投稿者 倉田佳典 日時 2001 年 10 月 02 日 17:47:01:
10/02 15:57 臓器は神の所有物か エジプトで移植めぐり論争 外信70
共同
イスラム教徒が人口の九割を占めるエジプト。「臓器はアラー(
神)の所有物で、人間が勝手に摘出できない」として、臓器移植に
は反対論が根強い。だが、移植を規制する法律がないため、売買さ
れた臓器の移植手術がひそかに行われ、医療事故も多発しており、
法制定を求める声が高まっている。
移植の是非をめぐる論争は五年越しとなっているが、まだ行方は
見えない。
医療関係者によると、エジプトでは、腎臓(じんぞう)移植を必
要とする患者は約二万五千人、角膜移植の必要な患者は約十二万人
おり、一部の医療施設がひそかに移植手術を行っている。貧困層の
間では、臓器を売って生活費をかせぐ人も多く、医師が患者の手術
中に手術とは無関係の臓器を摘出して売り飛ばす事件も起きた。
事態を問題視した政府は、臓器移植の実施を規制するため、臓器
移植法案を一九九六年に議会に提出したが、移植そのものを拒否す
る保守的な議員の反対で、事実上、廃案になった。その後、移植反
対派の中心だったエジプトのイスラム指導者シャラウィ師の死去を
機に、再び移植推進論が盛り上がり、政府は九九年、法案を再提出
した。
同法案は臓器の売買を全面的に禁止するとともに、移植の対象を
善意、無報酬で提供された臓器に限定し、提供者本人や家族の意思
確認、病院指定制などの指針を定めている。
最近、エジプトを訪問したカタールの著名なイスラム法学者カラ
ダウィ師もエジプト誌とのインタビューで「反対派は『人体は神の
所有物』と言うが、お金も献血の血液も神の所有物だ」と述べ、臓
器移植に理解を示した。
しかし、九月初めに開かれた同法案をめぐる国会諮問委員会での
専門家の議論では「移植法制定だけが患者救済と臓器売買防止の方
策」とする推進派と「神の所有論」にこだわる反対派が真っ向から
対立、結論は持ち越されたままだ。(カイロ共同=半沢隆実)
(了) 011002 1557
[2001-10-02-15:57]