投稿者 MASA 日時 2001 年 10 月 04 日 11:07:23:
「黒柳徹子さんに聞く。」 という新聞記事(一週間ほど前のだが)を読んだ。
彼女はこの事件の前にユニセフ親善大使としてアフガニスタンを訪れている。
最後の部分、
ーーー日本はどう対応すれば良いか。
「どうして今回の件で日本が米国に力をかさなければいけないか分からない。
(米国を支援すれば)日本が今後、テログループに報復されても仕方なくなったしま
う。」
私は日頃から黒柳徹子に好意を持っていないが、このような意見は自然で当然な
のか、それとも利己的で身勝手な常識のない女性(黒柳徹子)の意見なのか、どち
らだろうか。
長野県田中知事も同様なことを述べ批判されていた。だが、これは正しいか否か
は別として「自然な」意見ではないだろうか。今回の民間航空機を利用した同時テロ
は悪質で悲惨な結果を生んだ許し難い行為だと言う点では誰もが一致する。テレビ
を見ていて「遂にやった、ざまあみろ。」 などと心の隅で思った私ですら、極悪非道
なテロでどのような事情があるにせよ許し難い犯罪行為という点では異存はない。
しかし、一方で極悪非道テロという理由だけでアメリカを一方的に支持(参戦)する
のはあまりにも幼稚すぎる。
日米安全保障条約には次のよう定められている。
第五条 各締約国は日本の施政する領域における、いずれか一方に対する攻
撃が、自国の平和及び安全を危うくすることを認め、自国の憲法上の
規定及び手続きに従って共通の危険に対処するように行動することを
宣言する。
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この条文によれば、日本の施政する領域ではない地域においてアメリカが攻撃を
受けても、それは日本の平和及び安全を危うくすることにはならず、従って日本は
これに対処するような行動をとることはない、(そのような場合にはアメリカと共同行
動をとらない。) ことが宣言されている。
(アメリカは 「日本の施政する領域ではない地域」ではあっても日本周辺であれば
ガイドラインで第五条発動条件にしたわけだが、マンハッタンを日本周辺とする
ことまではしていない。)
日米軍事同盟(安保条約で定められた契約)によれば今回の件で日本には参戦
義務は全くないことになる。勿論日本からの参戦希望をアメリカが拒む理由はない
が、「日の丸を見せろ。」なるアメリカの要求とは条約破りと言えよう。(条約が破ら
れることを戦争と呼ぶが。)
イギリスやフランスなどヨーロッパ諸国が加盟するNATO(北大西洋条約機構)
でも第五条で同様な規定(同様ではなく明確な集団的自衛権の発動義務)がある。
そこでは、「加盟国に対する攻撃は全加盟国への攻撃とみなして」軍事力の行使を
含む必要な行動をとることが定められている。この条約の適用地域は「ヨーロッパ、
北アメリカの加盟国の領域、トルコ領土、北回帰線以北の大西洋における加盟国
管轄下の諸島」となっている。従って今回のテロが条件を満たせばNATO加盟国
は皆参戦する義務があり「我が国は中立を守ります。参戦しません。」というわけ
にはいかない。
(NATO加盟国は、アメリカ、イギリス、フランス、カナダ、デンマーク、アイルランド、
トルコギリシア、ドイツ、スペイン、ノルウェーなど16ヶ国)
しかし、米軍やアメリカ大使館、アメリカ船舶などがこの条約の適用地域以外で
攻撃を受けても第五条は発動されない。例えば日本に駐留する米軍が攻撃をう
けたり、ケニヤやエジプトのアメリカ大使館が攻撃されてもNATO加盟国に参戦
する義務はない。
日本防衛費用の一部として日本はアメリカに年間50億ドル支払っている。米軍
兵士一人当たりに換算すると約1300万円である。もっとも、米軍は日本防衛の
ため日本に駐留しているわけではなく、アメリカの世界戦略として日本に軍隊を駐
留させているわけで、それが日本防衛に間接的・直接的に役立つであろうという
