韓国上空のUFO嵐(『UFOS & SPACE』76年10月号)

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投稿者 SP' 日時 2001 年 11 月 15 日 08:38:08:

ロナルド・ドラッカー

空飛ぶ円盤による北東アジアの“真珠湾”に備え、軍部も警戒を続けている!

 朝鮮半島はUFOの特別目標になっている。韓国におけるUFO出現事件の増加は軍部にも波及し、多数の将校が目撃したほかレーダーにも何度かキャッチされている。紛争の地域によく出現するといわれるUFOだが、いまだに緊張の続く半島での目撃は何を意味するのか──


 骨まで凍りつきそうな寒風が逆波の立つ黄海の上を荒れ狂って、冷たいみぞれを機関銃の弾丸のようにたたきつけていた。大韓民国海軍所属の、長さ三十メートルばかりのランチは、大波が寄せるたびに艇首を空に突き上げ、次には波の谷間に突っ込んでいた。六人の乗組員は、いつ転覆するかと気が気ではない。「浸水するぞ!」しかめ面で舵輪を握っていた男が叫んだ。「これではとてもたまらん!」
 あとになって艇長は語った。「心配事は山ほどありましたよ。UFOまで現れなくても……」
 この改装魚雷艇は日課の補給任務で仁川付近を航海中だった。一九七三年十一月十一日のことだ。厳しい韓国の冬が今年は早目にやって来たな、と艇長のキム・ビョンハク中尉は考えていた。乗組員は、悪天候との戦いやこの海域をうろつく北朝鮮の快速魚雷艇からの脱出には慣れっこの古参兵ばかりである。さっき声を立てた二十五歳になる舵手のパク・ミュンファでも二度の船火事の経験者なのだ。
「UFOまで現れなくても……」

朝鮮半島はUFOの特別目標

 だが、この暗い嵐の夜、また別の危険が近づこうとしていたのだ。東洋の火薬庫朝鮮半島防衛の任にあたる韓国と米国の当局者をしだいに追いつめる新しい脅威である。というのは、この脅威は、百万の武装兵が向かい合ったか細い休戦ラインのしめつけるような政治的緊張から生まれるのではなく、まだだれも知らない不吉な雰囲気の中から姿を現そうとしていたのである。
 朝鮮半島はUFOの特別目標になっていたのだ。それでなくても不安定な情勢に拍車をかけるように空飛ぶ円盤は南でも北でも目撃され、人工の航空機やミサイルでは不可能な飛行ぶりを見せつけ、一部の人たちからあれは地球の外から来る宇宙船だと信じられていたのである。「そのことは間違いない」と在韓国連軍渉外将校のロバート・K・スフィアは語る。「当地で生じるいろいろな問題に加えて、空飛ぶ円盤は至るところに出没している」
 嵐にもまれる魚雷艇の上では、パク・ミュンファがキム中尉の肩をたたいて上空を指さした。二人と残り四人の乗組員は、かすかな光が暗い夜の雲を背景にいきなり明るいはっきりした飛行物体に変化するのを見たのである。
「何か正体の知れないものを見ているのだということはすぐにわかりました」とパク水兵はあとになって語った。「その物体は嵐や雨やみぞれをものともせず、水面すれすれの高度を直線飛行していました」
 艇長は仁川港湾司令部──呼び出し符号は「サファイア」──を無線で呼び、帰港許可を求めた。荒れ狂う海での急変針で転覆しないよう艇を保持しながらパクは、「敵機」の出現を艇長が報告しているのを聞いた。
 パクは面くらった。「こんな天候に飛行機が飛べるわけがあるまいに──」急速に接近してくる物体が人工の航空機でないことは彼も確信していたのだ。
「基準になるものがないので測定は困難でしたが、その物体の長さは十二メートルくらいと思いました。水面上三十メートル以下の低空を恐ろしい高速で近寄ってくるのです」

艇長、あれは飛行機じゃありません!

