“ヒトクローン胚”が描く未来社会

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投稿者 あっしら 日時 2001 年 11 月 27 日 15:54:32:

昨日、アメリカのバイオ企業がクローン技術を使って人間の胚細胞をつくるのに成功したという報道が駆けめぐった。

今のところ、ブッシュ大統領はそれに反対を表明している。


その記事を読んで妄想した近未来社会を一つ。
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ロスチ家に念願の子供が産まれて半年ほどたったある日、アドバーンスト・セル・テクノロジーという会社からダイレクトメールが届いた。

「お子さまの健やかな成長を望まれているご両親に!お子さまが万が一臓器を移植しなければならないような病気になっても安心な当社の生涯健康保障システムをご存じですか?・・・・・」と始まるそのメールには、子供とまったく同じ遺伝子的特質をもつ組織や臓器を常に“保存”し、子供に何か問題が起こったときには即座に対応するといったことが書かれている。

そして、その費用は、初回3百万ドル(およそ3億6千万円。但し、1回分対応態勢を整えるだけ、対応のための手術費用などは別。2回目以降の対応分には割安システムあり)とある。

ロスチ家にとって、3百万ドルはたいした金額ではない。手間も、子供を一度アドバーンスト・セル・テクノロジーの診療所に連れて行くだけで済むという。


アドバーンスト・セル・テクノロジーの研究所の正面玄関には、“保存実態を公表せよ!”、”ヒトクローン胚をすべて廃棄せよ!”などと書かれたプラカードを持つデモ隊が押し掛けている。辺りを見回すと、“ヒトクローン胚の利用を促進せよ!”、“私の命を奪うな!”というプラカードを掲げている一群の人もいる。

アドバーンスト・セル・テクノロジーは、政府が求めている業務実態の公開をめぐって経営幹部が議論を続けている。

「ダメです。臓器がどのようにして保存されているかを公表したら当社はおしまいです。私たちの命だってアブナイ」

「いや、この数年の実績で、当社の事業は理解されている。少しぼかして公表すれば問題ない。政府につぶされてしまうことになるほうが問題だ」

など、堂々巡りの議論が行われている。

会長が、「実を言うと、極秘のルートで国防総省から打診されていることがあるんだ。みんな知っているように、この10年続いている世界各地での戦争で少なからずの戦死者が出ている。それで、当社に協力してもらえないだろうかと。わかるだろ。戦闘訓練などは、あっちでやると言っているから、引き渡してくれるだけでいいと言っている。代金はわずかなもんだが、事業存続に尽力してくれるそうだ」

広大な敷地のアドバーンスト・セル・テクノロジーの真ん中ほどに寄宿舎風の建物がいくつも建っている。そのまわりで数人の若者たちが体操に励んでいる。そこに、アドバーンスト・セル・テクノロジーの研究者がやってきて、一人の男に声をかけた。その若い男は、研究者に連れられて「診療所」という銘板が貼られた建物に入った。

数時間後、保冷容器を持った男が玄関に横付けされた車に乗り込んだ。その車は、前後を警備車に挟まれて猛スピードで走り去った。

裏口では、細長い箱のようなものを運搬車に載せて「化学処理施設」と書かれた建物に向かう男を見ることができた。

結論を出せない幹部会議では、主任研究員が、「だからもう少し待てば良かったんです。あの時点で、子宮を利用しないで臓器や組織をつくるなんて無理だったんです。むろん、今でも無理ですけどね。クローン人間ができるということを実証できたことには感謝しますが、1つだけにしておけば...」と少しおびえた様子でしゃべっている。




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