投稿者 あっしら 日時 2001 年 11 月 27 日 19:35:56:
これまでは、ブッシュ政権の一部(ライス安全保障担当大統領補佐官やウルフォウィッツ米国防副長官など)がイラク攻撃を煽ってきたが、今回は、大統領であり最高司令官でもあるブッシュが肉声でイラク攻撃を示唆した。
ブッシュがこの発言に踏み切った背景には、ライスやウルフォウィッツの観測気球的発言に世界(国内・諸外国・UK)から非難や自制を求める声が上がらなかったことがあるだろう。
ブッシュ政権は、確たる“証拠”もなく、証拠があり起訴したとしたとしても国際法違反であるアフガニスタン攻撃を発動したが、それを非難する国家が極めて少数(イラン・シリア・サウジアラビア・イラク・インドネシア・マレーシア・カタールなどで、中国は腰が引けた状態になった)だったことで、自分たちの判断は絶対のものであり、その判断を基にした軍事行動はいつでもやり放題であるという思考回路に陥っている。
現在攻撃対象としてブッシュ政権や米英メディアからリストアップされている国家は、イラク・スーダン・ソマリア・イエメン・フィリピン・北朝鮮であるが、いつでも、イラン・シリア・リビアとその対象を拡大できる雰囲気に世界は染まっている。
ブッシュ政権は、とにかく俺達のケツを舐めろ!、そうじゃない国は軍事攻撃で潰してやる!と叫んでいるのだ。
ブッシュ大統領が昨日の会見で発言した「大量破壊兵器で世界を脅かす国はテロリスト」という内容は、そのままアメリカ合衆国に最もふさわしい定義である。アメリカは、核兵器・危うい通常兵器・通常兵器・それらの運搬手段・生物化学兵器などのすべてを最高レベルの品質と最高に近い量で保有している。アフガニスタン戦争でアメリカと同盟している英国・フランスそして“友好関係”にあるロシアや対米で腰が引けている中国も、品質や量は別として似たようなものである。
アメリカは、核兵器を実際に対人で使用した唯一の国家である。もちろん、日本の広島と長崎に。
アメリカはもっともらしい(私はまったくそうは思わないが)理由を付けて軍事攻撃を示唆しているが、本音はそれにあるのではない。ただ単に、“俺のケツを舐めない”からでしかない。
元々親米で核兵器保有国であるパキスタンに対しては、従来経済制裁という政策を採ってきたが、9.11テロ事件を契機としたパキスタンの軍事協力に合わせて経済制裁解除や経済援助などと180°政策を変更した。(小泉政権もだが)そう、とにかく、アメリカのケツを舐めていればOKなのである。
逆に言えば、“ホメイニ革命”後のイランを封じ込めるために、イラン革命に危機意識を持ち親ソ的であったイラクを焚き付け、イラン−イラク戦争に踏み切らせた。そして、軍事協力を推し進め、中東でイスラエルに次ぐ軍事力国家にまで育て上げたのである。現在のアフガニスタン戦争で北部同盟や反タリバン勢力を使っているように、イラク国民を対イラン戦争に使った。しかも、空爆支援なしで(笑)そのあげくが、イラクのクェート侵攻から始まったあの湾岸戦争である。そして、延々と10年にも及ぶ対イラク経済制裁を世界に強要している。その間に数度行った“UN大量兵器査察”では、イスラエルの情報部員を査察に潜り込ませるということまでやり、イラクはキレてしまった。
イラクのクェート侵攻にしても、イラン−イラク戦争の“戦費”問題や“石油”をめぐる利害関係が主たる要因だったが、イラクにしてみれば、クェートはイギリスから無理矢理奪い取られ国際的にも放棄宣言させられた自国の領土との思いがベースにある。クェート侵攻は、アメリカの暗黙の了解(当然、アメリカは偵察衛星でイラク軍の動員状況を熟知していた)が得られたと錯誤した愚かなフセイン政権の妄動であり、アメリカにはめられたといっても言いだろう。
アフガニスタン戦争に批判的で軍事協力を拒むサウジアラビアに対しては、日本では報じられていないが、アメリカのメディアではサウジアラビア王室打倒までが語られている。中東最高の親米国家と言われてきたサウジアラビアに対してそのような論調が生まれたのは、やはり、アメリカのケツを舐めなかったからである。
問いたい。ケツを舐めない国家を軍事攻撃することをためらいもなく公言するケツに舐めるに値する理念や政策がくっついていると納得できますか?と。グローバリズムにしろ、自由主義経済にしろ。
我が日本は、“つい”70年前頃、政府とメディアに煽られて満州帝国をつくり、さらに煽られ続けて、中国で戦線を拡大し、そして「大東亜戦争」へと突入していった。そのあげくが200万人を超える死者と都市部の廃墟化、そして、6年近い軍事占領を被った。
政府とメディアに煽られだまされたとは言え、少なからぬ国民が戦果に喜び提灯行列まで行い、多くの国民は、戦後になってレッテルを貼られたような“軍国主義帝国日本”といったような批判的な対応ではなかった。
ナチスドイツ時代のドイツ国民は、日本に較べると、より主体的により理念的にナチスドイツに協力した。誰も、戦後に“悪魔”のごとく指弾されることになるとは思わずに。
小泉政権は、今すぐ、ナチスドイツや帝国日本をはるかに凌駕するほど“邪悪な”ブッシュ政権との対テロ軍事同盟関係を解消し、ブッシュ政権に誠心誠意の忠告(非難はいけません。経済制裁や空爆だってされる可能性がある)を行うべきである。そして、そのような動きを世界に呼びかけるべきである。この難問をどうこなすかということこそ、外交能力が問われるものだ。
このまま行けば、日本は対イラク攻撃にも対フィリピン攻撃にも参戦することになりかねない。そして、その先には、北朝鮮に対しても、ひょっとしたら中国に対しても。
参照:『米国「アフガン攻撃」の最終目標はズバリ!中国』(http://asyura.com/sora/war3/msg/817.html)
戦争が拡大していっても、とりあえずは、日本経済が破綻しなければ(そう、戦争に熱を上げている場合ではない。こっちの方が早いかも知れない)、日本国民は、先行きの生活に不安を感じつつも、これまでと同じように娯楽にいそしみショッピングを楽しむことができるだろう。
しかし、戦争が常態化した世界がどんなものなのか、そして、一時的に勝利したとしても最終的にはどういう結末がやってくるのか、ここで一旦止まってじっくり考えなければならない。