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大阪新聞990511
日本船虐殺の危機
東南ア、海賊標的 30社被害
東南アジアの広い海域で日本船を狙った海賊行為が急増していることが11日までの日本財団(曽野綾子会長)のアンケート調査でわかった。
調査は国際航路を持つ日本の海運会社161社を対象に実施。その結果、平成6年からの5年間で、回答した87社の約3分の1に当たる30社(被害件数66件)が海賊被害に遭っていた。
平成9年は前年比8件増の15件、10年は20件と急増。今年も3月末までにすでに7件発生し、とくにマラッカ・シンガポール海峡で多くなっている。
その手口は標的の船に横付けし、船内に乗り込んで金品を奪うなど、昔のバイキングと同じだが、無線や自動小銃、果てはロケット砲で武装するなど装備は近代化しているという。
このうちの1件は、昨年、日本の海運会社が運航していたパナマ船籍の貨物船が消息不明になり、今年に入り中国で別の船名で発見された「テンユー号」事件。積み荷は売り払われ、14人の外国人乗組員は殺害されたとみられている。
ところが、日本の海運会社の海賊対策ほとんど“丸腰”状態。外国籍船では乗組員の銃器携行が可能だが、「海賊を刺激しないことが重要」(日本郵船)との判断から、銃器による防衛は見合わせているという。
同財団の曽野会長は「日本人が殺害されたケースがないので、国内では海賊問題に対する社会的関心度も低い。しかし、いつテンユー号と同じ事件が再発するかわからない。関係者が連携して対応することが重要」と話し、7月に関係者による対策会議を立ち上げる計画だ。