★阿修羅♪ Ψ空耳の丘Ψ16 ★阿修羅♪ |
愛国者か、それともテロリストか?---国内の弾圧強化 :ウォークライ
原題
"Are You A Patriot or a Terrorist?" by Warcry, in Earth First!,
November-December 2001
「デススター[小さな星形の飛び道具]」が完全に動きはじめた。9月11日の攻
撃から一ヶ月以上が過ぎた。ローア・マンハッタンを風が吹き抜けるとき、コ
ンクリートの埃と人骨の混ざりあった不快な臭いがする。グランド・ゼロで瓦
礫がくすぶり続けているさなか、合州国はアフガニスタンに空爆を開始した。
アフガニスタンの民間死傷者は国際機関の推定によれば、数十人から200人以
上の幅になる。ブッシュ政権によっておしつけられたメディアの報道管制によっ
て、正確な情報にアクセスすることは非常に困難になっている。アメリカ人は
情け容赦のないクラスター爆弾の雨のなかで一日中暮す必要はないが、我々自
身の警察国家の急速な強化のなかで暮すことになるだろう。オサマ・ビン・ラ
ディンがこの国のテロリストのポスターの主人公として貼り出されているが、
我々が問わねばならない疑問は単に、誰がやったのかではなく、むしろ、誰がこ
の攻撃で得をしたか、である。
ニューヨークやワシントンでトラウマを抱えた人々と衝撃を受けた国家が911
のテロリストの攻撃を理解し、そこから回復を図ろうとしているなかにあって、
ブッシュ政権は、議会で政府の議案をむりやり押し付けるその驚くばかりのや
り口によって、政治的に圧倒的に有利な立場を獲得した。
《盗聴に必要な適切な手段の提供とテロ根絶法(愛国法)、別名2001年反テロリス
ト法》
提案された法案は、数十年にわたる国内取締まりの軍事化と国内の社会不安の
鎮圧というパターンと矛盾するものではない。
リバタリアン[政府権限の強化に反対し、保守的だが自由主義的な傾向を持つ
考え方]のカトー・インスティチュートは、反テロ法に対して「テロリストの
あらゆる行為はすでに違法とされている。現行法はすでに潜在的なテロリスト
に対する捜査に十分すぎるほどの権限を与えている。テロリズムに対するセン
セーショナルな脅威は、アメリカの人々から基本的な自由を奪うための口実に
利用されるべきではない。長期的な公共的安全は、憲法の積極的な強化によっ
てもっともよく守られるのであって、すでに連邦当局が持っている権力の濫用
をもたらすようなより大きな権限をかれらに与えることで守られるわけではな
い。」と厳しく批判している。
米国自由人権協会(ACLU)は、この法案の条項を、「すべてのテロリズムの刑罰
を終身刑に強化できると同時に、テロ攻撃の定義を限定する条項を廃止すると
いう提案が法の適正手続きとプライバシーに影響を与える」ことから、慎重な
再検討が必要であると批判した。法案はまた、Racketeer Influenced and
Corrupt Organization (RICO法 [事業などへの犯罪組織の浸透を取締まる法
律]1960年代末に成立) の拡大を意図しており、この点についてもACLU は危
惧を抱いている。RICO法の条文は、幅がひろく、関連犯罪によって人々を起訴
することによって、憲法修正第一条に関わる重要問題をうみだした。
《報道管制》
いつものことだが、メディアは国家宣伝のチアリーダーの役目を果たしている。
ブッシュ自身が来るべき軍事作戦について情報管制をしいた。9月27日に
Fairness and Accuracy in Reporting(FAIR)は「[NBCの]Nightly News は反
テロ法を正当化するためのこじつけをおこなっている」との警告のレポートを
出した。このレポートは、「法案がもたらす変化は大きいにもかかわらず、
Nexis[データベース会社]のニュースデータベースの検索では、CBSのEvening
NewsもNBCのNightly Newsも立法による潜在的なインパクトについて一本の報
道も行っていない。ABCのWorld News Tonightはセキュリティの重要性は市民
的な自由の喪失を必然的にもたらすであろうとの考え方を事実として述べるに
とどまった。新たに設置されたOffice of Homeland Seculityについての関連
レポートのなかで、アンカーのTom Brokawは、このオフィスの名称は「全体主
義体制のそれを想起させる」が、しかし「この攻撃は、アメリカでは何かが変
らねばならないということを証ししている」と述べた。NBCのAndrea Mitchell
は、「どれだけの権限がこの新たなセキュリティの皇帝[ツァ-、ロシア皇帝
の称号でもある]が実際にもつことになるのかは、だれも知らない」しかし、
安全を維持するためには、アメリカ人は、ひっきりなしにどちらを取るかと問
うような自由を放棄しなければならない。」と述べた。
《直接行動運動に対する脅威》
2001反テロ法についてのACLUの弁護士Rachel Kingによって下院法務委員会に
