投稿者 asahi 日時 2001 年 11 月 05 日 09:00:56:
電磁波の発がん予防対策を各国に要請 WHO
世界保健機関(WHO)の傘下の国際がん研究機関(IARC)は、高圧送電線や電
化製品などから出る電磁波(電磁界)について、見解をまとめた。「発がんの可能性が
ある」としながらも、動物実験による証拠は不十分で、解明すべき課題はあるという内
容。電磁波の健康影響についてWHOは03年に新環境保健基準をまとめる方針で、と
りあえず10月、各国政府や電力業界に予防対策をとるよう伝えた。
WHOは96年から10年計画で「国際電磁波プロジェクト」を進めており、発がん
性の評価をIARCが担当した。日米欧10カ国の専門家21人が参加、数十の研究論
文をもとに、6月、フランスで開いた専門家会議で総合評価をくだした。
会議では、小児白血病に関する分析が「評価対象」に採用された。一般の家電製品な
どから出るレベルの0.4マイクロテスラ未満の磁界に住む子供たちには発症の増加が
みられなかったが、0.4マイクロテスラ以上を居住環境で受ける子供たちは2倍にな
る、という。
IARCの発がんランクは5段階あるが、電磁波は「発がん性あり」「可能性が高
い」に続く3番目の「可能性あり」とされた。そのうえで、「統計的な疫学研究には信
頼できる証拠があるが、動物実験の証拠は不十分」とする見解をまとめた。
WHOは87年に出した「環境保健基準69」で、「5000マイクロテスラ以下で
は有害な生物学的影響は生じない」としている。今回はこれを再評価するための研究作
業の一環で、今後、他の科学的調査やリスク評価を総合し、新しい基準を出す。
またIARCの見解を受け、WHOは各国政府や電力業界に「予防的な対策」とし
て、(1)住民に十分な情報を提供する(2)被ばくを減らす安全で低コストの対策
(3)健康リスクの研究の推進−−などを講じるよう伝えた。
経済産業省は「白血病が2倍になるとの疫学結果は認識しているが、調査の偏りの可
能性も残る。動物実験などによる科学的なメカニズムも明らかになっておらず、すぐに
何らかの規制などは考えていない」と話す。
住民に必要以上に不安を与えないため、当面、財団法人「電気安全環境研究所」に委
託し、「電磁界と健康」のホームページでIARCの見解を紹介する。
「電磁波問題」は、79年に米国で高圧送電線の周辺でこどもの白血病が多いとの疫
学調査結果が発表されて以来、欧米で社会問題化し、研究が続いている。日本でも99
年から3年かけ、WHOのプロジェクトの一環として、小児白血病と電磁波の関係を調
べる初の疫学調査が進行中だ。(06:47)