 若い水兵は、びくびくしながらも艇を二十七キロメートル東の仁川に向けようと一生懸命になっていた。
 ところがUFOは、突然空中に停止してしまった!
「早く逃げ出しましょう!」とパクは艇長に向かって大声をあげた。
「あれは何だろう? レーダーでも見えるとサファイアが言っているが──」
「今にわかりますよ! そらこっちにやって来る!」
 UFOはふたたび動きはじめた。風と雨とみぞれはゴウゴウと音を立ててはいたが、その物体は接近してくる間ちっとも音を立てないことにパクは気づいていた。
 彼は危険を感じておびえた。
「艇長、あれは飛行機じゃありません! ヘリコプターでもありません!」
「おれにもやっとわかったよ! サファイアの話では超音速飛行をしているそうだ!」
 だが乗組員には衝撃波は感じられなかった。物体は頭上を通過した。白熱した金属で出来ているような感じで、平滑な表面は桜色に輝いている。一心に見上げていたパクは、それが典型的な空飛ぶ円盤の形をしていることに気づいた──中心に隆起のある、平たい円盤である。あとで彼はその物体をスケッチしたが、やはり典型的な「空飛ぶ円盤」によく似ており、腹部の中心から排気を吹き出していた。
「逃げましょう!」
「そのとおりだ。行こう!」
 改装魚雷艇は荒波をついて全速力で母港めざして走り出した。明るい赤色に輝くUFOは、追跡するというより後方に浮かんでいるように見えた。「その“物体”は私たちについて来るのです」とパクは語った。「私は“監視されている”ような気がしました。あの飛行物体が知的生物によって操縦されていることは確かです……」
「私たちは全員でよくよく観察しました。物体は海面上三十メートル以上の高度にはけっして上昇しませんでした。でも位置だけはたびたび変えました──突然右側から左側に行き、続いてまたもとの位置にもどるといった具合いにです。そして少なくとも二十分は私たちの周囲をうろついていました」
 この事件後まもなく韓国当局は、この空飛ぶ円盤が沿岸警備用レーダーで捕らえられたことを確認することも否定することも拒否した。その後訓練のため渡米したパク・ミュンファは、その物体がレーダー上に現れてその付近を飛行中のどの航空機よりも高速で飛行するのが観測されたと艇長に連絡があったことを主張している。
 他の乗組員も、地球上のものでない飛行体から──想像を絶する悪天候にもかかわらず──ずっと調査されたという点では、パクと同意見である。それが他の惑星から来た宇宙船に違いないという確信は、いろいろな条件を一つずつ排除していった場合それしか残らないという単純な論理に基づくものだ。間違いない、と彼らは信じているのである。
 パクは、韓国海軍勤務中数々の表彰を受けたこともある誠実でひたむきな青年である。噂をふりまいたりホラ話をでっち上げたり幻覚に惑わされるタイプの人間ではない。その夜UFOがもと現れてきた雲の中に消え去るずっと前から彼は、自分が目撃しているのは「何か未知の物体で……自分が受けた教育では解答の出せない何か」に違いないという確信をもつようになっていたのだった。

韓国は人類観察に適している

 韓国人によくある型の、穏やかで誠実で真面目な人物であるパク・ミュンファは、彼自身の体験からセンセーショナルな結論を引き出すことには反対である(「あれが宇宙船だったという証拠は何もないのですから」)。だがもし宇宙人が人類を観察しているのだとしたら、韓国ほどおあつらえむきの場所はないだろう。ベトナムの陥落とともに米国の極東政策の焦点は東南アジアから東北アジアに移っており、一九五〇年から五三年にかけて二万七千人の米国人が戦死したこの国に緊張は十分高まっているのだ。
 多くの米国人にとって韓国の思い出といえば荒れはてた戦災地の光景や、口が曲がるほどピリピリするキムチの味わい、それに陽気なバーやビヤホールの雰囲気などにすぎない。だがこの「朝の静かな国」は今や三千二百五十万の人口を持った新興産業国家であるばかりでなく、早くもアジア経済の中心地となろうとしている上に、米国のかけがえのない戦友なのである。
 朝鮮戦争当時のソウルしか知らない人たちには、その後の発展ぶりはとても信じられないだろう。ガラス張りの高層建築が至るところにそびえ立つ。戦前の人口はわずか百五十万にすぎなかったのが今では世界十大都市の一つに数えられるまでに成長し、その人口は六百五十万にものぼる。街路には自家用車、トラック、バス──すべて韓国製である──がひしめきあい、四車線の超高速道路がソウルと釜山を結んでいる。高速道路と鉄道は拡張に拡張を重ねて、今では国内に四時間半以内に行けないところはなくなったのである。なんという堂々たる発展ぶりであろうか。

