毎日がインデペンデンス・デイ!(別冊宝島356『実録!サイコさんからの手紙』)

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投稿者 SP' 日時 2001 年 7 月 27 日 16:19:18:

回答先: 「オレが透視した敵潜水艦、誘拐犯。そして臨死体験」(『ボーダーランド』96年6月創刊号) 投稿者 SP' 日時 2001 年 7 月 27 日 16:17:46:

宇宙人の死体を見た! 発信器を埋め込まれた! CIAに手を回された!
末端の記者が翻弄された、「選民」たちからの押し売り地獄!
高邑秋人(フリーライター)

 高橋純一さん(仮名・35)は、UFO・宇宙人をメインに超常現象を扱うオカルト雑誌の編集者。じつは、当の雑誌がつい最近休刊になってしまったので、正確にいえば元編集者だ。編集部にこれはと思えるネタが舞い込めば、どんな相手であれ取材に赴く、編集部内指折りの生真面目な記者でもあった。
 ところでこのオカルト雑誌、創刊当初から超常現象を科学的に捉えることが、一応の編集方針になっていたから、上司がとにかく裏付けを取りたがる。「これはイケルかもしれない」とネタを持っていっても、「ウラ取れてんのか」とか「とにかく実証を試みなきゃ、話になんないじゃないか」というのがその人の口癖だったとか。
 これから紹介する高橋さんの話は、実証性にこだわる取材過程で起きた、オカルトな人々との格闘の記録である。登場する人物の名前や地名は、できるかぎり特定できないように変えてあるが、これは高橋さんの身を気づかっての措置でもある。高橋さん、「また付きまとわれるのでは……」と、今でもかつての“関係者”に怯えているのだ。

我こそは、地球の救世主

 私自身は、宇宙人やUFOに特別興味があったわけじゃないんです。あの雑誌に関わるまでは、地味な業界誌の編集を長い間やってたんですが、業界自体がずっと構造不況のどん底状態だったので、その末端にある業界誌の予算もシブイ。思うような取材もままならないし、そんな状態が長く続いていたから、きっとフラストレーションが溜まってたんでしょう。
 そんなときに、たまたま新聞の人材募集欄で「科学雑誌、ギャンブル雑誌編集者募集」の広告を見つけたんです。科学雑誌とギャンブル雑誌の編集者をいっしょに募集するというのがなんか妙だなとは思ったけど、まあ履歴書ぐらい送ってみるかと。「科学」の二文字があったから、これはずっと続けられるまともな仕事かもしれないと思って。それで幸か不幸か採用されてしまったんです。
 雑誌はまだこれから創刊されるということで、内容のことはよく分かりませんでした。ところが、蓋を開けてみると、科学といっても「超」がつくほうで、超常現象を科学するっていう雑誌だったんです。創刊号がUFO特集で、第二号がコンタクティー(宇宙人と遭遇した人)の特集ですからね。しまった……と思いましたよ、ええ。
 もちろん、この手の雑誌には、老舗の『ムー』とか他にも何誌かあるんですけど、UFOや宇宙人を大々的に取り上げる雑誌が新しく創刊されたわけですから、オウム事件の影響で抑圧されてきたUFOウォッチャーや、どの雑誌の編集部からも相手にされなくなった読者が、編集部に有象無象のネタを持ち込んでくることになった。宇宙人からメッセージを受け取ったとか、神様とか天使とかが天井に見えるとか。
 彼らは、簡単には引き下がらないんです。ネタまで持ち込もうというくらいの人たちですから。「私は宇宙人からメッセージを受け取っているので、地球を救う使命があるんだ」とか言うわけです。それでも適当に受け流していたりすると、今度は雑誌そのものをけなしたり、「私の話を取り上げないと、あなたたちは人間的にダメだ」って、こっちの人間性まで否定してくるんですから。まるで脅迫なんですよ。

