鈴木宗男・前衆院議運委員長の問題が、NGO(非政府組織)をめぐる「圧力」から、政府開発援助(ODA)にからむ利権の有無などへ拡大する様相を見せてきた。13日の衆院予算委員会での共産党議員の「ODA疑惑」追及に、小泉純一郎首相が「調査」を約束。外交政策に大きな影響力を持つ鈴木氏の力の源泉と一連の言動が、国会の焦点になりつつある。
小泉首相が鈴木宗男氏とODAとの関係について調査する方針を表明したことに対し、川口順子外相は13日、「事務方から話は聞こうと思う」と述べながらも、「ODAに関しては、透明性を持つシステムでやってきたし、全部が密室で決まったわけでない」と慎重姿勢をにじませた。NGO排除問題が一段落したとみていただけに、「鈴木氏問題」の再燃に、幹部は当惑している。
13日の衆院予算委で、鈴木氏との関与が取りざたされたケニアのソンドゥ・ミリウ水力発電所2期工事へのODA供与問題は、田中真紀子外相時代にも、国会でたびたび取り上げられた。
田中氏は昨年6月の国会答弁で、現地で反対運動が起きていることを受け、実態調査を表明。だが、その後は「実地調査では計画を中止すべしという意見は皆無だった」と述べ、追加供与に柔軟姿勢を示すなど、あいまいになっている。
首相が調査方針を断言した以上、鈴木氏とODAの問題で同省が何らかの対応を迫られるのは確実だ。だが、「身内の問題を究明できるはずがない」(民主党議員)との見方は強く、どこまで真相究明ができるかは疑問視する声が多い。
一方、鈴木氏の外遊に頻繁に同行するなど親密な関係が国会でも取り上げられた外務省国際情報局の佐藤優・主任分析官は、ロシアに強い独自の人脈を持つと同時に、鈴木氏から信頼を寄せられていることで知られている。服部則夫外務報道官は13日の記者会見で、佐藤氏の外遊同行について「(公費上の問題は)ない」と表明した。
ODAへの鈴木氏のかかわりについて、野党各党は20日のNGO参加拒否問題に関する衆院予算委での集中審議でただすほか、これとは別に、ODA問題をはじめとした外務省問題に関する集中審議を今後、強く要求していく方針だ。
社民党の土井たか子党首は13日の記者会見で、「外務省は数々の問題の情報が公開されないままだ。20日の集中審議に向け、鈴木氏らの参考人招致を強く求める」と語った。民主党幹部も「鈴木氏が外務省の金を使って利権をむさぼっている構造を徹底的に追及する」と語っており、野党はNGOとODAの合わせ技で、政府・与党を攻めたてる構えをとる。
衆院予算委でODAとのかかわりを追及されたことに、鈴木事務所は13日夕、「こんな騒動の中でコメントはできない」と毎日新聞に答えた。
鈴木氏は4日、ODAの交付に強い影響力を持つ自民党対外経済協力特別委員長を辞める意向を小泉首相に伝えた直後、「私は1円も(ODA)利権にはかかわっていない」と記者団に潔白を主張した。鈴木氏の属する橋本派幹部は「何を反論しても、今は悪いようにしかとられない」と本人に言い含めている。
派内には、鈴木氏の問題をきっかけに、役所への特定議員の圧力を排除すべきだとの姿勢を強調する小泉首相への反発も強い。ある派幹部は「鈴木氏は大きく傷ついた」と相次ぐ集中攻撃にイラ立ちを強めており、同派の議員は「(鈴木氏に)どんな法的な問題があるのか。党内に敵を作って自らの人気上昇を狙う小泉パフォーマンスにはつき合えない」と怒りの矛先を首相に向けた。
一方、自民党執行部は最大派閥である橋本派の「鈴木擁護」姿勢に配慮し、踏み込んだ発言を避けている。ただでさえ、狂牛病騒動の対応をめぐる武部勤農相の進退問題や、加藤紘一元幹事長の前事務所代表による脱税疑惑など野党側の追及材料は十分。執行部にとって「鈴木問題は頭痛のタネ」(幹部)であり、これ以上大きなテーマにならないよう、腫れ物扱いしているのが実態だ。
佐々木憲昭氏(共産)が13日の衆院予算委員会に示した、鈴木宗男氏へのODA受注企業の献金等の調査結果
◆北方四島への人道支援事業(発注年、受注額)と受注業者
国後島向けの自航式はしけ「希望丸」(97年、1億395万円)、色丹島向けの自航式はしけ「友好丸」(01年、1億8900万円)=根室造船▽国後島緊急避難所兼宿泊施設「友好の家」(98年、4億1685万円)=犬飼工務店、渡辺建設工業▽国後島、色丹島、択捉島のプレハブ倉庫(93〜94年、7730万円)=広木建設
◆95〜00年の事業受注業者から鈴木氏への献金の合計額
根室造船=240万円▽犬飼工務店=82万4000円▽渡辺建設工業=788万円▽広木建設=72万円
◆北方四島人道支援事業受注業者と鈴木氏の関係
根室造船社長=鈴木氏の政治団体「21世紀政策研究会」根室支部代表、根室市鈴木後援会幹部▽犬飼工務店社長=鈴木中標津後援会会計責任者
◆「宗男ハウス」など
国後島緊急避難所兼宿泊施設「友好の家」は「宗男という有力政治家がつくってくれた」と言われており、「宗男ハウス」と呼ばれている▽「友好の家」には「鈴木さん、あなたは私たちの友達です」との横断幕があり、食堂には鈴木氏の写真が飾られている▽色丹島の診療所が「鈴木宗男診療所」と呼ばれている▽94年に色丹島に贈られた10人乗り四輪駆動車は「宗男号」と呼ばれている▽色丹島のマイクロバスには「鈴木さんは友達です」との横断幕が張られている
◆95〜00年のアフリカ向け円借款・無償供与事業受注業者から鈴木氏への献金の合計額
鴻池組=180万円▽五洋建設=12万円▽三祐コンサルタンツ=12万円▽清水建設=120万円▽地崎工業=96万円▽大成建設=24万円▽大日本土木=24万円▽大豊建設=96万円▽太陽コンサルタンツ=36万円▽東亜建設工業=84万円▽日さく=12万円
[毎日新聞2月14日] ( 2002-02-14-01:59 )
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鈴木氏は大きく傷ついた、か。
傷ものになった商品や道具なら捨てればいい。自民党は人材が多いから鈴木議員の代わりぐらい幾らでもいるだろうに。
とは言え何だか急に鈴木議員に関する疑惑がボコボコ出て来ていますが、彼が持っている選挙基盤や利権を奪いたがっている連中が、情報をリークしているのかも知れませんね。