「盗聴法」廃止なくして「取材の自由」はあるのか? The Incidents (転載)

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投稿者 ごろた石 日時 2001 年 12 月 01 日 06:08:55:

The Incidents
http://www.incidents.gr.jp/index-right.htm#terasawa010105

「マスコミ社畜」たちに告ぐ!
「盗聴法」廃止なくして「取材の自由」はあるのか?

「盗聴法」の施行から4カ月。本サイト編集長・寺澤有が起こした同法の施行差し止めなどを求める訴訟の第1回口頭弁論が東京地裁で開かれた。「客観報道」をお題目に、「盗聴法」で狭められてゆく自らの取材環境にまったく無自覚な大手マスコミの社員記者たち。本当の「取材の自由」とは何なのか。本サイト編集長が自ら法廷に立ち、悪法にも反抗できない「マスコミ社畜」たちに鋭く問いかける。

寺澤有(『The Incidents』編集長) 2001年1月5日


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 「内部告発」こそが権力の不正を暴く武器

 2000年12月6日午前10時30分過ぎ、東京地方裁判所第606号法廷で、私が「盗聴法」の施行差し止めなどを求めている訴訟の第1回口頭弁論があった。
 訴状や答弁書の陳述、書証の提出などが行われた後、私は以下のような文章で始まる「意見陳述書」を読み上げた。

 最初に、本年8月15日の「盗聴法」施行以来、私の取材活動が危機的な状況にさらされていることをご報告します。
 私は現在まで11年間、警察や検察、裁判所、会計検査院など、その実態が外部からわかりにくく、聖域になりがちな国家権力の不正、腐敗を追及してまいりました。私が書いた記事により、懲戒処分を受けたり、刑事責任を追及されたりした公務員は相当数おります。今年だけ見ても、『週刊宝石』(光文社)連載の「千葉県警船橋東署留置場内レイプ事件」、『週刊プレイボーイ』(集英社)連載の「警視庁個人情報漏洩事件」で、多数の警察官が免職を含む懲戒処分を受け、刑事訴追されています。
 このような取材、執筆活動を行っていく場合、組織内部からの情報提供は不可欠です。俗に言う「内部告発」がなければ、組織的な不正を暴くことはできません。私は、「日本国憲法」第21条が保障する「取材の自由」に、「『内部告発』を受けることを妨げられない自由」が含まれると考えます。これは「内部告発」の公益性などを考慮すれば、当然、導き出される結論です。
 ところが、本年8月15日を境に、私のもとへ電話やファクシミリ、電子メールなどの通信手段による情報提供がまったく来なくなりました。それまで、定期的に情報提供してくれた公務員らも音沙汰なしです。この事実を証明するため、私は自分の携帯電話を裁判所に預け、検証していただくことをご検討願いたいと思います。
「盗聴法」施行直後、ある警察官が私にこう言いました。
「寺澤さんの電話が盗聴されている可能性は極めて高い。今までもその可能性はあったと思うが、盗聴が合法化されたことで、まず確実に行われている。なにしろ寺澤さんが盗聴されても、それに気づく可能性はほとんどない」
「盗聴法」は昨年の国会審議でも問題となりましたが、捜査機関の違法な盗聴を実質的にチェックする手段が担保されていません。これは捜査機関が自ら認めており、国会審議中、警察庁幹部らは「警察を信じてほしい」とくり返しました。しかし、現在、全国各地で発覚し続けている、警察の不正、腐敗、違法行為を見る限り、絶対に警察は信用できません。
 つまり、「盗聴法」は捜査機関の無謬性(むびゅうせい)に頼るしかないという致命的な欠陥を持っています。「権力が腐敗しない」ことなどあり得ず、違法な公権力の行使を事前も事後もチェックできない「盗聴法」は、「日本国憲法」第31条に規定される「適正手続きの保障」から重大な疑義が生じるばかりか、それが制定、施行されること自体、違法な公権力の行使と言えます。そのような法律が専ら権力者の保身に使われ、公益を損なってきたことは歴史の証明するところでもあります。
 いずれにしても、本年8月15日の「盗聴法」施行後、私の電話やファクシミリ、電子メールなどが盗聴される可能性は飛躍的に高まり、実際は盗聴されているかどうか不明ですが、公務員らが「寺澤さんの電話は盗聴されている」と考え、「内部告発」を見送るなどの行動に出ている現状からすれば、私の「取材の自由」が侵害されていることは間違いありません。

 法廷にも集会にも現れない新聞記者たち

 前々日(2000年12月4日)、東京地方裁判所内の記者クラブに、このような意見陳述を行う旨は電話とファクシミリで告知しておいた。にもかかわらず、法廷に新聞記者らの姿はなかった。
 私は強い疑問に駆られる。
「新聞記者らは『盗聴法』施行後、何の不都合も感じていないのか」と。
「内部告発」が報道の現場、とりわけ組織的な不正の追及で、大きな威力を発揮することは、「意見陳述書」にあるとおりだ。それは報道機関の「生命線」ではないのか。
 ところが、警察の裏ガネ問題などで私がよく情報交換する落合博実・朝日新聞編集委員は嘆く。
「最近、『内部告発』はめっきり減った。『公費天国キャンペーン』(1979年)の頃は山のように来ていたのに。つくづく新聞が信用されなくなったと思う」
「内部告発」が来なければ、「盗聴法」が施行されてもかまわない→「盗聴法」が施行されれば、ますます「内部告発」は来ない→……。
 新聞はひたすら悪循環を続けているように見える。
 2000年11月15日、国会議事堂近くの星陵会館で「盗聴法」に反対する集会が開かれた。いったん法律が成立すれば、反対運動も下火になるのが常である。しかし、「盗聴法」の反対運動は根強く続いており、この日も数百人が会場を埋め尽くした。
 国会議員、弁護士、学者などに交じり、マスコミ関係から宮崎学氏(作家)、斎藤貴男氏(ジャーナリスト)と私が壇上で発言した。その際、斎藤氏が私にささやいた。
「こういう集会で発言するマスコミ関係者はいつもフリーランスばかり。新聞社やテレビ局、出版社の『社員』は何も危機感を持っていないのか」
 私は、「社員」たちの「『客観報道』に徹する」という言いわけは聞き飽きた。彼ら彼女らは報道機関の使命を守ることより、組織内の自分の地位を守ることが重要なのである。「客観報道」などとカッコいいことが言えるのは、「取材の自由」が保障されてこそだ。

『総合ジャーナリズム研究』(東京社)2001年冬季号に加筆



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