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【日本の政治が動く】「田中外相更迭劇」は実質的な『小泉おろし』の“第一幕”

投稿者 あっしら 日時 2002 年 2 月 02 日 19:24:37:

1月29日から30日に変わろうとする深夜に「田中外相更迭騒動」が起きた。

ちょうどその前日に、《小泉 純一郎首相は『内閣総理大臣不適格者』か『自国破壊者』》( http://www.asyura.com/sora/bd16/msg/464.html )をアップしており、そのレスとして、【日本の政治が動くか】という共通タイトルを付けて4本の書き込みを行った。

最後の書き込みでは、『小泉首相は、「田中外相更迭」が自政権の命取りになる可能性が高いことも視野に入れていると思う』と結んだ。

「田中外相更迭」の第一報から福田官房長官や橋本派の策動を匂わせる文章を書いたが、それ以降のメディア報道を通じて、それでほぼ間違いないと判断した。

そして、政界に強い影響を持っていると自負しているネベツネの「読売新聞」が、本日(2・2)朝刊1面で『内閣支持率47%に急落』という緊急世論調査の結果を報道したことで、『田中外相更迭劇』が『小泉おろし』の衝撃的な第一幕であったと確信した。

(「読売新聞」は、デフレ解消を最優先する景気対策を求め、小泉首相の政策とは対立している)


■ 青木参院幹事長のシナリオ

橋本派(平成研究会)の実質的なオーナーとも言われている青木参議院幹事長個人のシナリオとは思っていないが、今回の「NGO排除問題」を契機とした「田中外相更迭劇」は、“小泉改革”に異議を唱えるとともに、橋本派を排除した組閣と党運営を志向した小泉総理総裁に敵意を持ち続けてきた橋本派の強烈な反撃の狼煙として書かれたものである。

“抵抗勢力”の中核と言われ続けてきた橋本派が、小泉政権発足後から「小泉おろし」の機を窺い続けたことは間違いないだろう。

そこに降って湧いた?のが「NGO排除問題」である。“言った言わない抗争”と揶揄されたほどの低次元レベルで国会審議が紛糾したが、これを絶好の機会だと捉えたのが橋本派であった。
「第二次補正予算」の早期通過を妨げる国会審議の紛糾は、外務省官僚の誤りを認め野上事務次官を辞任させるか、関係外務官僚や関係者(田中外相・大西氏・鈴木代議士)を国会に証人として喚問しウソを付いたものがいるのなら懲戒免職(外務官僚)に処すことで解決できる。(最初は政治的な解決策で、後者は外務省改革につながる解決策)

しかし、橋本派は、小泉首相の出身派閥である森派を抱き込み、「国会正常化」を名目に、「田中外相・野上事務次官・鈴木議運委院長の同時更迭(辞任)」を小泉首相に迫った。

メディアは、それを、“田中真紀子憎し”もしくは“田中外相無能論”に基づく「田中外相罷免(野上事務次官や鈴木代議士はそのための代償)」であるかのように報じている。
そのようなメディア報道が、意図的なものか、無能であるが故の錯誤かはわからないが、それは、今回の「田中外相更迭劇」の真相を見えなくするものである。

“青木シナリオ”には、「田中外相更迭劇」が「小泉人気の凋落」をもたらすことも含まれている。そして、それが現実化していると報じられていることに意を強くしているはずだ。(緒方貞子氏への外相就任要請も、昨年の要請実績で断れることはわかっていたはずだ)

メディアは、「小泉首相が“抵抗派”に擦り寄った」、「今後は小泉改革が進まないのではないか」といった報道をしているが、党内基盤を持たない小泉首相は、元々“抵抗派”が本気で政策変更を迫れば抵抗できない立場にある。

小泉首相は、その政治センスから、今回の「田中外相更迭」にはそれなりに強く抵抗したと見ている。しかし、総理を続けたいのなら、「田中外相更迭」に合意しなければならないという瀬戸際に立たされたのであろう。

“抵抗派”は、「国会正常化」を名目にしながら、「田中外相更迭」に同意しないのなら、補正予算案を干してしまうと恫喝したかもしれない。
“抵抗勢力”が与党単独採決は無謀だと言えば、「第二次補正予算案」は衆議院さえ通過しない。そのような事態に陥れば、小泉首相の責任論が声高に叫ばれるだろう。