ヤバそうな神棚

 コレ、ちょっと複雑な話なんですけど、千葉県の海沿いの町に住む、三島由紀夫と霊界交信していて、三島がUFOに乗って霊界を支配してるって主張する六十過ぎの霊能師のオバサンがいたんです。このオバサン、あっちの世界ではけっこう有名なんですが、あまりにもしつこいからいろんな出版社から相手にされなくなって、それでこっちにお鉢が回ってきたんです。「私は以前から夢で見てて、この雑誌に書くことになっていたんだ」って。最初は相手にしませんでしたよ、明らかにヘンなんですから。でも、あまりに何度も名指しで電話がかかってくるので居留守を使っていたら、電話を受けた他の編集者を怖がらせたりするんです。声色を使った低い声で、地を這うようなっていうか、本当に薄気味の悪い声で「本当はそこにいるんだろ〜う」って。
 それで仕方なく、毎回電話に出るようになったんですけど、このオバサン、たまにはこっちが関心を持つような具体的なネタを持ち込まないと結局は相手にされなくなると思ったのか、「静岡で医長代理をやっている脳神経外科の医者がいてね、その人がアメリカのNASAで宇宙人の死体を見てきたから紹介するよ」と言うんです。
 もちろん、オバサンとしては、医者も紹介するけど自分の話も載っけてもらうつもりなんだけど、医者のネタは宇宙人モノでしかもNASAがらみ。当然、話は科学的に展開させられるし、編集方針にもピッタリだから、上司に相談したら「まず、医者が本物かどうかウラ取れ」って言うわけです。もちろんウラ取ろうとしましたよ。管轄の保健所や医師会に電話したりして。
 結局決定的な証拠はなかったんですが、本人が医者の証明書を持ってくるということで取材してみることにしたわけです。上司はどちらかというと止めにかかってたみたいですけど、乗りかかった船だし、ちょうどネタがなかったという条件も重なって、紹介してくれるというオバサンの家で会うことになった。
 オバサンの意図は充分分かってましたから、オバサンはコメンテーターとしてちょっと出てもらうくらいにしようと思っていました。交渉しだいで、その医者の話だけ載せるってこともできるかなって。実証性が雑誌の方針だし、霊能師がUFOを語るのは胡散臭いじゃないですか。ネタの紹介者が胡散臭いと、記事までインチキ臭くなっちゃいますからね。だって、オバサンが医者に出会った経緯っていうのが、「夜、海岸でUFOに追いかけられているところを車で来たその医者に助けられた」って言うんですよ。
 それでカメラマンと一緒にオバサンの家に行ったんです。「丘の上にあるけど駅の近くの米屋に聞けば教えてくれるから」って聞いてたので、米屋を見つけて尋ねたけど、「知らない」って言う。オバサンは米屋を知ってるから米屋も自分を知ってるって思い込んでるわけです。それでしょうがないから携帯でオバサンに電話したら、「あんた、ちゃんと米屋に聞かなきゃだめじゃない」って怒られた。そういう人なんです。
 それで道順は分かったんだけど、丘の上までの坂道の途中に、子どもを抱いた女の人とか若い男がところどころに立っていて、どうもこっちを監視してるみたいなんです。近所の人という感じじゃまったくなくて、カメラマンも気味悪がって顔色変わってました。後から思ったんですが、雑誌の取材が本当に来るのかどうか疑っていたみたい。不安なんでオバサン、自分の信者を手配してたみたいで。
 オバサンの家に行って分かったのは、どうも宗教団体みたいなことをしてるらしいということ。家に着くなり、「あなたが来るのは、初めから分かってました」なんて言われたから、「はぁ〜」って答えるしかなかったけど。アポとって来てるわけだし、さっきも電話してるんだから、当たり前じゃないかって。
 家の中は、カーテンが引かれていて昼でも薄暗い感じでした。テーブルの上に小さな神棚のようなものがあって、そこに「お参りして」と言われたのでうやうやしく手を合わせて頭を下げようとしたら、神棚の中にウルトラマンの人形が置いてある。「これはヤバイな」って思いましたよ。オバサンに遠慮してもらう交渉なんてとんでもないなって……。