理由で日本は50億ドルを支払っている。だから日本防衛に貢献する米軍の割合
(米兵の数)は1割弱程度だろう、つまり日本は米兵一人当たりに1億3000万円
の給与(謝礼)を支払っている計算になる。正義・自由・民主主義・国家の主権を
護ること(護って貰うこと)とは安くはない、アメリカだって正義感で日本を護ってい
るのではない、十分な謝礼(損得計算後の)を得ての行動である。また現在のこ
の謝礼とは戦争時ではなく平和時であり、ひとたび日本で戦争が始まり米兵が実
際に戦闘行為を行うとなれば、「米兵一人当たりに1億3000万円/年」の謝礼
では済まされないことが予想されている。
(現在の米兵は訓練だけに毎日を過ごし傭兵の義務たる実際の仕事は行ってい
ないが、それでも一人当たり1億3000万円/年、装備込み、を日本政府は支払
っているのだ。)
今回の事件で日本が正義感に燃えて友人であるアメリカを支持するのは良い。
だがこれはアメリカの戦争である。アメリカがどのように言い繕ろうが、攻撃され
たのはアメリカであり、日本人も巻き添えを食ったわけだが、日本はアメリカに対
して被害にあった日本人へ補償・弁償をしろとは言えなくとも、アメリカは自ら撒い
た種は自分で刈る義務がある。もしも膨大な費用と共に日本も戦争に巻き込まれ
るという危険を犯してアメリカに協力するのであれば、アメリカから十分な「謝礼」
を期待して悪いわけがない。5兆円以上は要求して良いだろう。アメリカだって
「正義感」から、日本に駐留したり、中東に干渉・攻撃したり、アフガンゲリラ(テロ
組織)を援助してきたわけではない。純粋に「自国(アメリカ)の国益のため」だ。
残念ながら国際政治は未だ正義ではなく利害関係だけで動いている。正義で動
くのはアラーの神を信じるタリバンくらいだろうか。
小泉首相は「国際貢献だ、ここで日本がなすべき事をなさねば日本は国際社会
から孤立する。」 としてアメリカへの全面協力を唱え、そのための新たな法律を造
ることに疾走している。日米関係には条約も法律もない唯の主従関係のみが存
在する、という現実を改めて小泉首相の言動から知らされる。
日本へのテロが危惧されているが、犯人とされるビンラディン(アルカイダ)らが
日米安保条約を熟知していれば日本への攻撃(又は駐日米軍への攻撃)は最
後の最後まで避けることだろう。日本もアメリカによるタリバン・ビンラディンへ攻
撃への直接的協力は最後の最後まで避けるのが賢い、いや攻撃への参加・協
力は断固として拒否すべきなのが日本の国際的立場だ。国際貢献というのであ
れば平和的解決への模索や難民保護などの平和活動に徹したらどうか。日の
丸を掲げた自衛隊が戦闘に参加して国際社会から評価されることは間違って
も無いだろう。国際社会から得られるのは軽蔑と同情、哀れみだけだ。外交音
痴無能国家としてタリバンを含む総ての国から餌食にされ始めるかもしれない。
日本は国際社会から軍事的な「貢献」などまったく期待されていないこと初めに
知るべきだ。
何故「日米関係には条約も法律もない唯の主従関係のみが存在する。」のか、
「謀略列島」 吉原公一郎 新日本出版社 を読んだら納得できた。
敗戦後、旧日本軍・政府指導部の人々(将校、大尉など、警察・情報機関職員なども)
や政治家達は戦犯として処罰・処刑されるか、それともアメリカに忠誠を誓って特権的
な地位を保つ(得る)かの選択を強いられた。上官の命令に従っただけの末端日本兵
にはこの「選択」の機会は与えられずに処刑されたが、昭和天皇を含む大部分の人達
は後者になることを選んだ。内閣調査室その他の日本情報機関はアメリカが作り支配
・指導してきた。日本の戦後史とは謀略の歴史である。現在も未来も謀略で日本社会
は動かされ、アメリカへの貢献が日本の役割である。日本国家・社会に明るい未来は
ない。・・・・・・・・・・・・ということが良く理解できる本だった。悪文で論理性に抜け読み
にくい本だが。