投稿者 ニーチェ 日時 2001 年 10 月 17 日 19:49:46:
テロ対テロの馬鹿騒ぎを演出するアメリカ
アメリカは9月11日の同時多発テロの惨状が全世界に伝わるのを待って「アメリカのテロに対する戦争」に世界の支持を得た。当面の目標を1)ビン・ラーディンの身柄捕獲、2)テロ組織アルカイダの壊滅、3)タリバン政権打倒に置き、世界の支持をバックに10月7日から連日アフガニスタン空爆を行っている。今世界のテレビの画面は火を噴くワールドトレードセンターと無残なペンタゴンから一転して米軍の「誤爆」によるアフガン犠牲者シーン、民家の瓦礫の山、血を流す無残なアフガンの子供達の画面に移った。ブッシュ大統領の対アフガン軍事行動を支持した世界の世論はアメリカのアフガン攻撃が続いてくると慎重になり始めた。アメリカに軍事基地使用を認めたパキスタンでは反米デモが日増しに激化し、今や反米デモの嵐はアラブ全土に吹き荒れようとしている。各地デモでは星条旗やブッシュのわら人形を焼き払い、一方ではオサマ・ビン・ラーディンのポスターをまるで国旗のように掲げている。アメリカはビン・ラーディンを名指したことによりビン・ラーディンをイスラム世界の英雄にしてしまった。アメリカは民家への爆撃を誤爆と発表したが、アメリカの誤爆発表は今に始まったことではない。1998年8月の在ケニアとタンザニア米大使館爆破の報復としてスーダンの薬品工場へミサイルを打ち込んだのも、99年6月のユーゴ空爆の際中国大使館をミサイル攻撃したのもすべてアメリカは誤爆であると発表した。ところがすべて「誤爆ではなく狙い撃ち」であったことが明白になっているのである。スーダンの薬品工場の場合はイスラエルとパレスチナを和平から戦争状態にするためイスラム世界に反米・反イスラエル感情を煽るためであり、中国大使館狙い撃ちは天安門10周年学生デモに対する軍部画策による暴動化を未然に防ぐためであった(詳しくは時事直言バックナンバー)。今後の米アフガン戦略はヘリコプター投入になるが、当然誤爆を続けることは明らかである。既に誤爆ばかりか6メートルのコンクリートを貫通、破壊する特殊爆弾(GBU−28)の威力顕示でアメリカに協力的なアラブ諸国の中でも反米デモが日増しに過激化している。さらにアメリカはタリバン後の政権のあり方につき国際コンセンサスを得ることなく武力行使に走ったばかりか、アフガン国民に罵詈讒謗(ばりざんぼう)を続けてきたアフガン国民の敵と言っても過言でない凶悪国際テロ組織北部同盟と手を結んでいる。ソ連のアフガン侵攻の際、アメリカはビン・ラーディン率いるテロ組織アルカイダを支援し、今度はそのビン・ラーディンとアルカイダを叩くためテロ組織北部同盟を支援する。今米軍に飛行場使用を許すほどアメリカに軍事協力しているパキスタンは、実は9月11日までは「ならず者国」、「テロ支援国」とアメリカ自身が認定し制裁を加えていた国である。「テロとテロを支援する国に対する宣戦布告」したアメリカはテロ支援国とテロ組織と共に、テロ組織アルカイダ(ビン・ラーディン)とテロ国家タリバンと戦っているのである。「テロに対する正義の戦い」とはお笑い種であることがわかる。このようなお笑い種には裏があるのは当然のこと。つまりテロ撲滅は表向き。狙いは別。
何故主要先進国や中・ロまでアメリカに従うのか
先ずよく認識しておかなくてはならないのは、米、英、仏、ロ、中の国家産業基盤となっているのは、「売春とともに世界最古の歴史」を持つ「死の商人」といわれる兵器産業であるという事実。今日の資本主義社会は兵器産業を基盤に置いた独占資本に支配されていることは言うまでもない。英国のピッカーズ(現ブリティシュ・エアロスペース)、クルップ、仏のシュナイダ−・クルーゾー、米のデユポン、ロックフェラー、メロン、等々数えたらきりがないが、これらの財閥が全産業を牛耳っているのもまた事実である。日本でも日露戦争から中国侵攻の軍需を背景に大財閥を形成した三菱財閥はよく知られるところ。ちなみに今日の世界兵器売買ランキングを見ると三菱重工は14位、三菱電機は38位となっている。欧米の財閥に比べて三菱財閥がさえないのは、日本はアメリカのように好きな時に戦争が出来なくなったから。又中国が日本の再軍備(古い言葉だが)を警戒するのはアジアの兵器市場を日本に奪われたくないからである。アメリカが自ら理由を作ってアフガン空爆をはじめたことは今後アメリカ主導で兵器市場開拓を行うことに他ならない。市場開拓者に各国の財閥、すなわち財閥に忠実な国家が追従するのはこれまた当然のことである。アメリカが作ってくれるパイに腹をすかしたオオカミどもが群がっているだけのこと。
この世の中はキツネとオオカミの奪い合い
