【ワシントン斗ケ沢秀俊】ブッシュ米大統領は14日、自主的な削減努力で二酸化炭素(CO2)など温室効果ガス排出量を、今後10年間で18%程度削減するとの内容の地球温暖化防止案を発表した。大統領が反対を表明した京都議定書への代替案だが、削減目標の法的拘束力がないため、国際的な理解を得られる可能性は少ない。
京都議定書では、米国には08〜12年の間に、温室効果ガス排出量を90年に比べ7%削減することが義務づけられた。90年から現在までの間に米国での排出量は増加しており、「18%削減」は、90年比では4%程度の削減になるとみられる。
ブッシュ政権は「京都議定書を実施すると、米国の経済が大きな打撃を受ける」として、議定書に反対し、代替案を検討してきた。産業界からの要望を踏まえ、経済成長を抑えない範囲での削減目標を掲げた。また燃料効率の向上や、温室効果ガスの固定技術開発など科学技術を生かした削減も重視するとしている。
しかし今回の代替案には目標達成のための法的義務はなく、産業界や個人が自主的に削減に取り組むことになる。
ブッシュ大統領は訪日を控えており、議定書への復帰を求める日本政府に温暖化防止への積極姿勢を示す狙いがあるとみられている。しかし、日本や各国から「義務の伴わない削減では、実効がない」との批判を招くことは必至だ。
◇削減義務なしでは、目標は達成できない
ブッシュ大統領が発表した地球温暖化防止案は法的拘束力を持たない自主的な削減を基本としており、義務や罰則を伴う削減を掲げた京都議定書とは全く異なる。義務を伴わない削減が効果を持たないことは過去の経過が示しており、議定書に代わるものとはなりえない。
ブッシュ政権が自主的削減にこだわったのは、景気後退局面に入っている米国経済への影響を恐れたためだ。今回の発表の基礎となった「大統領経済報告」は「京都議定書の削減目標を実現した場合、米国の国内総生産(GDP)は今後10年間で最大4%程度減少する」と指摘している。大統領も「失業者が増えるなど、国民生活に影響がある」と語っていた。
しかし、自主的な削減には限界がある。90年に締結された気候変動枠組み条約では、先進国が温室効果ガス排出量を90年レベルに抑えることを宣言したが、米国や日本を含めた多くの国で排出量が増えた。このため、京都議定書は法的拘束力を設けた経緯がある。
すでに米国を除く世界の先進各国は京都議定書の早期発効に向けて、国内の批准に取り組んでいる。代替案は国際交渉の流れから外れており、米国が当面の国内目標を定めたという意味しか持たないだろう。(毎日新聞)
[2月15日1時51分更新]