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Subject: ごまめの歯ぎしり 12月25日号
ごまめの歯ぎしり メールマガジン版
衆議院議員 河野太郎の国会報告
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アフガニスタン出張記 上
12月17日(月)
塩崎恭久、下地幹郎両代議士と一緒に、成田から北京経由でイスラマバー
ドへ。
親というのはありがたいもので、昨日、親父が外務省に電話をして、「う
ちの近所のせがれがアフガニスタンのマザリシャリフに行くと言っている
のだが、状況はどうか」。外務省が「お宅のどら息子のことでしょ」と言っ
たかどうかはわからないが。
出発前にイギリス大使館からイギリス軍の情報をもらい、現地に人を出し
ているNGOから事前のブリーフィングを受ける。
12月18日(火)
朝、イスラマバードを出発し、パキスタンの北西辺境州のペシャワールへ
往復。
ペシャワールでは、12月11日から13日まで東京で開かれたNGOに
よるアフガン復興会議に出席したアフガンのNGOのメンバーと再会。ペ
シャワールには、すでにこのアフガン内戦が最初に始まったときからの難
民が数多く出ている。ここで一番古い難民キャンプは、二十年も前にでき
たもので、そこにはもう国連の援助も届かず、スラム地区のようになって
いて、治安も悪い。今回の空爆開始後、アフガニスタンからパキスタンに
二十五万人が難民として出て、そのうち十七万人がペシャワールに到達した。
シャムシャトという新しい難民キャンプを訪れるつもりだったが、日本の
国会議員の一行だということでペシャワールの当局が、中央の役所の許可
がないとキャンプへの立ち入り許可を出せないと土壇場で難色を示す。何
かあったときの責任を取るのが嫌だということらしい。そうは言われても、
ラマダン明けのイードという正月で役所が休みであるため、中央の許可は
もらえない。結局、シャムシャトのキャンプ訪問はあきらめる。
ペシャワールには日本のNGOの物資倉庫もあり、パキスタン側の拠点の
一つになっている。このあたりからアフガニスタンにかけては、道も悪く、
NGOが活動するために四駆の自動車が不可欠だ。日本の各NGOも日本
から二十一台の車を海路で送ってきている。しかし、そうした車が、関税
の免除措置を受けることができず、十月初めから、カラチとポートカシム
の港の倉庫で眠っている。この国では自動車には関税が280%かかるた
め、関税が免除されなければ、一億円を超える支払いが必要になってしま
うのだ。
夜、日本大使館の担当者からアフガニスタン状況についてのブリーフィン
グをしたいという申し入れがある。しかし、これは全くの時間の無駄だっ
た。本来ならば、日本政府の対アフガニスタン戦略の現地司令部であるは
ずのイスラマバードの大使館に、アフガニスタン国内に関する情報が何も
ないのだ。すでにNGOや国際機関の職員、それにマスコミなどかなりの
人数の日本人がアフガニスタンに滞在しているのにもかかわらず、日本の
外務省の人間は誰一人アフガニスタンにはいないのだ。つい先週、アフガ
ニスタンを担当する中近東二課長がアフガニスタンに初めてはいったもの
の、宿泊の手配まですべてNGOが面倒をみるありさまだ。外務省がカブー
ルに設置する連絡事務所も日本のNGOの現地スタッフが探して、手配し
たもの。
大使館は、我々に、延々と、ボン合意と暫定統治機構の説明をするが、新聞
の記事のほうが詳しいよ、と言いたいぐらいだった。大使館はマザリシャリ
フのドスタム将軍とのルートを持っていますか、と尋ねると、イスラマバー
ドにドスタム派の事務所があり、そこと連絡を取っていると胸を張るが、僕
らに今回同行してくれるNGOは、既にマザリシャリフに一人駐在し、ドス
タム将軍自身の携帯電話の番号を知っていてそれで直接連絡をしている。N
GOでもそれぐらいのことをやっているのに、外務省は、一体何をしている
のか。
大使館に、カラチの港の四駆の問題について尋ねると、まるで他人事のよう
な返事が返ってきた。外務省にとってNGOというのは所詮、他人なのか。
アフガン復興会議を一月に日本で開くというのに、このありさまで、心底驚く。
12月19日(水)
国連の飛行機でイスラマバードからマザリシャリフへ飛ぶ。
当初はカブールに行くつもりだった我々をマザリシャリフに行かせたのは、