軍部は本気だ

 そればかりではない。韓国は古代文化のふるさとであり、豊かな伝説の国でもある。何百年も昔から語り伝えられてきた物語には、昔も宇宙から侵略が行われてきたことを暗示するものが多いのである。
 最近の韓国はUFO目撃の現場となってしまった。UFO活動を示す証拠は強力で納得のゆくものであり、無視するにはあまりにも面倒である。空中に怪光が出現してしばしば信じられないような動きを見せるのを、信頼することのできる人たちが目撃している。それらは海上からも地上からも、そして航空機の上からも目撃され、どうかすると対空砲火をあびせられたこともあるのだ。
「真面目にそれを否定しようとする者はないと思います」とソウル居住の米国実業家のジョージ・B・マギニスは語る。「当地では不思議な物体が上空で目撃されるし、軍部も本気だ。UFOに関する限り、だれも“真珠湾”の経験を繰り返したくはありませんからね……」
 マギニスは間違っているのかもしれない。空飛ぶ円盤はそれほど真剣には評価されていないように思われるからである。
 韓国内でのUFO目撃報告が殺到するのに対して行われる見えすいた説明の一つは、率直に言ってけっして人を納得させる説明ではない。
 一九五三年七月二十七日の休戦いらいほとんど二十五年、いまだに四万二千人の将兵を韓国に駐留させている米軍が繰り返し主張するところでは、未確認空中現象は軍事的対決が存在するところに発生することが予想されるというのだ。ミグ21ジェット機を含む八百五十機以上の戦術戦闘機から成る第一級の北朝鮮空軍は、新鋭F4ファントムをたった十八機しか持たない五百機の韓国空軍に対して展開を終わっているのである。米国のSR71ジェット機が北鮮上空を偵察飛行したり、共産空軍がたえず韓国の防衛力を偵察したりしているのは公然の秘密である。

クリスマス・イヴの怪光

 もちろんUFO目撃例のいくつかは有人航空機の侵入偵察飛行と関係があることは疑いない。「だがすべてのUFOをミグ21の偵察飛行だと片づけるわけにはいきません」とソウル駐留の米軍技術団は説明する。「韓国には精密な防空組織があり、先方のやっていることはすべてわかります。先方が離陸すればすぐレーダーに映る。レーダー上の光点が飛行機かどうかはすぐ区別できるのです」
 一九七二年から七四年まで韓国のレーダー基地に勤務したある軍人はこうも話している。「北鮮から来たものでもなく人工の航空機の特徴も備えていない飛行体をよく観測したものです。突然出現し、突然消滅するんです」
 要するに、しだいに数を増しながら韓国の上空を乱舞するUFOについては、信頼するに足る説明はまだされていないのだ。
 一九五九年にはすでにソウル上空で不思議な物体が観察されている。厳しい寒さのクリスマス・イヴのことである。ニューヨーク州ブルックリン出身のバート・カービル一等航空兵はピョンテク・レーダー基地に勤務していた。そのとき彼のレーダー上に四個の光点が現れた。東海岸のすぐ沖を、二万メートルの高度で南から北へ動いている。速度はマッハ三・五だった。当時の航空機にはできない芸当である。