「宇宙人」の証拠

 その後、オバサンの家に来ていた静岡の医者から、NASAで見たという宇宙人の死体の話を聞きました。証拠を持ってくるように頼んでおいたので、医者だという証拠も含めていくつか持ってきたんですが、どうも怪しい。NASAの入館証もタイプで打ったような手書きの感じで、医大からもらったという賞状にいたっては誤字があったりして、誌面に出したくないからという理由で、自分で墨塗りしてる箇所もあって、ちょっと病的な感じすらする。
 まあ、いい方に解釈するとあまりの機密情報を持っているがために取材に対して慎重になっているというか、肝心なことをわざとごまかしているとも取れなくもなかったですが……。
 宇宙人の死体写真も見せてもらったんですが、どう見ても、『エレファントマン』か何かのスチール写真のコピーなんです。雑誌の方針は実証性ですから、もっと証拠が欲しいって言ったら、本人渋ってましたが、それを後日送ってくれることになって、取材を切り上げました。
 妙なのは宇宙船の部品です。NASAで死体を見たときにかすめてきたというんですが、届いたものを見ると、金魚すくいの枠にコイルを巻きつけたようなもので、非常に雑なものなんです、いかにも手で巻いたという感じの。だいいち、NASAがそんな杜撰な管理してるわけないじゃないですか。直に触れると生体エネルギーが乱れるからって、B5判のパウチッコに入ってましたけどね。
 結局、ページが埋まらなかったんで、この記事は掲載しちゃったんですけど、医者とトラブルになるようなことはありませんでしたよ。でも、掲載後に女性の読者から電話がかかってきたんです。「以前この医者に妊娠させられて、あれは遊びだったと言われ捨てられた」とかで、「今どこにいるか教えてほしい」ってね。もちろん守秘義務がありますから教えませんでしたけど。その読者は普通の感じの人でしたから、あの医者、なんかやったんですね。
 でも、問題はオバサン。紹介した医者の記事だけ載せて、オバサンのほうは載せないってことになると結果は目に見えてますからね。ヤバイなと思ってたんです。ところが絶妙のタイミングで、医者とオバサンがケンカしてくれた。オバサン、あちこちの出版社に電話して、「その医者と婚約して家まで買った」ってふれまわったらしい。嘘か妄想でしょうけど。それを聞いた医者が怒ってケンカになったんです。この医者、院長の娘と婚約してるとかで、急に俗っぽくなっちゃったみたいで。
 まあ、医者もオバサンもUFO・宇宙人を信じてるのは同じだけど、どちらかというとオバサンは宇宙人が地球人を高次元に導いてくれる「宇宙人いい人派」で、医者は宇宙人が地球を乗っ取るっていう「宇宙人謀略派」ですから、いつかはケンカになったでしょうけど。とにかくそんなことでケンカ別れしてくれたんで、結果的に医者の記事だけ載せる理由ができた。でも、後は予想したとおり、電話攻撃の再開でした、薄気味悪い声の。

押し売り同然の「相談事」

 電話だけじゃなくて、編集部にわざわざ乗り込んでくる人もいましたね。もちろんアポなしで。初老の夫婦でしたけど、ダンナのほうはクレージーキャッツの犬塚弘みたいな感じで、奥さんのほうは草笛光子をもうちょっと歳取らせたふう。ダンナのあとをうつむき加減でついてくる糟糠の妻という感じでした。「ご相談したい」って真面目な顔して入ってきて、二人とも憔悴しきった感じでしたから、とりあえず応接間に通して話を聞いたんですが、「最近頭の中でヘンな声が聞こえて、私を殺そうとするんです」って言う。横断歩道で信号待ちしてたりビルの屋上にいると「飛び込め」とか「飛び降りろ」という声が聞こえるって。
 けっこうこの手のネタの持ち込みは多かったんですが、どう見ても科学的じゃないからおおむねボツなんです。そこで「雑誌の編集者に相談するよりは、しかるべき医療機関やカウンセラーにご相談されたほうが」って勧めたんですが、もちろんそんなことでは引き下がらない。「いや、じつはからだが一メートルも飛び上がるんです」って言い出したんです。しょうがないんで、隣で伏し目がちに座っている奥さんに「見たことあるんですか?」って聞いたら「はい、私も怖くって」って、口裏を合わせているならこれほど達者な役者はいないぐらい、心配そうに言うわけですよ。
 じゃあ、いったいどういう状態なのかって聞いてみると、急にダンナのほうが椅子の上でからだを上下運動させて飛び上がるんです。よく見ると、ちゃんと肘掛けに手をついて腰を浮かしてる。あきれて「なんだこりゃ〜」って顔で見ていたら、こっちの反応に気づいたらしく、それまで精神世界や宗教には関心がないって言ってたのに、急に口調を変えて、マホメットが乗り移ったりブッダが乗り移ったりで。挙げ句の果てには「汝は〜」って急に文語調になって、「これはウソではない!」って自分から言うんです(笑)。
 もう、いい加減勘弁して帰ってもらおうと思っていたら、ダンナの口調が元に戻って、「いや、ほかにも私たちと同じ苦しみで悩んでいる人がいると思うんです。私はそんな人たちに、私の体験を伝えたいんです」って。結局は相談なんかじゃなくて、自分のことを雑誌に載せろっていう売り込みなんです。こういう人たちって、けっこう何人も来たけど、「証拠を見せろ」って言っても決してめげませんでしたね。形勢が不利となると、「あんた、そんな理屈言ってる場合じゃないでしょ。地球が滅ぶんですよ、地球が」ですから。この世界は自己申告の世界だから、言いたい放題なんです。