NGOだった。カブールでは既にアメリカとトルコの大使館が再開され、22
日の暫定統治機構の発足を前に、その他各国がどんどん入っているのに対し、
マザリシャリフにはまだ、どこも入ってきていない。しかも、ここを根拠と
するドスタム将軍は、カブールの暫定統治機構と距離を置き、多国籍軍の駐
留にも反対していると伝えられている。こういう状況で、日本の政治家が入
るならば、物見遊山にカブールに行くのではなく、今後のことも考えてこの
時期にドスタム将軍ときちんと政治的なパイプを作っておくべきだというN
GOの主張は説得力があった。しかも、マザリシャリフから車で五時間のサ
リプルという町の郊外にある難民キャンプで日本のNGOが活動をするため、
まずその場所を実際に見て、ドスタム将軍にNGOの安全確保と活動支援を
お願いするのは日本の政治家の仕事として、とても大事なことでもある。
NGOを通して、ドスタム将軍から会見するとの返事はもらっていたが、時
間、場所は全く未定だ。この地域では、待ち伏せや暗殺を防ぐために、場所
と時間は直前に指定されるのが普通だそうだ。国連機が着いた空港にドスタ
ム派の「外務大臣」とも言うべきサイド・ヌルラー氏が迎えに来てくれてい
た。ドスタム派の「外務省ビル」で、ヌルラー氏と「副大臣」のヤサ博士と
会談していると、今から将軍が会うという連絡が入る。
マザリシャリフ郊外のクーデバルクと呼ばれる場所にあるドスタム将軍の司
令部分室で、将軍とお目にかかる。ドスタム将軍は内戦下に、多くの若い兵
士を戦いで失ったこと、大勢の子供達が病気で死んでいくのをただ見ている
しかなかったこと等のこれまでの経験を熱っぽく語った。
ボン合意による暫定統治機構は、これまでアフガンの各派が払ってきた犠牲
や貢献を正確に反映していないが、この六ヶ月はそれを我慢して、これを支
えていく。六ヶ月後に作られる移行政権のもとでは、より公平なポスト配分
がされることを望んでいると我々に訴えた。さらに、アルカイダやタリバン
が市民のなかに隠れているかもしれないから、まだ、アフガニスタンの戦争
は終わっていない。だから、多国籍軍の駐留は今後、必要だろうし、多国籍
軍にアメリカ軍が入っていても良いではないか。各派が合意できれば、ドス
タム派は武装解除にも応じると、非常に前向きな発言があった。そして、日
本のNGOの活動に対する支援と安全確保は全力で行うから心配は要らない、
だから日本はアフガニスタンの復興のために是非、力を貸して欲しい、特に
医療面での支援が早急に必要だとの申し入れがあり、我々もしっかりと政府
に伝えると約束した。
この日の晩は、マザリシャリフから西に約160Kmのところにあるシベル
ガンという町にある、ドスタム将軍のゲストハウスに泊めていただくことに
なった。我々が空港に着いてからずっと、自動小銃と対戦車ロケット砲のよ
うなものを持ったドスタム派の兵士達が同行して警護をしてくれているが、
それでも日が暮れてからの移動は何が起こるかわからないと、あわてて四時
頃にマザリシャリフを発って、シベルガンに向かう。ドスタム将軍のゲスト
ハウスは、各部屋が大きく、ピンクのフリルのたくさん着いたベッドカバー
がかわいいとしか言いようがないものだったが、夜はしんしんと冷えた。
下地代議士は、帽子に手袋、股引をはいて完全防備のつもりだろうが、どう
みてもこのあたりの山賊にしか見えない。
12月20日(木)
朝、シベルガンを出て、悪路を三時間走ってサリプルへ。
サリプルの難民キャンプは、最も早い難民は三年前から住んでいるそうだ
が、今回の戦争で、その数が増え、約四千家族、二万人を超える難民キャン
プにふくれあがった。難民キャンプの支援は、上手にやらないと、支援活動
自体が難民を作り出してしまうことになりかねない。ジャパンプラットフォー
ムの一環で、ピースウィンズジャパンとセーブザチルドレンジャパンが、テ
ントと食糧の支援等をこの難民キャンプで行う。
この他に、難民を助ける会が地雷除去と地雷回避教育を、JENが非食糧
の緊急支援物資の配布を、BHNテレコム支援協議会がNGOの活動に必要
な通信手段の確保を、それぞれアフガニスタンおよび周辺国で実施する。
三時の国連機に乗るために、サリプルから舗装されていない道も含め四駆
でぶっ飛ばすが、途中一台が黒煙を吐いたかと思うと止まってしまう。やは
り、新しい四駆が必要だ。結局、四時間かけてマザリシャリフに到着。とこ