しかし、そのようなかたちで政局が動けば、小泉首相が、「“抵抗勢力”が外務省問題をエサに“改革”を妨害している」と叫び、解散総選挙に打って出る可能性もある。

今回のシナリオを書いた連中は、そのような最悪な事態は避けたい。


■ 自民党の圧倒的多数派は「反小泉改革」

個人的には、昨年4月の自民党総裁選で「郵政事業民営化政策」を掲げる小泉氏が当選するとは思っていなかった。「郵政事業民営化政策」は、自民党内であまりにも異端だからである。
しかし、都道府県単位で行われた党員投票で圧倒的な支持を受けた小泉氏は、自民党総裁に就任し、国会で内閣総理大臣の指名を受けた。

自民党の圧倒的多数派は、政治信念(あるとすればだが)を曲げて、自己保身のために人気が高い小泉氏を総裁に祭り上げたのである。

そして、小泉首相は、「小泉改革」なるものを掲げ、「抵抗勢力がいるのなら、自民党をぶっ壊しても改革を進める」と叫びながら、現在に至った。

それが実態としてどういうものであったかは、最初の書き込みや他のものを参照していただくとして、実に面白いことに、「小泉改革」は、まったくといっていいほど、自民党や連立与党(公明党・保守党)の支持を受けていなかったのである。

「小泉改革」抵抗勢力=与党多数派は、党内基盤もなければ官僚組織への統制力もない小泉氏に実効性のある改革ができるわけはないと踏み、表面的には「小泉改革支持」を唱えながら、制約はあるとしても自分たちの政策を遂行してきたのである。

国民の自民党支持を回復させるために小泉氏を利用しながら、実質的な政策は自分たちのものを実現していくという構図である。

小泉首相自身が、「改革なくして成長なし」というスローガンは叫べても、具体的な政策を披瀝できない人物だから、“抵抗勢力”にはほとんど支障がない。

“抵抗派”を形成している勢力には、橋本派や亀井・江藤派、高村派(寄らば大樹)だけではなく、加藤氏と袂を分かった橋本派別働隊の堀内派も、そして、YKKとして小泉首相の盟友である加藤派も含まれる。
さらには、小泉首相の出身派閥である森派さえも“抵抗派”の大きな一角を占めている。官房を抑えている森派の福田氏は、内閣における“抵抗勢力”の重要拠点である。
山崎派も、政策的には「小泉改革」とは異なるものである。

公明党は、政策だけでなく、反創価学会色が強い小泉ライン(YKK)を元々快く思っていない。良好な関係にある橋本派の動きにそのままシンクロするはずだ。

実体がない「小泉改革」なので微妙で同床異夢なのかもしれないが、それとなく親近感を抱いているのは、河野グループや無派閥の方々であろう。

小泉首相は、まさに「ハダカの王様」なのだ。

昨日のアップでも書いたが、「小泉改革」よりも、「鳩山改革」のほうが、ずっと“ラジカル”で“ピュア”なものであり、それなりに具体的な政策もある。だから、より「自国破壊」的で危険なものだと見ている。

小泉首相が、パフォーマンスではなく、ブレーンや官僚の手で少しずつ出てきている「小泉改革」を心底実現したいと考えているのなら、民主党鳩山派と組むのが正しい選択である。小泉氏のかねてよりの持論である「郵政事業民営化」も、その連立で国会で多数派を占め内閣を樹立できれば実現できるであろう。


■ 「鈴木宗男悪者論」は願ったり適ったり

「NGO排除問題」そして「田中外相更迭問題」は、鈴木宗男という代議士を大きくクローズアップさせた。
しかし、彼は、単なるカスでしかなく、次回の総選挙で国会議員から放逐すれば済む話である。
大西氏が代表を務めているNGOを排除したかったのは外務省官僚そのものであり、鈴木氏はその代行を担っただけである。外務官僚組織は、田中真紀子氏でさえどうしようもなかった(首相(官房)がまったく協力しないどころか敵対してきたのが主要因)くらい、一筋縄ではいかない狡猾な人たちが主流派を占めている。

