南アフリカで、乳幼児や少女のレイプ事件が続発し、国民の激しい怒りと恐怖を呼んでいる。
昨年10月、生後9カ月の女児が同国北ケープ州の自宅でレイプされ、性器に重傷を負い、現場に居合わせた66歳から24歳までの男6人が逮捕された。赤ちゃんは匿名のため、現地語で「希望」という意味の「ツェパング」と呼ばれている。
昨年12月には生後5カ月の女児が17歳と24歳の男に襲われる事件も起き、公判が開かれたヨハネスブルク裁判所前では「児童レイプは人間の仕業ではない」などと書かれたプラカードを掲げた約200人が抗議デモを行った。犯罪抑止を目指し、野党からは91年のアパルトヘイト(人種隔離)政策撤廃後に廃止された死刑制度の復活を求める声が出ている。
ツェパングちゃん事件の容疑者らは先月、DNA鑑定で「シロ」と出て釈放された。だが、ヨハネスブルク市教育委員のクリーシーさん(43)は鑑定結果に疑問を投げかけ、「自分の意思を表現できない赤ちゃんを犠牲にするなんて」と憤る。
南ア警察当局によると、00年のレイプ被害(未遂を含む)は5万2860件、うち18歳以下の被害が約41%を占める。南ア医療研究協議会の調査では、15歳未満の少女をレイプした犯人の33%が教師、21%が親せきという結果が出た。
同国では国民の9人に1人がHIVウイルスに感染しているとされる。このため、伝統的な信仰療法を用いる妖術師の一部が「未経験な女児とのセックスでエイズが治る」という不可解な迷信を広め、レイプを促しているとの見方もある。
国立ヨハネスブルク病院のピッチャー医師は英科学誌で「政府はエイズ教育や性的被害者への医療支援にもっと積極的に取り組むべきだ」と訴えている。【ヨハネスブルク城島徹】(毎日新聞)
[2月14日21時44分更新]