ろが、とんでもないことが起こった。タリバンが支配していたマザリシャリ
フの空港は、米軍の爆撃で滑走路に穴が開いている。迎えに来た国連機のパ
イロットが腕に自信がなかったのか、それを見て、着陸しないで帰ってしまっ
た。取り残された我々は、「外務省」のゲストハウスにお世話になる。
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■編集:河野太郎
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Subject: ごまめの歯ぎしり 12月25日号−2
ごまめの歯ぎしり メールマガジン版
衆議院議員 河野太郎の国会報告
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アフガニスタン出張記 下
12月21日(金)
同室の塩崎さんに、誰も知らない秘密があった。なんと寝言を言いま
くるのだ。最初、大声で「一体、説明責任はどうするんだ!」と突然、
怒鳴るので、ぶったまげたが、ご本人はいたってすやすやとお寝みになっ
ていらっしゃる。夜中にさらに二回、一度は三行ぐらいにわたる長ーい
寝言。
国連の全ての機関が集まっているUNハウスに出かけては、国連機を
飛ばして、着陸させろと交渉する。なにしろ、我々は国連機をチャーター
して、一人往復26万円もお金を払っているのだから、国連は飛ばす義
務があるのだが、翌22日が暫定政権発足にあたり、関係者がカブール
に終結するため、飛行機が足りない。しかもこの後はクリスマスだから、
国連機が足りない状況は、悪くなっても良くはならないだろう。
滑走路の穴の件で米軍と掛け合うと、昨夜、国際赤十字の飛行機と米
軍の輸送機がちゃんとその滑走路に着陸しているのだから、問題はない。
パイロットが新米だったのだろうと、米軍は問題ないの一点張り。
そこで我々としては、一、国連機を待つ、二、カブールまで陸路を走
り、そこで国連機の空席待ちをする、三、カブールまで陸路を走り、さ
らにパキスタンまで陸路で出る、四、車でウズベキスタンの国境を越え
てテルミズまででて、そこから空路日本に帰る、五、北部同盟のヘリコ
プターをチャーターし、カブールまで出て、国連機を待つ、というオプ
ションをあげて検討する。カブールまでの陸路は危険だし、北部同盟の
ヘリコプターも、同じぐらい危険だろう。ウズベキスタンのテルミズま
では陸路で一時間、しかもその晩にタシケントまで出る飛行機があり、
タシケントからはソウルまで直行便がある。これが一番良さそうだが、
問題はウズベキスタンの国境でビザが出るかどうか。衛星電話で外務省
に連絡し、我々の計画を話してウズベキスタンの国境でビザが出る可能
性があるだろうか、と尋ねると、即座に、危ないからマザリシャリフを
動かないでください、ガチャン。結局、外国で窮地に陥っても日本の外
務省は助けてくれない、ということを再確認しただけ。
国境までは、ドスタム派の兵士の護衛もあるので、一か八かテルミズ
まで出ようという意見もあったが、NGOのリーダーが、国連機を待ち
ましょうという決断をし、一番詳しい彼がそういうのであればと、それ
に賭ける。飛行機は二時に来るはずだが、一時半になってもまだイスラ
マバードを出ていない、いや、まだどの飛行機にするか決まっていない
等と怪情報が飛びかい、空港でひたすら祈っていると、東の空に飛行機
が。昨日のパイロットと違って腕が良かったのか着陸し、それに乗って
無事にイスラマバードへ脱出。
振り返ってみて驚くのが、タシケントからソウルまで直行便が飛んで
いること。この地域から日本に帰るには、あちこち乗り継ぎしながらで
なければ帰れないのだが、韓国は着々と直行便を中央アジアに飛ばして
いる。アジアのハブ空港争いは、単に飛行場の施設だけの問題ではない。
イスラマバードのマリオットホテルで記者会見を開き、その後、部屋
で久しぶりの熱いシャワーを浴びる。生き返った。
12月22日(金)
NGOのイスラマバードオフィスを訪問する。みんなイスラマバード
の高級住宅街の一軒家を事務所にしている。ジャパンプラットフォーム
は、旧ビルマ大使公邸、ピースウィンズジャパンは旧インドネシア大使
公邸を丸ごと借り上げて、事務所または事務所兼住居にしている。家賃
は月に十万円ぐらいだそうだ。どちらの事務所にもきちんとガードがつ
