投稿者 佐藤雅彦 日時 2001 年 11 月 02 日 01:34:02:
回答先: 『突発出現ウイルス』第12章 投稿者 MIROKU 日時 2001 年 11 月 01 日 23:41:05:
MIROKUさん、『突発出現ウイルス』(海鳴社刊)を訳した佐藤です。
この本は、値段がすごく高いですし――原書自体むやみに
高価なのですが――30章ちかくもある大部な本です。
まずもって、同書に挑んでいただき感謝します。
MIROKUさんは「この本を6000円も身銭を切って購入してしま
ったことを正直言って後悔している。確かに“反面教師”の良
きお手本にはいいだろうが」と苦言を呈していらっしゃるが、
この本は、或る意味、90年代以降に本格化し始めた“怪しげ
な感染爆発”を偽装するための謀略心得書のような位置づけ
の文献なので、書籍内の“御用学者”どもの語り(騙り)を文
言どおりに受け止めるべきではないと思いますし、対市民
生物戦争の誤魔化しかたをこれほど丁寧に記述した文献は
類例がないので、そうした読み方をしていただければ、と思います。
すでに幾度か「空耳の丘」で書いたと思いますし、この
本の訳者あとがきでも指摘しましたが、厚生省が90年代に
入って「新興ウイルス」といい出し、日本の一部の感染症プロ
フェッショナルが「エマージングウイルス」と呼ん始めた
“新奇な病原体”の概念は、そもそもこの本の編者である
スティーヴン・モースが考案し、微生物の遺伝工学的改造の
糸口やDNA組換え技術の基礎を見つけだした――その発見
が讃えられてノーベル医学生理学賞を受けていますが――ロック
フェラー大学学長のジョシュア・レーダーバーグが一介の
アカデミシャンにすぎないモースを後押しして、ホワイトハウスや
陸軍生物戦争研究者スペシャリスト、感染症蔓延の破局的効果の
数学的研究では世界的権威の英国王立アカデミーの学者などを
糾合して、1989年のワシントン会議で“突発的出現”を果たしたもの
でした。
ちなみに、この本に詳しく書かれていますが、アングロアメリカ
勢力の“租界”ともいえるオーストラリア大陸で数十年前に
繁殖しすぎたウサギを“間引く”ために、致死性ウイルスを
散布するという一種の“動物にむけた生物戦争”が実施され
ましたが、その効果の測定と評価にもとづき、人類大破局の
可能性を“予言”しているのが、この英国王立アカデミーの
御大なのです。……そして最近では、このウサギ向け生物
戦争を手がけたオーストラリアの研究機関がネズミ向け不妊
ウイルス開発中に、偶発的に(?)を予想外の致死性ウイルス
を発明してしまったというニュースは、皆さんご存じの通りです。
……歴史は着実に“前進”してるってわけです。
オックスフォード大学出版局から出された『Emerging Virus』
――『突発出現ウイルス』の原書――は、米軍の生物戦争
研究の異常増長と70年代以降の遺伝子組換え技術の拡散
に呼応するかのように爆発的に噴出しつづけている各種の
新奇な感染症を、強引に「自然現象」だと解釈するための
バイブルとして編まれたもの、と考えるのが、もっとも無理の
ない態度だと思います。
それにしても可笑しいのは、この本の中にたびたびロック
フェラー財団への賛辞が出てくることです。例えば大小ブッシュ
の出身校で、骸骨結社(スカル&ボウンズ)の本拠、そしてCIAの
草刈り場としても有名なイェール大学には、ロックフェラー財団
が設置した国際アルボウイルス研究施設があり、この施設
の研究者は世界中を飛び回って節足動物媒介ウイルスのサ
ンプルを持ち帰ってコレクションし続けてきた、という“実績”が
あります。数年前には南米産の致死性ウイルスが漏れだして
地元で大騒ぎになりましたが……。なぜこういう怪しげな大学
で――たしかに「名門大学」ではあるけどね――なぜ怪しげな
致死性熱病ウイルスの研究を続けているのか、興味ぶかい
ところですね。
この本には、「数年後」にアフリカで起こると想定したうえで
の「空気感染するエボラウイルス」――つまり新型エボラウイ
ルス――の感染爆発から米国本土をどう守るか、というシナリオ
にもとづく米軍生物戦争スペシャリストの机上演習も出てきます
