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大阪新聞1999年4月24日
竹下元首相消えて3週間
6月解散説の真相
自民党の竹下登元首相(75)が入院してまもなく3週間になる。
「変形脊椎(せきつい)症」のためと発表されたが、病状などについ
ては徹底した“かん口令”を敷かれたことから、かえって憶測を呼び、
永田町では「すい臓がん」説や「寝たきり」説、揚げ句は「死亡」説
までが連日のように飛び交っている。そんななか、竹下氏のまな弟子
で「本当の病状」を知る1人として、小渕恵三首相の動向が注目を集
めている。急浮上した「6月解散」説の裏にあるものは?
竹下氏が入院したのは今月6日。側近の青木幹雄参院議員は当初、
「3週間で退院できる」と説明したが、その後、「4週間」と変更し
た。しかし、それ以上の説明はなく、現在の病状は不明。本当に4週
間で退院できるのか、だれもわからないのが実情だ。
そもそも、「変形脊椎症」は高齢者にとってはありふれた病気で、
主な症状は腰痛。医療関係者も「通院での治療が可能で、長期入院す
るのは珍しい」と首をひねるほどだ。
このため、自民党内をはじめ永田町では、竹下氏の病状をめぐって
さまざまな憶測が流れている。
「入院直前に会ったが、顔が激ヤセしていた。あれは、がんに違い
ない」「起き上がるのも難しい状態で、このまま寝たきり老人となる
可能性が強い」…。今月中旬には「亡くなった」という未確認情報が
流れ、政界関係者やマスコミが走り回る事態となった。
混乱の最大の要因は、竹下氏周辺が情報を流さないことだ。周辺は
厳しいかん口令を敷いており、マスコミの取材もシャットアウト。病
状はおろか、入院先の病院名すら公表していない。小渕派の国会議員
にすら教えないという徹底ぶりで、「お見舞いをしたいのに、病院が
わからない。そんなに信用されてないのかネ…」と小渕派の若手議員
からさえボヤキが出る。
竹下氏をよく知るジャーナリストによると、病状や入院先を把握し
ているのは小渕派でも一握りの幹部だけ。「野中広務官房長官、綿貫
民輔同派会長。ほかでは、竹下氏と親戚関係にある自由党の小沢一郎
党首あたりしか知らされていない」という。
もちろん、竹下氏の信頼が最も厚い小渕首相は、病状に関する報告
を逐一受けている。そこで浮上してきたのが、このところ急速に広が
っている「6月解散・総選挙説」の背後に竹下氏の入院があるという
見方だ。
「竹下氏が小渕政権の後ろ盾であることは周知の事実。竹下氏の入
院が長引いて政治生命が失われると、政権も危うくなる。だから、首
相はまだ竹下氏の権威があるうちに選挙をやり、政権基盤を強化した
いのでは」(政界関係者)というワケだ。
ところで、竹下氏が入院する病院の名前は、マスコミにも明かされ
ていない。しかし本紙は、ある筋を通じて確度の高い情報を入手する
ことができた。入院先は東京都内の私立大学系の大学病院、それも分
院だという。
分院を選んだのはマスコミの裏をかく狙いがあるほか、そこが東洋
医学を取り入れているから、との見方もできるという。
ある筋はこう言う。
「近代医学(=西洋医学)ではもう手のほどこしようがないほど進
行している、だから、最後の手段として東洋医学にすがった、という
人もいます。もっとも、病名は発表通り変形脊椎症で、腰痛治療のた
めハリを打っているだけかもしれませんけどね」
いずれにしろ、真相は“ヤブの中”。いまのところ、5月10日の
小渕派のパーティーに、竹下氏が姿を見せるかどうかが永田町の最大
の関心事となっている。
http://cgi.jp.osakanews.com/cgi-bin/osknews/articles/showarticle.cgi/news/1999042402