いていて、安全確保はしっかりやっている。
イスラマバードでは、金曜日が半日勤務、土曜日が出勤、日曜日が全
休というのが基本的なスケジュールだそうだが、国連関係の機関は金曜
日出勤で土、日を休んだり、なかなか仕事をするにも日程調整が大変そうだ。
12月23日(土)
夜の直行便がとれたので、北京経由で成田へ帰る。
ピースウィンズジャパンのスタッフのすみこも同じ便で帰るのでよろ
しくといわれ、てっきり日本人の女性かと思っていたら、筋骨隆々とし
たクルド人の男性で、大笑い。イラク北部でピースウィンズの現地スタッ
フとして働いていて、日本に出張したところでクルドの内戦が始まり、
祖国に帰れなくなってしまったそうだ。日本で難民認定を受け、日本政
府が出している難民のための旅行証明書をパスポート代わりにしている。
現物を初めて見せてもらった。日本からどの国に出るにも、いやトラン
ジットをするためにも、必ずビザを取らないといけないため、緊急支援
のためにさっと日本を旅立ってというわけにはいかないとこぼしていた。
24日午後遅く、着。
外務省の無力、無気力、無能力を実感する。資源のない日本が生き残っ
ていくためには、身体を張った情報収集が必要だ。イスラマバードの大
使館のスタッフがアフガニスタンに行かない言い訳が、なんと飛行機が
とれないから。UNの飛行機を自腹でチャーターしてマザリシャリフに
入る我々の目の前でそれを言うのだから、あっけにとられる。
マザリシャリフにいるNGOのスタッフに、どういう情報をどのくらい
の頻度で外務省に出すのか、とたずねると、困ったような顔で、最初は
無償資金課に情報を入れてという話もあったのですが、そのあと何かう
やむやになって、結局、今は何も...。
それにくらべて、アメリカの外交は凄い。こんなことがあった。アフガ
ニスタンの国連機関の調整役であるUNOCHAの北部地域のトップと
話をすると、アフガニスタンの難民を帰還させるためには、2002年
の1月に小麦のタネをまけるかどうかが勝負だ、と言う。もしこの種ま
きができれば、収穫と同時に難民の帰還を始められる。しかし、この時
期を逃すと、2003年の種まき、そしてその収穫まで帰還はできない。
だから、なんとかこの一月の間に小麦の種まきの準備をしたい、と訴え
てくる。日本は、米なら何とかなるが、小麦となるとどうかな、と答え
ると、いや、タネは既にアメリカの穀物商社が用意を始めている。アフ
ガニスタンの気候と土地にあうタネをちゃんと選んでもらっている。だ
から、日本には、それを購入する資金を援助して欲しい。おいおい、
ちょっと待ってくれ。それじゃ、日本の金がアメリカの商社のポケット
に入るだけじゃないか。アメリカは、アフガニスタンを爆撃しながら、
すでに戦争の後に、自国の企業を儲けさせる算段までしているのだ。
我々が訪れたシベルガン周辺は、天然ガスが産出する。もっと北のトル
クメニスタンでも同様だ。トルクメニスタンの天然ガスを海に出すには、
西に行くルートの他に、アフガニスタンを縦断し、パキスタンで船に積
み替えるパイプラインの仮想ルートがある。アメリカはすでに、この次
を考えているだろう。同じ時に、日本の外交官は、パキスタンの港の四
駆、二十一台の関税免除もできない。
国益のことをシビアに考える国家の外交と人間を考える市民、NGOの
外交の両方が、これからの日本には必要だ。しかし、今の外務省は、国
家の外交を遂行する能力はなく、市民、NGOの外交の邪魔をする存在
でしかない。
二十五日に外務大臣、官房長官、総理に三人で報告にあがる。
我々が報告する直前に、外務省の局長や官房長が大臣室と官邸を走り回っ
て、なぜ、四駆が二十一台、港から動けないかの言い訳をして歩いてい
た。この人達には、もっと大事な仕事があるだろうと思うが。局長など
は、この問題を今朝初めて聞いた、と曰い、我々もぶち切れそうだった。
しかも、外務省の言い訳は、NGOが書類の提出を忘れていたからだ、
という。うそつきめ。
総理にもはっきりと、このままでは一月のアフガン復興会議は成功しな
いと申し上げる。
マスコミがなんと言おうと、評論家がどう言おうと、総理がどっちもどっ
ちだと言おうと、国民は、外務大臣を支持するべきだ。外務省は腐っている。
外務省の若手よ、戦え。腐っているのは罪だが、腐っているのを見過ごす
のも罪だ。
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