が、彼らが想定していたの「新型エボラ出血熱」の汎流行は、90年代
半ばに起こるというシナリオでした。ハリウッドやニューヨークの
メディアが世論誘導の道具となってきたのは20世紀の歴史的事実
ですが、まさにこの予言的シナリオを追補するように、90年代に
はいると『ニューヨーカー』誌に「ホットゾーン」が掲載され、致死性
感染症の感染爆発パニックへの文化的関心が高まり、ハリウッドで
「アウトブレイク」が製作され、あるいはもっと漫画的な「13モンキー
ズ」その他の突発出現ウイルスを題材とした黙示録的活劇が氾濫
しました。……そして興味ぶかい符合ですが、90年代はじめにアメリカ
国防省がBC兵器をふくむ「非致死性兵器」の開発方針を決め、
ほどなく中西部のインディアン居留地で未知の致死性気道感染症
ウイルス(当時は「四つ辻ウイルス」とか「死の谷ウイルス」などと
呼ばれていた)の感染爆発がおき、ユーゴスラヴィアでは朝鮮出血熱
ウイルスの仲間(ハンターンウイルス)による感染爆発、インドや
ついでペルーでは全く新型のコレラ菌による大規模な感染爆発、
英国では“人食い細菌”の突発出現や“狂牛病”の感染爆発など、
まったく奇妙な感染爆発が世界各地でほぼ同時に吹き出したわけ
でした。こうしたタイムラインのなかで、日本でも90年代に入るや
防衛医大の近所の保育園で原因不明の「出血性大腸菌O-157」
による感染爆発が起き、95年にはオウム騒動のなかで「教団による
エボラウイルス、ボツリヌス菌、炭疽菌兵器開発計画」が喧伝され、
翌年には大阪で――戦後「梅田奇病」のいう名の流行性出血熱が
感染爆発した土地柄ですが――原因不明の大腸菌O-157大規模
感染爆発が起きています。
……こうした“終末的”な騒動は、交通事情や都市化のような
“文明の発展”とか、微生物の自然進化によって説明できちゃうん
でしょうか。(笑) ……そうじゃないでしょうね。それは無理が
ありますもん。
『突発出現ウイルス』には、重要な病原ウイルスについて、どの
遺伝子部分をどういじれば病毒性が強化できるか、いろいろと
示唆に富むことまで書かれていますし、まとめの章では、もっとも
理想的な生物戦争用ウイルスの特徴まで、ごていねいにも示唆
しています。
このワシントン研究集会が開かれたのは89年、そして原書が
専門家むけに出版されたのは90年代始め。その当時の最先端の
知見が凝集されていたわけで、もちろん致死性ウイルスの開発
研究はこの段階からすでに格段に進展しているはずですが、それ
は表沙汰にはならないでしょう。
生物戦争――とりわけ“自然的感染爆発”に見せかけた対市民
生物戦争――について考えるなら、この本は絶対に読んでおくべき
です。
それにしても、少なくとも日本では、「突発出現ウイルス」について
語られる場合、学者連中はこの89年の会議とその成果について
無視を決め込み、90年代になってWHOが採用した「emerging virus」
の公式教義をすべての出発点にしてきたわけで、連中も外国の文献
に接していれば当然オックスフォード大学出版局の原書のことは周知
のはずですから、こうした態度は不可思議ですね。 ……それほど
「突発出現ウイルス」の概念は、まがまがしくて欺瞞的だということかも
知れませんね。 守るべき権益をたくさん抱えている学者どもは、ヤバ
いものには手を出したがらないのでしょうね。たとえそれが歴史的に
非常に重要なデータであっても……。
●付記:ロバート・ハリス&ジェレミー・パックスマン著『高等殺戮法』
"A Higher From of Killing"(Hill and Wang, New York 1982)だけでなく、
70年代以降の生物兵器技術の劇的な進展に危機感をもって書かれた
英文書籍はたくさんありますが、日本では出版社が関心を持ってきま
せんでした。たとえば上記の『高等殺戮法』――「一種の“高等な”殺し
方」(原書の“高等な”というのは無論、皮肉です)――はもはや「古い」
という理由だけで、どこの版元も相手にしないでしょう。
私はこうした本を買い集めてきましたが――もちろんまずもって翻訳
出版を実現させるため――出版社というところは“高等な”(笑)センス
