙のサイトのホストは、 http://www.index.com.jo/ ヨル
ダンのプロバイダー。
イラク政府は、情報技術への投資に批判的だと言われている。イラク国民がすべて
のウェブサイトにアクセスできるようになると、情報の流布を監視するのが難しくな
るからだ。
ウダイ・フセイン氏は、1997年半ばに『アッサウラ』紙の社説の中で、衛星技術や
海外報道の直接利用を禁止した政府の政策を公に批判した。ウダイ氏は、この件で父
であるサダム・フセイン大統領や、国内の治安を担当する弟と衝突したという噂もあ
る。
だが国連のイラク使節筋によると、イラク政府は、インターネット利用のために衛
星技術を輸入しようとしているのだが、国連のイラク制裁委員会が妨害しているとい
う。
「外部からの圧力により、われわれはイラク国内でインターネット・サービスを行
うことを許されていないのだ」と、イラク使節筋。「理由については、国連の制裁委
員会に訊いてもらいたい」
同筋によると、イラク政府はこの数ヵ月、外国メーカーから衛星放送用パラボラア
ンテナを購入したいと制裁委員会に打診してきたという。だが回答は、いつまでにと
いう期限も明らかにされないまま、保留にされているとのこと。
人道主義者たちは、1990年から実施されている国連の制裁がどんな損害を与えてき
たか、このサイトを通じて世界に伝えられればと期待しているが、このサイトがイラ
ク政府の見解を反映する公算が強いことは彼らも認めている。
イラクに対する制裁解除に取り組んでいる米国の活動家、ピーター・レムズ氏によ
れば、このサイトは、イラク国民に向けたものというよりも、西欧諸国の新聞に照準
を合わせたものだという。
「イラク国内での情報の共有というよりも、イラク国内の実状に(米国内の)大手新
聞各紙の注目をひこうというのがねらいだ」とレムズ氏。同氏は、『
http://www.afsc.org/iraqhome.htm アメリカン・フレンズ・サービス委員会』のイ
ラク担当プログラムでアシスタントをつとめている。
米国内の報道には「変に矛盾したところがある。飛行禁止区域で爆撃があると必
ず、大々的に報道される。ところが、人道的危機については取り上げられていない」
とレムズ氏。
イラクに対する制裁解除のために戦っている人権擁護家によると、どういった装置
ならイラク国内への輸入を認められているのか、国連から率直な返答を得るのは難し
いという。
「われわれは、(禁輸品目の)リストが存在するのか制裁委員会に確認しようとして
きた。国連はリストの存在に関してきわめて曖昧だ」とレムズ氏。
禁輸品目の責任者である、国連の米国代表のあるメンバーは、この件に関する電話
でのインタビューに応じなかった。
[日本語版:矢倉美登里/畑 佳子]