今回の「田中外相更迭問題」がとんでもないワルと見られている鈴木宗男代議士の問題に収斂し、「外務省は特定政治家の介入に抗せなかったことが問題」というかたちで決着すれば、“外務省改革”は元の木阿弥である。

鈴木宗男氏は、男気もあり面倒見もいいようだから、ここは自分が悪者になって一件落着するのなら、喜んで悪者になるぞという気持ちだろう。
その代わり、鈴木氏は、少なくとも橋本派内と外務省ではヒーローになる。

メディアや国民が、「鈴木宗男はとんでもないヤツだ」、「あいつが外務省を引っかき回していた」と言ってくれればくれるほど、今回のシナリオを書いた連中は大喜びなのである。

偶像崇拝が禁止されているはずのキリスト教の聖堂にキリスト像がまつられているように、人は、わかりやすいほうに流れがちである。そして、支配者たちは、人々のそのような意識傾向を利用し、本質的な問題を避けるために、わかりやすい善悪論で物事を表面的に片づけようとする。


■ 小渕元首相→森前首相と同じ構図で小泉首相→?が企図されている


今回の「小泉おろしシナリオ」を書いた連中は、自分たちの政策(権益)をよりスムーズに実現するため、小泉首相を引きずり降ろしたいと考えている。
しかし、「解散総選挙」という“危険な”過程は踏みたくない。総選挙に勝利しても、あと2年近くある小泉総裁の任期を考えれば、再び「小泉首相」になってしまう。

総選挙に負ければすべてを失う。小沢氏の反乱で、野党の悲哀をイヤと言うほど身に染みさせているはずだ。昨今の経済状況では、何かをきっかけに自民党が負けてしまうこともあると考えているだろう。

「小泉おろし」派が狙っているのは、小渕元首相が倒れたときと同じような密室での政権移譲である。
青木官房長官(当時)が「病室で小渕首相から後を託された」と主張し、内閣総辞職→総選挙という過程を踏むことなく、小渕元首相→森前首相へと政権を移行させた手法を再び再現させようとしている。

しかし、「小泉おろし」派が抱えている最大の問題は、小泉氏に代わる総理・総裁を誰にすればいいのかということである。
加藤氏は、私設秘書の脱税問題で政治的力を失っている。山崎氏は、国民的人気を見込めない。橋本氏は、手垢にまみれている。高村氏は、人気もパフォーマンス力も不足だ。亀井氏は、床の間に据えるにはちょっと難ありだ。
野中氏が立てば少しは可能性があるかもしれないが、本人は固辞するだろうし、異論も多いだろう。
こうやって考えてみても、次はという人が自民党にいない。

「小泉おろし」派はなんとか担げる人物を見つけだすかも知れないが、「小泉おろし」の“第二幕”は、小泉首相のままでの内閣改造と党役員人事になる可能性が高いと思う。

橋本派は、最大派閥でありながら、内閣には派閥の意向を無視されたかたちで村井氏と参議院の片山氏が2名入っているだけで、党三役には1名も就任していない。
橋本派は、小泉氏から完全といっていいほど干されてきた。まずは、その“是正”を目指すことになるだろう。

内閣には、派閥の意向に添った人物を望むポストで2ないし3名送り込み、党三役も、幹事長を最大の標的に最低でも政調会長をとるだろう。

「田中外相更迭問題」で橋本派に屈した小泉総理総裁は、このような橋本派の要求に抗うことはできないだろう。(「1内閣1大臣原則」も崩れた)

“第三幕”が、本当の「小泉おろし」になるのだろうが、現在の経済状況を鑑みれば、そこまで小泉政権が維持できるかどうかが問題となる。


■ 国難と言える日本の危機 − すぐに解散総選挙を −

年や月を追うごとではなく、日を追うごとに、日本の経済は危機的な様相を深めていくだろう。
そのようななかでの政局の混乱は、そのような危機に拍車をかけることになる。それは、政治的政策的対決ではなく、愚にもつかない政局の混乱だからである。

