投稿者 経営コンサルタント 日時 2001 年 12 月 06 日 22:12:40:
猪瀬直樹の論文「日本国の研究」のうそについて
以下は
日本の近代 猪瀬直樹著作集1
「構造改革とは何か」新編 日本国の研究
小学館からの抜粋である。
この論文のうそを検証してみよう。
73ページ
から、「道路公団はレールのない国鉄」
という章が始まる。
そして、74ページの第2行目に、
〇「このままであれば、第二の国鉄、レールのない国鉄、とな
ることが必至(=必ずそうなるであろう)と予想されるからで
ある。」
とあり、
75ページには、
〇「高速道路の料金収入では(借金の)返済が不可能だから、
差額を政府が埋め合わせるしかないのだ。」
とある。
これは事実と異なる。
そして、この「ありもしない危機」を見た論文を
その後、桜井よし子や多くのマスコミ、小泉首相などは、この
本をテキストとし始める。
そして、マスコミはうその拡大再生産をし始めていく。国民は
それを信じ始める。
真実は、猪瀬直樹氏は、特殊法人の財務諸表を読み誤ってこの
結論を導きだしたのだ。
特殊法人とは、「特殊な」法人である。だから、財務諸表も異
なる。
実際には、健全である。
特殊法人とは、
国がやる必要のある事業(事業=仕事。特に,社会的意義のあ
る仕事)
@ 国にはお金がない
A そのため借入金で行う。
B 政府が低金利で長期にわたる資金をかりやすいように、補
助金をつける。
という制度。
そして、高速道路をとおる、通行料による収入で借金を返す。
という制度。
だから、最初に借金が多い。(ただし、大体、金利は4%ぐら
いであるので、
政府の補助金によって実質2%ぐらいになっている。)
〇しかし、それは、収入が2兆円ある日本道路公団、そして、
支出は1兆円である。
〇あとの差額の1兆円は、ほとんどすべてが、借金返済にまわ
さなければいけない。だから、ここの部分を利益として、みら
れてはいけないので、
利益という表示はしていない。
〇民間の企業と違うのは、最初に多額に借金をして、創るとい
う点である。だから、収入―支出は利益としてみてはいけない
。
〇すべて借金を返す費用として、カウントされる。具体的には
、償還準備金繰り入れ(償還=期限がきたお金の借りを返すこ
と。)(繰入=組み入れるという意味)
という勘定にいれてあるのだ。
〇つまり償還準備金繰入とは、「期限が来るお金を返すための
準備金にしました」
という意味である。
〇この仕組みを見誤り、大騒ぎし始めたのが猪瀬直樹である。
つまり償還準備金(償還とは期限がきたお金の借りを返すこと
。)
のことを知らないため、日本道路公団は、全く利益がないとし
て、
解釈しはじめて、「日本国の研究」という本として出版したの
だ。
つまり猪瀬直樹のこのままでは大変なことになる。というのは
事実と異なる論理なのだ。
旧国鉄は、100円を稼ぐのに、133円もかかっていた。つ
まり赤字のたれ流しである。
それに比べて日本道路公団は100円を稼ぐのに、50円。あ
との50円はすべて、借金を返すのに回している。
利益という考えはない。もうけるのが目的ではないからだ。だ
から順調である。
そして、75ページの、
第5行目から、
「利子補給(=借金の利子を補うこと)のために、
国費(=税金から出すお金)による補給金(=特定事業の助成
のため,国が出す補助金)
と補助金(国の目的達成のために,国が日本道路公団に交付す
る金銭。)
がここ数年で極端に増加している様子がわかる。平成7年度(
95年度)では政府補給金1240億円と国庫補助金468億
円の合計が1,708億円だったが、平成8年度では2,067億円にふ
くらんだ。
平成4年度(92年度)の2倍である。
道路公団は財投からの借金にあえぎ、このままいくと利払いの
ため国民の借金をどんどん食いつぶすしかない状態なのである
。」とある。
これもあたかにも、借金がふくらんでいるように書いてあるの
だが、
事実と異なる。
この時期は、
宮沢内閣が緊急に経済を立て直すとして、
平成4年の夏に、緊急経済対策を発表。
今後10年間で、公共事業を400兆円やるとした年である。
そのため、高速道路事業は、当初の予定よりもまえだおしで工
事が発注されはじめた。
そのため、それまでほとんど国費を入れていなかった高速道路
に、
国が費用を出し始めたのである。
ちなみに、平成4年までは、国が高速道路事業に出すお金はた
ったの3%であった。
つまり国はたったの3%しかお金をださずに、日本道路公団に
、高速道路事業をさせていたのだ。
〇日本道路公団について、
猪瀬直樹は、日本道路公団の分割民営化案
という論文を279ページからのせている。
それを見てみよう。
ここで、さすがに猪瀬直樹は、自分の当初の日本道路公団の財
務諸表の見誤りに気づいている。
284ページ第5行目
「日本道路公団は借金漬けで、第二の国鉄と言われている。(
中略)
とある。
ここで、重要なのは、猪瀬直樹本人が一番最初に、日本道路公
団の財務諸表を見誤ったので、それを本当だと受け入れた桜井
よし子や、マスコミは、第二の国鉄と言い出したということで
ある。だから、桜井よし子も加藤秀樹も、読売新聞や産経新聞
、朝日新聞、など、もうそを拡大させている。
「第二の国鉄といわれている。。」というのは、猪瀬直樹本人
が最初に言い出したうそ
であり、拡大再生産していったものである。
にもかかわらず、本人はあたかも
「真実」であるから、みんな言っているかのようにここで述べ
ているのだ。
284ページ
第15行目
「まず前提として、次のことを知っていただきたい。
日本道路公団は赤字だ、と信じられている。(中略)
よく考えてほしい。日本道路公団はたしかに赤字たれながしの
無責任体制だが、税金を引き出し、財投資金での事業継続をつ
づけるため、巧妙に赤字をよそおっているのではないか?」
(中略)
285ページ
後ろから、5行目
「行革断行評議会の分割民営化案は、こうした構造、彼らの(
日本道路公団)偽装に対する疑いから発したものである。」
286ページ
4行目
「だが、9500億円の「引当金繰入れ」
注(引当金=将来借金を返すために、いくらかかるかが、わか
る場合に,その年度に充当が認められる金。)(繰入れ=充当
すること)
とはなんだろうか?
