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◎スーダン爆撃は誤爆か 実業家が米政府提訴へ
【ワシントン8日共同】昨年8月の米大使館同時爆破事件の報復
として、米軍が同月20日に巡航ミサイル攻撃したスーダンの「化
学兵器工場」は、単なる製薬工場だったとして、工場所有者のサウ
ジアラビア人実業家が近く、米政府を相手に3000億ドルの損害
賠償訴訟を起こすと、米誌USニューズ&ワールド・リポート最新
号が報じた。
米政府は攻撃前に工場敷地から、VX有毒ガスの前駆物質が見つ
かったことを根拠と主張しているが、同誌によると、攻撃後の再採
取では前駆物質がみつからなかった上、実業家と大使館爆破の黒幕
ウサマ・ビン・ラディン氏を結ぶ根拠もなく、米上下両院の情報委
員会は標的選定過程に首を傾げつつあるという。
この実業家はサウジ王室に近いサラ・イドリス氏で攻撃の5カ月
前に工場を購入、米政府はこの工場を同氏が所有していることも知
らなかった。工場が(1)スーダン軍の厚い警備対象(2)認可さ
れた薬品を作っていない−など、米政府の主張は攻撃後に「ほとん
どすべてが間違いと分かった」(同誌)。
また、標的選定は十人弱の政府高官で行われ、アフリカ専門の情
報分析官らは加わらなかった。攻撃後に生じた疑問の声に対して内
部で行われたVXガス前駆物質の採取過程についての説明会でも、
専門家のだれ一人も政府説明に同意しなかった。
米政府は攻撃後、イドリス氏の在外資産2400万ドルを凍結し
たが、同氏が凍結解除の訴訟を起こすと解除し姿勢を後退させた。
同氏の提訴の動きはワシントン・ポスト紙も、攻撃当時「不倫も
み消し疑惑から国民の目をそらすのが、クリントン大統領の狙い」
との憶測が流れたことと合わせて報じており、「コップ一杯の土だ
けを根拠に、戦争は仕掛けられない」との米情報機関員の政府批判
を伝えた。 (了)
[共同 8月 9日] ( 1999-08-09-07:45 )