提出された声明は、「重大な市民的自由にかかわる諸問題」があることを確認
している。「法案のその他の諸条項は911事件に対するものを越えているとい
うのがわれわれの強い確信である」と述べている。
直接行動の諸運動にたいする極めて大きな影響について、キングは「現行法の
もとでのテロリズムの定義はすでに市民的不服従の一定の行為を含むのに十分
なほど幅が広い。この法案は、すでに幅広い定義がなされているものをさらに
押し拡げるものとなるであろう。例えば、世界銀行に対するデモに参加する人々
やVieques Islands近辺での爆撃作戦に抗議する人々はテロリズムの定義のな
かに含まれるかもしれない」と指摘する。
キングは、ある大学生が、デモの最中に、連邦政府ビルの窓ガラスを割る行為
を行って、連邦テロ条項によって検挙されるといった状況がありうるといった
ことを想定している。政府は個人のDNAのサンプルを得る権限を与えられ、こ
うした権限を制限する条項は廃止され、極秘の大陪審の証拠が軍、諜報機関あ
るいは出入国管理当局に提供され、被告と一緒に集会に参加したことのある者
の捜査にRICO法を利用し、あるいは、終身刑を適用するためにこれを利用する。
愛国法のテロリズムについての記述は、些細な財産の破壊によって、デモ参加
者を終身刑にできるような内容を含んでいる。Criminal Justic Policy
Foundationの代表、Eric Sterlingは、「交通標識を破壊したボーイスカウト
のナイフを所持した子どもがテロリストだとレッテルを貼られる可能性もある」
と述べている。人に対するなんらかの武器の使用や、使用の恐れ、「単なる個
人的な貨幣利得以外の目的での」所有は、テロリズムを構成するかもしれない。
提案された愛国法によれば、「テロリスト組織」の活動を「支援する」人を起
訴することが可能である。たとえ、その支援が、その組織が「テロリスト」で
あると認識されていなかった時のものであっても、訴追できる。例えば、合法
的に滞在している外国人が、過去において、軍事的作戦と非暴力の作戦の両方
を行ってきたAfrican National Congressに対して、合法的に寄付行為を行っ
たことをもって、いま現在の時点で、国外退去させられるということが起りう
るのである。これは、あなたたちが気に入ったキャンペーンに寄附することが
テロリストを「支援している」とみなされる可能性があるということを意味し
ている。
《移動盗聴と電子的監視》
捜査当局は、現在、電話の逆探知が捜査当局によって可能であるのと同様に、
捜査令状なしで、「テロリスト容疑者」の受発信する電子メールのアドレスを
追跡することができる。反テロ法は、また、政府が教育記録をより容易に入手
できるようにしている。
容疑者が、電話、公衆電話、友人宅の電話など、利用する電話を変える場合に、
従来はその都度新たな令状が必要であったが、これを廃止して、捜査官は、特
定の電話ではなく、特定の容疑者を盗聴するための令状を裁判所から得ること
が可能になると思われる。ジョン・アシュクロフト司法長官は、議会に対して、
警察が、令状や裁判所の聴取なしに、もっと自由に盗聴捜査ができ、逮捕や国
外退去させられるように求めている。電子メールやボイスメールの押収を許す
ことは、CIAとFBIのよりいっそうの協力関係を強め、現在では禁止されている
CIAによる国内活動につながるおそれがある。
《極秘捜査》
ACLUが危惧する他の条項には「秘密[Sneak and Peak、こっそり、こそこそす
ることという意味がある]」捜査がある。これは、政府が令状をもって、あな
たの自宅や事務所に、あなたが不在中に入り、コンピュータのハードディスク
などを捜索、押収あるいはコピーを取り、数ヵ月たたないとこうした捜査が行
われたことも知らされないというものである。キングによれば、ACLU は、
「当局は、こうした権力を、テロリズムの重大犯罪に限定して利用することを
意図しているのではなく、これをあらゆる犯罪事案のすべての個々の捜索令状
に拡大することを求めている」という。
《DNAデータベースの拡大》
不当な捜索押収に関して、連邦政府は、「証拠」としてあなたの身体を手入れ
することが可能になるかもしれない。ACLUは、「DNAサンプルが不要になった
場合にこれを破棄するという条文がなく、したがって、これは政府が犯罪捜
査とは無関係な高度に個人的な情報へのアクセスを得るであろうということを
意味している。」と指摘している。
さらに、キングは「上記の条文は、テロリズムの重大な事案の起訴に必ずしも
必要とはいえない。というのも、現行の法律は、すでにこうした事案をカバー
しているからである」と述べている。これらの条文が適用されるであろうとお
もわれるのは、テロリズムの法令で起訴される重大犯罪とはいえない事案にな
る」と述べている。
《大陪審》
「現行法では、大陪審が得た情報は、極秘であり、限定された環境のもとで、