「引当金等繰入」
というおかしな項目の実質を占めている
「償還準備金繰入」(償還=将来借金を返すこと、それの準備
のために積み立てているという意味)
9千億円は、元金の返済であり、これが経費項目(経費=必要
な費用)とされているのは、常識からかけはなれている。
つまり元金返済が年間9千億円もできるのである。
この9千億円から、「政府補給金」2千億円を引いたものが実
質的な利益とみたら、
7千億円のキャッシュフロー(=自己資金)があると判断でき
るのだ。」
とある。一般に借金というものは、長期の場合は、5年から、
20年という長期にわたるものが普通である。
だから、積み立てているのだ。
これは普通の行為である。
つまり、猪瀬直樹は、民間の財務諸表や株式について、成り立
ちまでを
知らないと私は思う。
つまり、民間の企業の成り立ちと特殊法人の成り立ちを混同し
ているのだ。
経費という意味は、通常は利益を得るために必要な支出である
と
いう意味である。
民間企業では、収入―経費=利益として、その利益に税金をか
けられる。
しかし、特殊法人は、本来国が100%お金を出してやるべき
仕事を
10%ぐらいのお金を出して、最初に借金を国のかわりにして
もらう。その際、低金利で、長期の資金にするため、国が補助
金を出す。
そして、高速道路を創りその通行料金で借金を返すという仕組
みである。
税金をかけたらおかしな話になってしまう。
全体の仕組みがおかしくなる。
つまり、この仕組みがなぜ聖域といわれてきたか?というと
少しでもいじくると全体が整合性がなくなりだめになるからで
はないか?
私は
証券市場の成り立ちや、
株価の構造、にも詳しい。もちろん財務諸表も読める。
そして、特殊法人の財務諸表も読める。
私は最初、特殊法人(日本道路公団や住宅金融公庫の仕組み、
住宅公団
の仕組み、郵便貯金の仕組みを知ったときに、
いったいこの天才的な仕組みは誰が考えたのか?
と驚いた。
つまり、証券市場の理解や、株式会社という制度、また、政府
の役割など、
これが中途半端な理解では考えもつかない、天才的な仕組みで
あるからである。
つまり、日本には、経済を急成長させる仕組み
が半ば国と民間とで、作られていたのだ。
これはおそらく創った人物は、経営者としても大成功をおさめ
、金融の実情も
詳しく、何が重要なのかを心底理解している天才だろうと思っ
た。
そんな人物が官僚にいたのだろうか?
と私は思った。
実はこの天才的な仕組みを考え出したのは、天才政治家田中角
栄その人であった。
もっとつっこんだ議論をしよう。なぜ、高度経済成長につなが
ったのか?
それは、大規模に仕事を与える仕組みであるからである。
つまり高速道路事業において大事なのは物ではなく、新たに創
ることなのだ。
政府の役割は仕事を増やすことである。と見切った天才政治家
の遺物。
特殊法人。
普通の会社は収益を生み出すために、営業マンをやとう給料や
、交通費などを
支出する。それをすべて無駄づかいだとして、しぼってしまっ
たら、その企業の収入は
がたおちになる。
それでは、政府の役割は何か?
政府の収入は、税収である。
そのために何をすべきか?
多くの人に最小のコストで仕事を大規模に与えることだ。
高速道路事業には、政府が10%ぐらいのお金(毎年3千億円
)を出して、
その10倍規模の3兆円の事業をやっている。これは建設業に
は仕事になる。
そして、建設業の人は、仕事によって、収益を上げて会社はそ
の利益の50%を
税金として、国におさめてくれる。
だから、国は潤うのだ。
そして、高速道路ができればそこの地域は早く中央とつながる
ので、流通が起きて、経済が良くなる。
しかし、今、第二東名とか、地方の高速道路など
凍結してしまえば、
建設業は大量倒産してしまうだろう。
ただでさえ、仕事のない時代に、国が仕事を与えないのだ。
倒産すれば、国はその人の失業保険として、2年間も
給与の6割を支出しなければならない。
そして、銀行は建設業に大量にお金を貸している。
回収は不可能となる。
その銀行はわれわれの預金から、お金をかしているので、われ
われの預金もさらに
ふっとぶであろう。
その仕組みを保護するために、また公的資金を導入しなければ
いけなくなるだろう。
前回は60兆円かかった。
じゃあ、それがいやでやらなければどうなるか?
銀行という仕組みのない時代、
つまりたんす預金が増える。
そして、失業者があふれかえる
ということは、強盗が増えるだろう。
構造改革とは、どうも、
経済がものであると勘違いしているように見える。
ものではない。仕事を与えることである。