投稿者 付箋 日時 2001 年 9 月 26 日 21:43:23:
僕は今回のアメリカで起きた凄惨なテロを肯定するために「アメリカの巨大軍需産業」広瀬隆著からの一文を抜粋するのではない。それはこの著者にしろ同じことだろう。
また、僕はテロの首謀者についての報道なども、鵜呑みにできない者である。
ともあれ僕はあらゆるテロに対して、次の元赤軍派の死刑囚の坂口氏の自省の言を思う。
「手段が悪いのは目的が悪いからだ、という言葉もあります」
ここにまたブッシュ大統領への一通の手紙-----WTCのテロで死亡した一人の被害者の家族の手紙がある。
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Copy of letter to White House:
Dear President Bush:
Our son is one of the victims of Tuesday's attack on the World Trade Center.
We read about your response in the last few days and about the resolutions
from both Houses, giving you undefined power to respond to the terror
attacks. Your response to this attach does not make us feel better about our
son's death. It makes us feel worse. It makes us feel that our government is
using our son's memory as a justification to cause suffering for other sons
and parents in other lands. It is not the first time that a person in your
position has been given unlimited power and came to regret it. This is not
the time for empty gestures to make us feel better. It is not the time to
act like bullies. We urge you to think about how our government can develop
peaceful, rational solutions to terrorism, solutions that do not sink us to
the inhuman level of terrorists. Sincerely,
Phyllis and Orlando Rodriguez
親愛なるブッシュ大統領
私たちは、火曜日のワールドトレードセンターへの攻撃で息子を失いました。この数日間、あなたの事件への対応や、上下院がテロ攻撃に対処するため無制限の権力をあなたに与えるという決議について、紙面で読んでいます。
大統領のこの事件に対する対応は、息子の死に対する私たちの気持ちを和らげてくれません。それどころか、ますます気分が重く暗くなっています。
我が政府は、他国の息子たちやその親たちを苦しめる理由として、私たちの息子の思い出を使っているように感じられます。あなたの立場にいる人が、無制限の権力を与えられ、それを後に後悔するというのは、今回が初めではないことでしょう。
私たちの気を和らげようと、からっぽのジェスチャーをしている時ではありません。いじめっ子のように振る舞っている場合ではないのです。
我が国の政府が、テロリズムに対する平和的で理性的な解決策をどうやったら作り出すことができるのか、大統領にぜひ考えていただきたいと思います。テロリストの非人間的なレベルに私たちを落とす解決策ではなく−−−。
敬具
和訳=前北美弥子(コピーライター/エコリレーション)
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この手紙の最後の方、
>テロリストの非人間的なレベルに私たちを落とす解決策ではなく−−−。
これはパレスチナの普通の人々の気持ちでもあると考える。
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「アメリカの巨大軍需産業」広瀬隆著(2001・4・22刊)の[序章・・・・不思議の国アメリカ]より抜粋。
新時代・二一世紀の扉を開くまでに、アメリカ合衆国の技術はあらゆる分野で世界をリードし、地球上の富の多くが北米大陸に集中した。一方で、アメリカの軍隊は世界中に展開し、アメリカの軍需産業は世界中に兵器を輸出してきた。ところが一九八九年一一月にベルリンの壁が崩され、東西対立という地球規模のとてつもなく巨大な障害が取り除かれると、雪崩のように軍需産業が崩壊しはじめた。
その反動によって、世界の主だった軍需産業が大統合に向かいながら、その意味はほとんど専門家から提示されず、体系的な分析資料も出されないまま二〇世紀を終えてしまった。
軍事専門家と紛争現地に入ったジャーナリストたちは、これら軍需産業の兵器と武器にはほとんど触れず、「憎悪の犯罪(ヘィト・クラィム)が世界中に氾濫して、民族の対立意識が燃えあがり、各地に紛争が起こっている」という論調の言葉をひたすら流布し続けた。そのため、それが本当の原因と錯覚した人間が、今まで自分が抱いてもいなかったほかの民族に対する憎しみをつのらせ、武器を執って次々と紛争に走った。
紛争とは、ボクシングやレスリングのような素手による殴り合いではない。アメリカ・イギリス.フランスの部隊がイラク全土を攻撃した九一年の湾岸戦争では、戦闘機と爆撃機が住民を襲い、あらゆる兵器が見本市の様相を呈して、砲弾とミサイルが飛び交った。