の人が多いんで、こういう企画は見向きもされないんですよ……。
しかし現実に起きているのは、もっとも“高等な”(笑)昔なつかし
炭疽菌を「封筒に入れて送りつける」っていう“高等殺戮法”(笑)なの
ですけどね。 そういうわけで、私は日本の出版界の連中の“高等な”
感覚を軽蔑せざるを得ないのですが、『突発出現ウイルス』はそうした
絶望的な状況のなかで出版された秀逸な書籍だと思っています。(自分
が訳したから、という理由ではなく、こうした徹底的な内容の書籍は日本
では皆無に近いから……。 専門家むけの符丁ばかりの実用書や
虚仮威しばかりで内容空疎な一般向け読み物ばかりが氾濫しています
からね。)
■■■■@■■■.■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
【以下は受信内容の再録です】
http://asyura.com/sora/bd15/msg/88.html
Ψ空耳の丘Ψ15 投稿NO:88 2001/11/01 23:41:05
投稿者: MIROKU
e-mail:
題 名: 『突発出現ウイルス』第12章
ここ最近全米各地で発生している炭疽菌バラまき事件を「突発的出現」などと形容する者はいない。明らかにこれは「作為的策略」によって起こされたものにちがいなく、過去において“前歴”のある米軍の仕業であるかもしれないということは当然念頭に置いておかなくてはならないが、「テロ」という幻惑的な言葉に惑わされてしまっている限り真相究明など到底できまい。アメリカ市民は、まず自国の政府と軍を疑うべきである。
この私の関心は、おそらく近い将来出現すると予想される、イスラエルの「遺伝子兵器」である。これはアラブ民族だけを特定的に狙い撃ち、殲滅させる恐ろしい兵器である。
それはさておき、スティーブン・モース編『突発出現ウイルス』の第12章「エイズ誕生の瞬間」をまずは読んだ。しかるに、冒頭のページに「我らロスアラモス国立研究所」だの、「国立衛生研究所(NIH)からの財政支援を受けて」だのといった言辞(また章を読み終わったところの謝辞「国立アレルギーおよび感染症研究所の資金によって運営されている」もだが)から、にわかに結論が予想しえた。
やはり「エイズウイルスの遺伝子組み換え誕生説」は排除された。まるでそんな荒唐無稽な説など論じるにも及ばないといった無視ぶりだ。そもそもこの本の序文を「国立衛生研究所」の人間が寄せ、この本の編者が「ロックフェラー大学」のウイルス学助教授というのも、この本のいかがわしさを臭わせる。あたかも犯人がその犯罪の捜査に乗り出し、無罪判決を下しているようなものだからである。
そして彼らの結論というのが、「HIVの起源はサルのウイルス」という今日広く信じ込まれ刷り込まれている仮説の補強でしかない。そして、どうやらHIVは「ビッグバン」によってたった一つの共通祖先から同時的に「突発的出現」を果たしたらしい、というのである。
この「ビッグバン理論」さえ適用すれば、イスラエルがバラまこうとしている遺伝子兵器ですら「突発的出現」のせいにできるだろう。何だって適用できる。コンピュータの系統樹解析とやらもしょせんは作業仮説にすぎないが、「エイズ遺伝子組み換え起源説」と較べれば、はるかに説得力を欠く。結局のところ、なぜ種の壁を飛び越えてサルからヒトに伝播したのかは説明できておらず、なぜアフリカではなしにアメリカで最初にエイズが出現したのかも解明されてはいない。すべては「突発的出現」という解釈で説明されるわけである。
私は、この本を6000円も身銭を切って購入してしまったことを正直言って後悔している。確かに“反面教師”の良きお手本にはいいだろうが。そんなのよりも私が読みたいのは、たとえば、生物・化学兵器(とりわけ米軍の)について書かれたロバート・ハリス&ジェレミー・パックスマン著『高等殺戮法』 "A Higher From of Killing"(Hill and Wang, New York 1982)といったような本である。私の知るかぎり、残念ながら翻訳本ではいまだ出ておらず、どなたかこれを翻訳して出版していただけないものだろうか?
■■■■@■■■.■■■■■■■■■■■■■■■■■■■