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http://www.dainikaientai.co.jp/d/d420.html
トレンドレポート
郵貯は4、5年以内に破綻!?
アメリカからつい最近、“驚くべき情報”がもたらさ
れた。元米国防総省スタッフで対日研究の専門家として
知られるデビッド・アッシャー氏(現在経済コンサルタ
ントとして活躍中)が、今年3月23日、東京都内で日本
の新聞記者を集めて会見し、「4、5年以内に財投は破綻
する!」と明言したのだ。その内容は翌日の日経新聞朝
刊に小さなベタ記事として掲載されたにすぎなかったた
め、ほとんどの日本人はその記事の存在にすら気づかな
かったが、その内容は極めて重大なことを暗示してい
た。
財投とは財政投融資制度のことであり、これは郵貯と
表裏一体の関係にある国のシステムである。つまり、こ
のシステムにおいてはお金の入口が郵貯であり、出口が
財投なのだ。正確に言うと、郵貯に簡保と公的年金を加
えたものがこの巨大システムのお金の入口であり、そこ
から入ってきたお金が全てそっくり財投へと吸い込まれ
ていく。ということは、デビッド・アッシャー氏の述べ
た「4、5年以内に財投は破綻する」という内容はそのま
ま「4、5年以内に郵貯は破綻する!!」ということを意
味するのだ。これは驚くべきことである。そこで、その
会見の中身をさらに詳しく見てみよう。まず氏は、「地
価下落などによって国鉄清算事業団や住宅金融公庫など
財投機関が抱える不良債権は民間銀行の問題債権77兆円
を上回るかもしれない」と指摘している。つまり、大蔵
省はかつて銀行の抱える不良債権を40兆円と発表してい
たが、98年に入ってその額を改めて77兆円と訂正して発
表し話題を呼んだが、同氏は財投≒郵貯が抱える不良債
権がその77兆円を上回るかもしれないと言っているの
だ。
一方、国家財政や財投の問題に詳しい経済評論家の森
木亮氏は、財投が抱える不良債権の額を120兆円と試算
している。そこで、その中間をとって財投の不良債権額
を100兆円としてみよう。すると、これは日本の国家予
算1年半分に匹敵する膨大な額であることがわかる。私
たち庶民には想像もつかない額だが、イメージとしてつ
かんでもらうために1つの例を挙げてみよう。もしその1
00兆円を1万円札で積み上げたとしたら、どのくらいの
高さになるのか。実は、エベレスト山の100倍の高さと
なってしまい、宇宙空間に飛び出してしまうほどだ。そ
の高さはなんと880キロメートルにも達する。
そこで、この財投の推定不良債権額をもとにある試算
をしてみよう。財投の総額約4百数十兆に対して郵貯分
はその約半分の230兆円である。そこでそれに比例して
不良債権額も半分と見積もると、郵貯が抱える不良債権
(コゲついた借金の山)の額がほぼ分かる。その額は何
と、50兆円!!
これは、国を揺さぶる大問題だ。残りの50兆円は簡保
や公的年金が抱えた不良債権であり、これも大変なこと
だ。
それもそのはず、「財投」といえば聞こえはいいが、
財投機関とはそのほとんどがお役人の天下り機関であ
り、その代表例が国鉄清算事業団や日本道路公団なの
だ。財投機関の多くは長年の日本国のツケを先送りする
ためのゴミ箱のような存在だったり、あるいはほとんど
採算を度外視した利権まみれのきわめて非効率な準お役
所的組織なのだ。たとえば、国鉄清算事業団は20兆円を
超える破滅的借金を抱え込んで、1年分の金利負担だけ
で1兆円を突破するという信じ難い赤字企業であるし、
かたや国有林野事業特別会計も慢性的な赤字体質で、返
済の目途が立たない3兆円あまりの借金を抱えて身動き
が取れない状況だ。
こうした恐るべき内情を持つ財投の諸機関に湯水のご
とく資金を注ぎ込んでいる郵貯、簡保、公的年金は本当
に大丈夫なのだろうか。
この重大な問いに対して、デビッド・アッシャー氏は
先ほどの記者会見で次のように述べている。 「政府部
門の抜本的なリストラを断行しなければ、財政投融資制
度は4〜5年で破綻する」。ここで同氏がある条件をつけ
ていることに注目しよう。つまり、「政府部門の抜本的
なリストラを断行しなければ」という部分だ。財投機関
とはお役人の天下り機関であり、財投が「国の第二の予
算」といわれていることからもわかるとおり、郵貯等の
資金が流れていっている先の財投機関は政府の一部門な
のだ。ということは政府そのものも含めて財投諸機関の
根本からの歴史的リストラを実行しなければ、財投≒郵
貯は4、5年以内に破綻するということだ。
では、そんな痛みを伴う歴史的リストラを政府自らが
本当に実行するだろうか。答えはNOである。つまり、財
投における抜本的リストラはいまのような政治家では無
理だということだ。
ここで「郵貯が危機的状況にある」ということを証明
するもっとはっきりした証拠を紹介しておこう(当レ
ポート1月30日号参照)。97年9月4日付日経新聞は驚く
べき内容の記事を掲載した。その内容に気づいた一部の
日本人は腰を抜かすほど仰天した。
97年春現在、郵貯の貯金残高は、230兆円もあり、も
ちろん世界最大の“銀行”である。これがどれほどの大
きさのものであるかは、世界最大の資金量を誇る民間銀
行である東京三菱銀行の預金残高約55兆円と比較すると
よく分かる。まさに郵貯はマンモスなのである。
ところが、その記事は次のような恐るべき警告を発し
ている。郵貯の主力商品である定額貯金の満期が、2000
年と2001年の2年間で何と194兆円もやってくるというの
だ。これは10年前の90年と91年に定額貯金の金利が6%
前後のときに預けられたもので、金利がここまで異常に
低下(定額貯金でも1%未満)した現在となっては、ど
れだけの額がそのまま預けかえされるかは疑問だ。
当の日経新聞の記事は、もし大量流出という事態にな
れば解約に伴う現金の確保のために郵貯が膨大に買って
いる国債(つまり日本国債)を売らざるをえなくなり、
債券市場(つまり国債の売買市場)がパニックに陥る可
能性があると警告している。そうなれば、長期金利がい
っきょに暴騰し、株式市場も大混乱となり、日本経済全
体に計り知れない影響を与えることになる。しかも、郵
貯そのものが破綻の危機に瀕することとなり、最悪の場
合、あなたの大切な郵便貯金が引き下ろせなくなる日が
やってくるかも知れない。
そうした事態を阻止するためにも、私たちは秘密の
ベールに覆われた郵貯の実態を政府が公開し、大改革の
ために財投≒郵貯に勇気を持ってメスを入れることを強
く主張したい。
さもないと、山一証券や拓銀の例と同じく、郵貯にX
デーが近い将来やってくることはまず間違いない。
(経済トレンドレポート主幹 浅井 隆)
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