ユーゴスラビアで起こった殺し合いは、初めは拳銃とライフルからはじまったのだが、ついには九九年三月に、NATO(北大西洋条約機構)軍による一方的な爆撃開始という凄惨な戦争へと導かれ、大量の巡航ミサイルが夜空を焼き焦がした。
二〇〇〇年九月二八日には、イスラエルで右派リクードのアリエル・シャロン党首が東エルサレム旧市街のイスラム聖地「神殿の丘」を強行訪問して挑発し、パレスチナ人の怒りが爆発した。イスラエル治安部隊がこのパレスチナ人に発砲して激しい対立が再燃し、中東和平が崩壊した。以後一ヶ月で死者一二六人を出し、そこに数々のアメリカ製の兵器が使用された。翌二〇〇一年三月に首相となったシャロンは元国防大臣で、兵器商マーカス・カッツをスポンサーとする国際武器取引きの黒幕であった。八二年にはホワイトハウスのイラン・コントラ武器密輸事件の裏で糸を引き、世界最大の兵器商アドナン・カショーギの一派として立ち働いた。
シャロンの聖地訪問は、パレスチナ人にとっては侮辱以上に、生活の終りを意味した。エルサレム旧市街は、『アリババと四〇人の盗賊』を連想させる愉快な町で、アラブ人の活気あるバザールがにぎわい、一帯は人びとの住宅地である。昔の城壁の内部が迷路のように入り組み、真夏でも冷たい空気に包まれ、心地よい石造りの居住地だ。子供たちが遊び、旅行客を楽しませてきた。そのエルサレムにイスラエルが侵入し、大昔の「嘆きの壁」をユダヤ人の聖地と主張して、アラブ人を次々と暴力で追い出した。それに追い打ちをかけるシャロンの行為は、「パレスチナ人はここには住んではならない」という宣言であった。国連の人権高等弁務官メアリー・ロビンソンが、「イスラエル占領地で深刻な人権侵害がおこなわれ、イスラエルが入植地を拡大している。これは理解できない。パレスチナ人は毎日のように辱められ、もはや我慢できない状態になっている」と、記者会見でイスラエルを激しく非難したが、その通りであった。彼女は、民間人に多数の死傷者を出したNATOのユーゴ攻撃も批判してきた。
エルサレム問題の本質は、宗教ではない。はるか昔から、エルサレムはイスラム教徒とキリスト教徒とユダヤ教徒が混在した町である。第二次世界大戦後のヨーロッパ人とアメリカ人が、自分たちの犯した非道なユダヤ人迫害という罪の代償として、無責任にもアラブ人の居住区を新しいユダヤ人の国と決めたため、アラブ人が道理もなく追い出されたことが紛争の発端であった。
シャロンによる紛争からほぽ一ヶ月後の一一月六日、現地エルサレムの新聞は、アメリカのロッキード・マーティンがイスラエルの軍需産業数社と二億ドルの取引きに署名したと報じた。イスラエル空軍がロッキード・マーティンのF16ジェット戦闘機を購入した見返りの投資であった。「ロッキードのジェットにイスラエルの技術が組み込まれることは、全世界にとって価値あることだ。イスラエル空軍がF16の購入機数を増やせば、投資額は一五億ドルに増える可能性がある。わが社は、多年にわたって、イスラエル防衛産業の主要な戦略パートナーとしてやってきた」との談話を、ロッキード・マーティンは発表した。
中東の紛争は泥沼に引き戻され、イスラエル人は無防備のパレスチナ人に向かって銃を発射し続けた。紛争の渦中に、"世界最大の軍需産業"ロッキード・マーティンは、なぜイスラエルの軍需産業数社に対して、莫大な資金援助の契約に署名したのか。ピストルやライフル、マシーンガン、カービン銃、肩にかついで発射できるミサイルなど、こうした殺傷能力のある武器は、どこから紛争の現地に供給されてきたのか。
コルト・インダストリーズという会社は、「コルト45」という六連発の拳銃が活躍した大昔のハリウッド西部劇の世界で、人びとの記憶に懐かしく思い出される。ウィンチェスター銃やアンドレミントン銃も同様である。スミス&ウェッソンは、ハードボイルド小説にしばしば登場するので、かなりの人に知られている。ところがアメリカのアライアント・テクシステムズという会社は、ほとんど名前を知られていない。
これら小火器メーカーが拳銃とライフルを製造し、危険物を戦場に送り込んできた。それを裏で仲介していると批判を受けた全米ライフル協会は、銃砲の規制で苦しい立場に追い込まれると、「銃は他人を殺傷するためのものではない。銃は暴力から身を守るためにある」という正義のための護身論を前面に打ち出し、4Hクラブ(農村青少年の活動組織)やボーイスカウトを利用しながら、日常的な射撃訓練やコンテストを若者に対しておこない、一方では銃砲と弾薬を全世界の紛争地に広めたのだ。
しかし一体誰がそのビジネスを、具体的に実行したのか。闇の男たちを想像すると、テロリストやガンマニアや麻薬の売人連中だと憶測するのが、普通である。とんでもないことだ。
(中略)
しかし彼は、聡明で一徹な軍人であっただけなのか。銃器を氾濫させるコルト・インダストリーズの重役名簿に残っている、元将軍マシュー・リッジウェイの名前を歴史から消すことはできない。GHQ総司令官退任後の五一年から五五年まで、レミントン銃を製造するレミントン・ランド会長であったダグラス・マッカーサーの名前を消すことができないように。
ペンタゴンは、銃砲からミサイル、軍艦、戦闘機に至るまで、武器と兵器の国内製造を推進しながら、同時にそれを紛争地に送りこむマシーンとして機能する巨大組織である。その資金を受けるのが、全米の上院議員と下院議員とホワイトハウス要人たちである。
世界には難民があふれている。原因は地域紛争にある。そこには、洪水のように銃砲と弾丸が供給されてきた。どこからか。アメリカとヨーロッパの先進国からである。うちひしがれた難民に対する人道支援をおこなう輸送機も、同じ軍需メーカーの製品だ。おそろしいメカニズムと言わなければならない。アフリカなどの紛争国には、弾薬を量産する能力はない。民族問題を論ずる前に、なぜ、紛争の現地で使われた兵器と武器のブランド名を、先に見ないのか。国連はなぜ一度もそれを議論しないのか。以下は、戦争の道具が、アメリカの軍需産業によってどのように巧みに普及されてきたかを、世界的な事実に基づいて解析した報告である。
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