UFO、対空砲火を浴びる

“クリスマス・イヴの怪光”は新聞でも報道された。海岸の町ポープハンでは少なくとも十二人が目撃している。その夜は雲もなくよく晴れてはいたけれども、物体は大変な高度を飛行していたので詳細な観察はできなかった。
 それから何年にもわたって、説明に苦しむような目撃報告が続いた。一九六二年には釜山付近をUFOの群が旋回していたという記事が日本の雑誌「宇宙」に出た。これらの物体が三機か四機で一群となって非常な高空を飛行しているのが目撃されたのである。
 一九六八年──米国のスパイ船プエブロが北鮮にだ捕されたのと同じ年である──の一月には、非武装地帯付近のある前進基地に火のような怪光が出現して大騒ぎになった。またしても三機か四機が一群となって現れたこれらのUFOは、消滅する前に実際に対空砲火のお見舞いを受けているのである。
 一九七〇年に入ってキュンギャン日報の記者が、ソウルで目撃され、また伝えられるところでは北鮮でも同じように目撃されているという正体不明の色光について米韓両国軍の高官に質問した。国連軍司令官のジョン・H・ミカエリス将軍は、彼の長い軍歴の間にあちこちでUFOの話を聞いた、と答えた。「そのような報告は大部分は間違いだと思う」と彼は語ったという。
「不十分な観察や誤った情報の産物である場合が多いからだ。しかし私は、何か私たちの知らないもっと調査を必要とする何物かが存在するという可能性までも問題外とするものではありません」

もっと真剣に研究しなくては

 バージニア大学の高名な韓国人学者のキム・チョンシク博士は、韓国東海岸の人里離れた山道にUFOが着陸したという報告を聞いたことがある。博士によるとそれらのUFOは、地面深くくぼんだ痕跡、焦げあと、残留放射能などをあとに残したという。これらの着陸地点をガイガー計数管で測定したところ相当な放射能を検出したことから博士は、UFOが原子力を動力としていると確信するようになった。
「私たちにも原子力飛行機を建造する能力はあるのだが、費用がかかりすぎるので建造しないだけだ」と世界各国から三百例以上のUFO目撃報告を収集しているキム博士はこう語る。「広大な宇宙を旅行するように設計された大宇宙船には、核分裂こそもっともふさわしい動力かもしれない」
 そしてキム博士は考え深げに付け加える。「たしかに何かが間違っているようだ。UFOをもっと真剣に研究しなくては」
 韓国空軍の警備員だった二十五歳のファン・ヨンホ軍曹も同意見である。彼は一九七四年三月十一日ヨンドンポ車輛集積所付近に浮かんでいたUFOを“追跡”したことがあるのだ。彼はその後米国に移住し、UFOに強い関心をもつようになった。「私にはあれがUFOだったと言い切る自信はありません。正体はだれにもよくわからないでしょう。でも、軍の上層部では公表している以上に詳しいことを知っているような気がします」

巨大な怪光が出現

 広々としたヨンドンポ軍用自動車団の構内で、裏毛の防寒服を着てカービン銃をぶらさげたファン軍曹はたった今交替して半夜勤警備についたところだった。彼は他の警備員と交信するための携帯用無線電話機を手に、駐車したトラックの中で丸くなっていた。長い、冷たい、たいくつな夜になりそうだった。ファンはチラリと腕時計をのぞきこんだ──明日から三日間の休暇だ、家に帰れるぞと考えながら。
 ファンはほかにすることもないのである──だから、携帯無線から警報音が鳴りひびいてハッと我に返った時間もハッキリ覚えている。
「すぐこっちに来てくれ!」。もう一人の警備員の声がした。「空に何かいるんだ!」
 午前一時二十三分だった。
 ファンは戸外の寒さの中に飛び出して、覆いをかけたまま長々と並んでいるジープの列の向こうの三百メートルほど離れたところにいる警備員のほうを見た。そんなに離れていても、暗いオレンジ色に輝く巨大な丸い物体が空中に浮かんでいるのがハッキリ見えた。
「何だあれは?」
 カービン銃を握りしめてファンは走った。ハアハアと息を切らしながら他の二人の警備員の立っているところまで駆け寄ると、二人もその巨大な怪光をじっと見つめていた。物体──ファンは最初ヘリコプターと思った──はもう三百メートルほど向こうの水田の上空に停止している。大型トラックほどの大きさの円筒形で、完全に無音のまま地上約三十メートルの上空に浮かんでいた。
「中からだれかがおれたちのほうを見ているぞ!」
「ヘリコプターじゃないな!」ファンはつぶやいた。
「敵機だ! 敵機にきまってる!」
「まあ待てよ──」ファンは先任下士官だった。「無線で司令部に連絡して援軍を呼ぼう。カービン銃でねらったりするんじゃない! もっと近くからよく見てみよう」

