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◎微量のプルトニウム吸引 英科学者が人体実験=差替
【ロンドン9日共同】英原子力公社(AEA)はこのほど、猛毒
の放射性物質プルトニウムの人体への影響を調べるため、2人の科
学者が志願してプルトニウムを吸引する人体実験を行っていたこと
を明らかにした。9日付の英紙ガーディアンが報じた。
同紙によると、実験に志願したのは核科学者のエリック・ボイス
博士(73)と60歳代の同僚。2人は1年半前にオックスフォー
ド州ハーウェルにあるAEA研究所で、極微量のプルトニウムを吸
引した。
これまでのところまったく副作用は現れていないとされ、ボイス
博士は、プルトニウムが人間に危害を及ぼすという恐怖には根拠が
ないと主張している。AEAは、2人の吸引実験の結果は来年、発
表するとしている。
同紙によると、同国では1992年から98年にかけても、26
歳から67歳の12人の志願者にプルトニウムを注射する実験が行
われており、ボイス博士はこの実験にも参加していたという。
今回の吸引実験は、国立放射線防護委員会の許可を得て行われ、
欧州連合(EU)が資金を出した。
AEAなどによると、実験は人体に入ったプルトニウムがどのよ
うに分泌されるかなどを明らかにする目的で実施され、2人の分泌
物はすべて集められ、計量された。
これまでのところ、人体に入ったプルトニウムは骨や睾丸(こう
がん)にとどまるという従来の学説とは異なる結果が出ているとい
う。
ボイス博士が吸引したのはプルトニウム244と呼ばれる同位体
で、博士は「半減期8000万年ぐらいで放射線はゆっくりと放出
される。健康への影響は心配していない」と話している。
しかし、がん研究の専門家は「いかに微量でも(がんの)危険は
ある」と反論している。 (了)
[共同 8月10日] ( 1999-08-10-09:52 )