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97/10/18 中日新聞より。
牛がゲップをすると地球の温暖化が進む。
まんざらオーバーでもない。ゲップに含まれるメタンガスは、二酸化炭素(CO2)の次に強力な温暖化物質だし、
牛のゲップから出るメタンガスは日本全体の発生量の四分の
一近い▼農水省が牛のゲップを真剣に研究しているのも、
一つには温暖化防止に役立とうという心意気からだ。
はじめは「いかに飼料を節約するか」から始まった研究だったが、
いまでは「いかに生産性を落とさずにゲップを少なくするか」に変わってきた▼農水省畜産研究所の反すう家畜代謝研究室によると「脂肪をうまく使えば、メタンガスは減る、
牛は早く育つ」ことが分かってきたという。
さらに品種改良することで牛を“一人前”にする期間を短縮すれば、牛から出るメタンガスの量を、近いうちに三分の二
に減らす見込みも立ってきた▼ただし、この研究にはお金が
いる。ゲップをするたびに、ガスの量を厳密に測らないと
データが取れない。そのための密閉できる小屋やら機械などに十数億円もかかる
▼「牛のような反すう動物はメン羊、ヤギ、水牛と世界にたくさんいます。欧州では研究もやっていますが、途上国では
まだまだ。研究データはそうした国にも使ってもらうことに
なります」▼地球温暖化は二酸化炭素(CO2)のことばか
りが言われている。来週末に行われる華やかな東京モーター
ショーも「CO2の少ない車を出します」が各社のうたい文句。でもメタンガスだのゲップだの、地味なところで頑張っ
ている人たちも、日本にはちゃんといる。 Copyright (C) 1997, The Chunichi Shimbun
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以下毎日新聞より。
<温暖化防止>牛のゲップで出るメタンを半減 飼料に硝酸添加
飼料に硝酸などを加えると牛からゲップとして放出されるメタンの量を減らせることが、
明治大農学部の日野常男教授(動物栄養学)らの研究によって明らかになった。
大気中のメタンは地球温暖化の一因とされている。牛などの家畜が放出するメタンは
年間発生量の約16%を占めるとみられ、メタン発生を抑制する研究に期待が集まっている。
牛などの反すう動物は第1胃の中の微生物の働きで植物繊維を発酵させ、消化吸収する。
メタンを発生させるメタン菌はそのごく一部だが、他の微生物の働きを助ける役割も果たしている。
日野教授らは、メタン生成に必要な水素を別の物質と反応させて減らせばメタンの発生が
抑えられると考えた。第1胃の中を再現した培地にフマル酸、硝酸を加えたところ、メタンは
ほとんど発生しなかった。第1胃の内容物の発酵は妨げられなかった。
今後、牛での実験に取り組むが、日野教授は「メタン発生量を少なくとも半分に減らせる」
とみている。
メタンは同じ量の二酸化炭素よりも温室効果が約20倍高く、温暖化防止に向けて牛からの
メタン発生量を抑える研究が盛んになっている。従来は牛に抗生物質を与えてメタン菌を死なせたり、
消化吸収されやすい飼料を与えてメタンの発生を抑える方法が主流だった。
しかし、メタン菌を死なせるとフンの量が増え、そこからメタンが発生。消化されやすい飼料も
かえって牛の病気を引き起こすことも分かってきた。
フマル酸や硝酸は植物全般に含まれる。日野教授は
「特別な薬品を使わず、植物中にある物質を飼料に加えてメタンを減らせる可能性が開けた。
この方法だと牛への負担も少ない」と話している。
【松村由利子】 [毎日新聞4月4日]