資本主義社会では「戦っているうちは支配できる」が「平和になったら騙される」のが常。だから世界一の軍事力を持つアメリカは戦争さえしていれば世界をリードできるのである。平和になると軍事力は用を成さず、マネー戦略がものを言う。9月11日はアメリカの国家運営が平和手段から戦争手段へ転換する宣誓式のようなものだ。山本五十六率いる大日本帝国海軍がお誂え向きに真珠湾へ向かってきたように、都合よくハイジャック連隊機がニューヨークとワシントンへ向かって来たのである。本誌前号で「アメリカのアフガン攻撃はサダム・フセインをいぶり出すため」と述べた。アメリカは最終的には全アラブ対イスラエルの第5次中東戦争とそれに続く「新型第三次世界大戦」が狙いである。今日戦争は一石三鳥以上にアメリカとイスラエルに国益をもたらすばかりか、英、ロ、中、仏、現在の国連常任理事国に利益をもたらす。四面楚歌のイスラエルにとって領土拡張と安全保障は戦争以外では達成できない。戦争による領土拡大とパレスチナ独立を粉砕することがイスラエル国是である。英国のブレア首相、ロシアのプーチン首相共に攻撃をアフガンからイラクへ拡大すべきでないと言う。これは全く本音ではなく、タイミングの問題。戦闘を中東へ拡大することは5カ国の共通利益であることは言うまでも無い。世界最大の産油国ロシアは未曾有の利益を得るばかりか、ヨーロッパに原油市場拡大ができるし、仏、ロ、中と共にイラク等「ならず者国家」への兵器の輸出拡大につながる。アメリカがイスラエルとサウジアラビア、クエート等友好国の兵器販売を拡大するのは当然のことである。多くのアラブ諸国の中には仏、ロ、中の兵器常連顧客がいる。イラン、ヨルダン、シリア、リビアなどである。これらの国をアメリカの「テロと戦う」を理由に米国の協力国にしたことは正に仏、ロ、中にとっては「アメリカの賭場荒らし」である。アメリカにとっても仏、ロ、中にとっても今中東でドンパチやられるのは不利。中東戦争になるとアメリカは否が応でもイスラエルを軍事支援しなくてはならなくなる。そうなると、全アラブ諸国を敵に回してしまい、せっかくの「客引き」が無駄になってしまう。アメリカの戦略は友好国と対立国がアメリカのテロに対する戦争協力国になっている間に米軍を駐屯させ、兵器を売り込むことにある。戦争はその後。ロシア、仏、中国は既に中東にミサイル等の兵器を大量に売り込んでいるが、今後アメリカの市場参入を避けながら、かつアメリカに市場を拡大させることだ。それには時間が必要なのである。だからアフガンからイラクへの戦火の拡大に反対なのである。人道上の問題ではない。兵器マーケッティングの問題。
湾岸戦争でデザート・ストーム(砂漠の嵐)で有名になったパウエル国務長官がイラクへの攻撃拡大に反対なのはアメリカの軍産代表としては当然のこと。戦争の拡大を嫌うのではなく更なる戦争の拡大と、更なる兵器市場創造のために準備期間が必要だからである。
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政治家サダム・フセインの決断
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世界には超一流の政治家がいる。サダム・フセインや金正日である。アラブ諸国に反米・反イスラエルデモが極度に達する時サダム・フセインはイスラエルにスカッド・ミサイルを打ち込むであろう。こうすることによりサダム・フセインはジハード(聖戦)の旗手になれる。アメリカの事情とは裏腹にイスラエルも一日も早くサダム・フセインが自国にミサイルを打ち込むことを期待している。中東で戦争が始まると、アメリカはどうしてもイスラエルを軍事支援しなくてはならなくなり、せっかくパレスチナ独立支援をカードにアラブ諸国を友好国、協力国に引きつけているのに、米軍駐屯や兵器売込の目的達成前に彼らを敵に回してしまう。アメリカがイスラエルに我慢を強いてパレスチナ暫定自治政府との和平を進める理由はここにある。真の和平などどうでもいいのである。イスラエルとサダム・フセインは早期中東戦争を望み、アメリカと他の3カ国はアフガンで時間を掛けるのが正解。アメリカにとって今一番恐ろしいのがサダム・フセインである。アメリカにとってはパキスタンやアフガン隣接国、アラブ友好国に「テロ撲滅」を理由に米軍を配置し終わる前に中東戦争になってはならないのである。丁度「日本の安全」を理由に米軍基地を日本に置いて日本を軍事支配しているのと同じように、今アメリカは中央アジアと中東に軍事覇権戦略を押しすすめている最中だからである。今後サダム・フセインは当然イラク上空のNo Fly Zone(飛行禁止区域)でアメリカ偵察機をミサイル攻撃して挑発する。正にアメリカのアキレス腱を突いてくるのである。当然イスラエルも本格的にパレスチナ侵攻をはじめることになる。イスラム世界の反米・反イスラエルの火の手が燎原の火の如く全世界に燃え広がる。それを尻目にサダム・フセインが動く!もう世界はマネーではなく、「力」で動いている。