小泉政権は、もう既にだが、「小泉改革」と「景気対策」の二兎を追う政策を強めていくことになる。「小泉改革」は『金持ち優遇税制改革』以外ほとんど実体がないものだから、現実の政策としては、「景気対策」という名の国債増発による財政支出の拡大である。

30兆円という新規国債発行枠が外れると市場が認識した途端、既発国債価格はさらに下落し長期金利が上昇することになる。
これは、80兆円以上といわれる大量の国債を保有している銀行を直撃し、財務状況をさらに悪化させることになる。そして、4月からは、定期性預金に対するペイオフ制度が解禁となる。

「小泉改革」と「景気対策」の二兎を追う政策は、日本の経済危機をより速度を上げて深めていくことになる。

この主張は、『「小泉改革」は将来的な景気回復どころか“首吊り人”の足を引っ張るもの』( http://www.asyura.com/sora/hasan6/msg/26.html )を参照して欲しい。


現在の日本は、政治的空白が生じる「解散総選挙」なんかできないと反論できる状況にはないのである。
この時期、「平成14年度予算」が必要というのは理解できるので、国家及び地方公共団体の行政機構が動けるだけの予算を与野党で迅速に審議して、取り急ぎ成立させればいい。そして、政策的な予算は、総選挙後に補正予算を組む。

本予算が成立したら、小泉首相は衆議院を解散し、総選挙を実施する。

それぞれ政策を掲げている政党が、自党の政策を採ったらこれからの日本がどうなるかを“明瞭”にぶつけ合い、それぞれが反論にきちんと答えながら、国民の判断を仰がなければならない時なのである。

「小泉改革」も、世論調査レベルでは高い支持率を得ているとしても、「小泉改革」の内容を掲げて総選挙で勝利したものではないのである。

各政党がはっきりと今国難にあることを国民に伝え、日本のこれから数十年が今回の選挙で決まってしまうことを認めるべきである。
所属する政党の政策と己の政治信条(政策)が異なると自覚した政治家は、どの旗(政策)のもとに立つかを選択しなければならない。
「勝てば官軍」と、政権党になりそうだからと考え自らの政治信念と異なる政党に居座る政治家は、政治家ではなくたんなる“利権漁り屋”である。


民主主義であることを善しとするのなら、そのようなかたちで戦われた総選挙で勝利した政党(連合であれ)の政策を実行することで、たとえ日本が悲劇的な将来を迎えたとしてもやむを得ないことである。

しかし、総選挙の洗礼も受けないまま、国民の支持があると強弁して日本をとんでもない状況に陥れた政治家は、一死に値すると断じる。

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★ 今日午前放送されたテレビ朝日の「ザ・スクープ」で、鳥越キャスターは、“言った言わない問題”で「野上事務次官は田中真紀子さんに鈴木宗男氏のことを電話で言っていないと思う。官僚は、巧妙にごまかしても、国会答弁でウソはつかないだろう」(趣旨)と言っていた。これは、国会での証人喚問などで白黒をつけない限りわからないことなので、まあいいだろう。

しかし、鳥越キャスターが、「外交機密費の官邸への上納問題で真紀子さんが真相究明を放棄したことで、真紀子さんでは外務省改革はできないと思った」(趣旨)と語ったことには異論がある。
 外交機密費の官邸への上納問題は、外務省の問題というより、内閣そのものの問題であり内閣官房の問題である。田中真紀子氏は、小泉首相と福田官房長官に改革のゲタを預けたのである。この問題で改革できない云々と言うのであれば、小泉首相そのものに、「改革」はあなたではできないと言うべきである。

昨日もアップしたが、「日刊ゲンダイ」(2・2付)には、『田中真紀子も、「小泉さんも首相として機密費を使える立場になったらコロッと変わった」と外国メディアとのインタビューで嘆いていたが、小泉首相の裏と表を9ヶ月間、身近で見て、内心はウンザリしていたはずである』とある。

個人的印象だが、TVに出ている人たちでジャーナリストとしての気概をわずかでも持っているのは、鳥越氏などごくごくわずかしかいないと思っている。
その筆頭が鳥越氏だとも思っている。

鳥越氏には大いに期待しているので、この場を借りて批判させてもらった。







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