この事案を捜査している弁護士や法執行機関の職員に開示されるのみである」
とキングは述べている。さらに彼は、「わが国では、ながらく軍が民間の刑事
犯罪事案を捜査することは禁じられてきた」と付け加えている。刑事事件の情
報を諜報機関、軍そして入国管理当局が共有するといういうことは、これら組
織のあいだの機能の違いをあいまいにし、軍を民間の法執行から排除するとい
う憲法の原則を侵害する危険がある。大陪審で捜査されている多くの人々は、
起訴されていない。極秘で処理すること維持するのは、根拠のない非難による
ダメージのために引き起こされる悪評から本人たちを守る役割を果たすうえで
必要なのである。
《謀議についての立法》
キングによれば、反テロ愛国法には別の危惧もあるという。つまり、この法律
は「テロ未遂を犯罪とし、テロリズムの謀議をテロリズムの実行と同程度に処
罰することになろう。また、死刑を拡大しようとするための裏口としてこの条
項を解釈することも可能だ」という。この条項の別の解釈では、あたかも彼、
または彼女がテロの実行を成し遂げたかのようにみなして、未遂や謀議で有罪
となった者を処罰するように要求しているとも読める。こうした拡大はきわめ
て不当な結果を招くと思われる。謀議についての法律はきわめて幅広く網を張っ
ており、時には犯罪にごくわずかしか抵触していない人たちをも巻き込むもの
となっている。」
新たな反テロ法は、また、政府に、有罪の立証がなされる前に、犯罪について
告訴された人の財産を差し押さえる権限を与えている。この変更は、文字通り
の「テロリスト」だけでなく、通常の犯罪事案にも適用される。
保守系の最高裁判事、サンドラ・デイ・オコンナーは、ニューヨークタイムス
によれば、アメリカ人は「よりいっそうの安全を実感するために」個人的な自
由の幾ばくかを「断念する」意思をもたねばならないだろうと述べたという。
もし、合州国憲法が本来この国が持つべき安全のための手段であるとすれば、
わが国は、軍事独裁に反対することになるが、そうだとすれば、オコンナーの
引用された発言は、悪い知らせだということになる。というのは、何が「合憲」
でなにがそうでないかを決めるのは最高裁だからだ。我々は、最高裁に我々の
最も基本的な憲法上の権利を支えることすら期待できないわけだから、直接行
動運動をとってきた我々の運動のエネルギーは、現在の状況では、悪評にさら
される恐れがあるとしても、一般の人々に警鐘を鳴らす方向で活動する必要が
ある。
《人種差別主義的な「プロファイリング」》
911事件以降、アラブ系や非白人の人々に対する殺人、暴行、殺害の脅迫その
他の脅迫に加えて、あらたな諸立法は、政府が最新の「容疑」人口を「プロファ
イル」し探し出すことを認める人種別のプロファイリングを許している。これ
は、1940 年代の日本人の強制収容キャンプの現代版、テクノロジー版であっ
て、このプロファイリングによって、かつてと日本人にたいして行われたのと
同様の目的で、容易に利用される可能性がある。反グローバル化運動の活動家
は、大衆的なデモに参加するために国境を越える際に、しばしばこうしたプロ
ファイリングに遭遇する。アフリカン・アメリカンは、ドラッグ戦争での捜査
手段として広範に用いられている人種プロファイリングに常に直面してきた。
ドラッグ戦争はまた、「国内防衛」のイニシアチブだけでなく、反テロ法の諸
規則とも完全に首尾一貫し、両立可能な軍事化した国内警察の対応を生み出し
てきた。ドラッグ戦争は「警察が国境警備隊と協力し、へリコプターや自動小
銃をもって行動することを許してきた」とシアトルの全米法律家協会[Seatle
National Lawyers Guild]のポール・リッチモンドは述べている。ドラッグ戦
争同様、「反テロリズム」は、軍事、刑務所、産業監視複合体を正当化し、不
朽のものとするための何でも含み込めるフレーズなのである。
エコロジーの防衛戦線の最前線にいる我々の多くは、全体として、連邦政府に
よる迫害、勾留、暴力を被ってきた。リベラルな人々やより穏健な人たちがい
ま、彼らもまた政治的な抑圧のうねりにさらされていることに気づいており、
こうした人々に我々は、よりいっそうのシンパシーを感じ、支援と連携を見い
だすことが可能だと思う。911の事件は悲惨なものであり、特にグランド・ゼ
ロの近くの人々にとってはそうであろうが、我々は国家がよりいっそう防衛的
になり、まさに攻撃的になるなかで、ショックや混乱から我々の運動をスロー
ダウンさせてはならない。ウォッブリー[世界産業労働組合、今世紀初頭に大
きな影響力をもった労働運動]のオーガナイザー、ジョー・ヒルがまさに彼が
処刑される直前に残した言葉を思い起こそう。「嘆くな、組織せよ」
我々は、アメリカ大陸の2000万人の先住民を虐殺して以来、警察国家のなかに
いる。パツィ・クラインが述べているように、「唯一異っていること、新しい
ことは、公然と軍事政権のための完全な青写真を法典化し、合法化したことで
ある」