人間の作ったものではない

 眼は明るく輝く葉巻型のUFOに向けたままファンはジープに乗り、エンジンをかけ、門──UFOのいる方角──のほうへ動き始めた。
 ファンはジープのヘッドライトを点灯した、が、思いなおしてまたスイッチを切った。ライトが消えたとたん、UFOは彼と反対の方角に音もなくゆっくりと滑るように動き始めた。
 彼は語る。「その頃までには、そいつはけっして人間の作ったものではないと確信していました。意志をもった手で操られていることも確かでした。しかし、敵意をもっているかどうかはわかりません。ねらい撃ちしようと思えばいつでもできたのですが、それは良い考えとは思えなかったのです」
 UFOも撃ち返したかもしれない、とはファンは言わなかった。手にしているのがカービン銃一丁だけということが頭にあったからかもしれない──正体不明の物体にカービン銃ではあまりにも心細かったことだろう。
 彼はアクセルを床まで踏みこんでジープを雪におおわれたヨンドンポ高速道路に乗り出した。午後十二時から午前四時までは夜間外出禁止なので、道路はガランとしている。今やUFOは円筒型というよりも円盤型に見え、彼は何としてでもあれに追いついてやろうという闘志のようなものを感じた。

追いついてやる……

 オレンジ色の怪光は、やはり地上約三十メートルの高度で二車線の道路とほぼ平行に、彼から遠去かるように滑空していた。何としてでも追いついてやろうとファンは、側溝に落ちないよう注意しながら速力を五十キロから六十五キロに上げた。
「“あいつ”は追跡されていることを知っていて、私と鬼ごっこするつもりなんだ──私にはそんな気がしてなりませんでした。私がスピードを上げると、怪物もやはりスピードを上げるのです──ほんの少しですが」
 頭にきたファンはハンドルを握りしめ、危険もおかまいなしに加速を続けた。
「追いついてやる……」
 時速百十キロで走っていた彼は、すぐ目の前にパックリ口をあけた溝が現れるまでちっとも気がつかなかったのだった。ジープのことがチラリと頭をかすめたが、そのときはもう土の壁に突っ込んで割れたガラスが周囲に飛び散り、彼の身体はフロントガラスのなくなった窓わくから前に投げ出されてしまった。
 午前一時五十六分、近くの米軍基地にいた別の警備隊員たちが飛び去るUFOを目撃した。
 一時十九分から二時四分まで──あとになってファンが聞いたところでは──金浦空軍基地のレーダーもこの物体をとらえていた。
 ファンの持場に到着した援軍も、飛んで行くUFOをはっきりと目撃したのである。
 ファンは六時間後、軍医務室の手術室で意識を回復した。腕が折れたうえに肋骨にもひびが入っており、裂傷や打ち傷もあった。軍医たちがいそがしく手当てをしている。しばらくしてから彼は部隊の当直士官に不思議な事件を報告した。驚いたことに報告書を出せとは命令されなかった。
 ファンは語る。「これで、韓国当局で飛行物体のことをもう知っているか──それとも知りたくないと思っていることが、はっきりわかりました」
 一九五四年の相互防衛条約により脅威にさらされる朴大統領の国民を助けるため韓国に駐留する米軍もやはり、しだいに広がってゆくUFO騒動のまっただ中にいるのである。

