投稿者 asahi 日時 2001 年 9 月 14 日 11:07:32:
核密約の背景も記録 佐藤政権秘書官が「日記」を出版
佐藤栄作首相時代に開かれた日米首脳会談の日本側公式議事録が、9月下旬に出版さ
れる元首席秘書官、楠田實氏の日記で明らかになった。核兵器開発を進める中国を意識
しながら、佐藤首相が「核抜き・本土並み」の沖縄返還にこぎつける様子が描かれてい
る。一方でマクナマラ国防長官の「核、琉球、安保体制は相関関係にある」といった発
言など、「核再持ち込み密約」の背景となる状況も記録されている。
佐藤栄作元首相の秘書官の日記が刊行され、沖縄返還交渉をめぐる日米会談の日本側
公式議事録が収録されることがわかった。「楠田實日記−−佐藤栄作総理首席秘書官の
二〇〇〇日」(編者・五百旗頭真神戸大教授ら、中央公論新社)。(1)2、3年以内
に沖縄返還の時期を決める線を固めた67年の佐藤・ジョンソン大統領会談(2回)、
佐藤・マクナマラ国防長官会談(2)「72年沖縄返還」に合意した69年の佐藤・ニ
クソン大統領会談(3回)、佐藤・ロジャーズ国務長官会談などが収められている。
楠田氏(76)は67年3月から佐藤政権退陣の72年7月まで首相秘書官を務め、
秘書官生活を大学ノート40冊に記した。
核開発を進める中国の動きを背景に、佐藤首相は米国に核抑止力の傘をさしかけてほ
しいと要請。それに対し、米国側が核には核で対抗する必要があり、日本を守るために
は沖縄への核持ち込みが必要になるかもしれないという趣旨を伝えていた。こうしたや
りとりが日本側の公式議事録で初めて明らかになった。
例えば、ジョンソン大統領との67年首脳会談記録−−。
首相「前回訪米の際、いかなる攻撃に対しても日本を守ると約束された。その後中共
(中華人民共和国)が核開発を進めていることに鑑(かんが)み、これが日本に対する
核攻撃にも適用されることを期待したい」
大統領「われわれの間には、すでにコミットメントがある」
マクナマラ国防長官との会談では−−。
首相「自分は核を持たないとはっきり決心している。米国の核の傘の下で安全を確保
する」
国防長官「中共の核脅威への対処など一連の問題の書かれざる前提は、保護する側の
必要な行動を可能にすることである。究極的には核兵器使用すら考えられる。(沖縄へ
の)核持ち込みや作戦行動の自由を許すのが困難なのは知っているが、自分の安全保障
のためだと納得すれば合意できよう。核、琉球、安保体制は相関関係にある」
日本への核持ち込みをめぐっては、若泉敬・元京都産業大学教授(故人)が、首相密
使としてニクソン政権のキッシンジャー大統領補佐官と「緊急時の核再持ち込み密約」
を交渉していたことを著書で明らかにした経緯がある。今回、楠田日記に収録されるニ
クソン大統領との69年会談議事録にはその内容は直接登場しないが、水面下の動きを
暗示する会話は多い。
大統領「施政権返還後の緊急事態の沖縄基地使用をどういう手続きでやるかが一番問
題。上院軍事委にどう説明するか頭が痛い」
首相「共同声明の上で、重大な事態の際に沖縄の米軍基地の機能を損なわないとする
ことは非常に難しい問題だ」
◇
楠田實氏の話
情報公開にも限度がある。関連資料の公刊は何もかもとはいかなかった。佐藤首相の
個人特使だった故若泉氏も著書「他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス」で核密約を公にした
が、書きたいという政治的な責任感と守秘の気持ちのはざまで悩んでいた。(07:58)
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