二機の飛行機から六人が目撃

 一九七四年十一月二十一日韓国上空で、F4ファントム・ジェット戦闘機が一機の空飛ぶ円盤をすごい勢いで追跡したことは、米国空軍もしぶしぶながら認めている。
 二人──ジョセフ・E・スタードマン大尉とビクター・E・キング中尉──の乗ったファントムは、(レーダー上で)共産軍爆撃機が侵入してくるように見えたので緊急離陸を命じられたのだった。しかし二人の眼前に現れたのは爆撃機ではなくて白熱した光体だった。物体は閃光のような白熱光を発してはいたが、スタードマン操縦士にも追いつけないほどの快速でジグザグに飛行し、知的生物があやつってでもいるように感じられた。
 このUFOはソウルの米国第八軍戦術作戦司令部のレーダーでもとらえられたし、前線の兵士たちからも目撃されている。実際のところ、スタードマンは射撃準備まですませていたのである。
 ところが次の瞬間、物体は薄い大気の中へ突然消滅してしまったのだ。
 それだけでは上層部にショックを与え足りないとでも思ったように、数週間後──一九七五年一月二日──には同じようなUFOがふたたび出現し、少なくとも二機の飛行機から六人が目撃した。
 米海軍のグラマンS2トラッカー──プロペラつきの対潜哨戒機──二機が沖縄からソウルに近いK─十六基地めざしていつものとおり飛行していた。機が雪におおわれた韓国の海岸線を通過したとき、輝く光体が出現して彼らと編隊を組んだ。「UFOは七分間私たちとともに飛行しました」と操縦士の一人は報告した。「その物体は円形をしており、全体が発光していました。どんな航空機にもできないような急旋回をやってのけるのです」

宇宙人は私たちをじっと見つめている?

 米国軍人も関係したこのような目撃例はまだいろいろある。中でもめざましいのは、昨年米国駆逐艦ローの全乗組員が釜山付近の夜空を明るいオレンジ色の怪光が飛びまわるのを目撃した事件であろう。
 いったい何事が起こっているのか?
 韓国に現れるUFOが北鮮からの有人機でないことはもう証明済みだ。
 では、いったい何物であるのか?
 頑健でたくましい韓国の国民の間で語り伝えられてきた民話に、怪物、悪魔、それに歴史の夜明け以前から半島をうろついていたクイシン(人間によく似た獣)などがいろいろと登場しているのは興味深いことだ。一九六四年製作の映画「他の世界から来た生物の王」は、韓国の小学生ならだれでも知っている話──韓国古代文化の開始以前に地上に降り立って人々に話しかけた不思議な訪問者の物語を再現したものである。
 かって韓国を訪れた古代の宇宙飛行士がふたたびもどって来たのであろうか? 十分な証拠というほどのものはないのだが、韓国南部や日本西部に残る古代彫刻などの遺物の一部は、それが他の宇宙からの訪問者の作ではなかろうかと考える考古学者たちの首をひねらせている。
 バージニア大学のキム・チョンシク博士は、UFOが──韓国でもどこでも──やっていることをよく知っているなどというふりはしていない。しかし博士は想像を絶するような仮説を立ててもいるのである。
「もし、私たちよりはるかに進歩した他の文明人が、銀河系内で人間の住む惑星すべてを定期点検しているとしたらどうだろう。そうすれば、大昔に宇宙人が訪れたという伝説は説明がつくだろう。また、宇宙人が“戦争”という概念など全然所有していないで地球人がどうしてお互いに殺しあうことにあれほどの努力を費すのか全く理解できないとしたらどうだろうか。彼らの宇宙船はかならず、私たちの惑星でも特に軍事的緊張の大きい地点、たとえば韓国などにひきつけられるのではないだろうか?」
「要するに」と博士は続ける。「宇宙人は私たちをじっと見つめているのかもしれないし、眼にする状態に不満を感じているのかもしれない。彼らはどんな手を打ってくるだろうか?」
 現在のところ、韓国で起こる未確認空中現象に対して真剣な調査が行われているという事実はないようだ。「他にしなければならないことが多すぎるからね」とある韓国の高官は語っているが、一UFO研究者の話では、他の国々の指導者たちがこの問題を真剣に考えるようにならない限り韓国のUFO騒動も人々の注意を集めるようにはならないだろうということだ。
「これでは気違い沙汰だ」とソウル駐留米軍のある中尉は言う。「何か空恐ろしいことが次々に起こりつつあることはわかっているのに、だれも調査しようという気にもならないなんて」
 だが、そのような状態が長続きするはずはない。彼らが“人間によく似た生物”なのかそれとも他のものなのかはだれにもわからない。しかし韓国のUFOの背後にひそむ力はしだいに注目の的となろうとしている。間もなく、だれか真剣な学者たちが、当然聞かれねばならぬ質問を提起するようになるかもしれないのだ。

増野一郎訳


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