お巡りに通報されて

 UFO・宇宙人モノには、宇宙人いい人派と謀略派の二種類があると言いましたが、宇宙人謀略話のなかに「インプラント」モノっていうのがあるんです。歯の根幹治療に関連したインプラントという用語とほぼ同義だと思うんですが、アメリカや中南米には、UFOや宇宙人にまつわるインプラント話ってけっこう多いんです。「自分のからだに宇宙人の手で発信器を埋め込まれた」って自己申告する人たちの話。そう言って、宇宙人による地球人家畜化計画を頑なに信じてる人たちが大勢いるんです。
 インプラントされたっていう人が何人か編集部に来ましたが、神奈川県の平塚にUFOや宇宙人に関心のある医者がいて、宇宙人にインプラントされたという人が来たら、その医者に連れていったり紹介するようにしてたんです。こういう医者って、きちんと診て医学的に判断してくれますから貴重なんです。もちろん「なんでもない」と診断されても、「あれはヤブ医者だ」ってけなす人が多かったですけどね。
 あるとき、愛知県に住む二十歳過ぎの女性が、「じつは私の口の中にも穴が二つあって、何かを埋め込まれたらしい」って編集部に写真を送ってきた。写真を見ると、たしかに歯茎の根本と喉チンコのあたりに小さな穴のようなものが見える。電話で本人に聞いてみると、「ある日突然できていて……」ってすごく怖がってるんです。そこで取材のために本人に会いに行ったわけです。いつもだったら平塚の医者に連れてくところですが、運悪く締め切りギリギリのときで、見切り発車でカメラマンも連れて、現地まで行っちゃったわけです。
 見せてもらったら、たしかに口の中に二カ所穴があいてるんで、上司に電話して経過報告しました、「たしかにある」って。ところが実証性にうるさい上司ですから、「そんなんじゃ話にならん。とにかく、近くの医者でもいいから、連れていって診せろ」って言う。仕方ないんで、駅前にあった開業医のところにその女性を連れていった。そこで、受付の看護婦さんに「どうもこの女性が宇宙人に何か埋め込まれたみたいなんですが、先生に診てもらいたい」って頼んだんです。それを聞いた看護婦さんは、「ちょっと院長に相談してきますから、待っててください」って奥に引っ込んじゃった。
 ところが、待合い室で待ってたら、いきなり玄関からお巡りが二、三人駆け込んでくるじゃないですか。医者がいきなり警察呼んだんですよ、危なそうなヤツらがいるからって。医者と口論になりましたが、結局パトカーに乗せられて、彼女とカメラマンと一緒に警察署で事情聴取されました。
 彼女は、まわりの人に穴の話をすると変な目で見られるからって、藁にもすがりたい気持で編集部に相談してきたのに、診察ぐらいしてくれたっていいと思うんですけどね。「何も埋め込まれてません」って言ってくれれば、こっちのネタにはならなくても、彼女は安心するんですから。まあ、普通の医者に診てもらおうとした私たちも、ちょっと無謀だったかもしれませんけど。

オウム逃走犯を追え!

 UFOや宇宙人のネタを追ってると、アメリカで取材することもけっこうありました。アメリカには、日本では想像できないんですけど、超能力や超常現象を大まじめに研究している科学者がけっこういる。政府もかつて予算をつぎこんでいたくらい。
 リモートビューイングを研究している機関があって、一度、取材に行ったことがあるんです。リモートビューイングっていうのは、失踪した人や逃亡中の犯人がどこにいるかを捜しあてる「遠隔透視」のことです。
 その頃、CIAが過去二十五年間にわたって行なってきたリモートビューイングの予算が削られるという記事が『朝日新聞』に出たり、『ニューズウィーク』にもリモートビューアーが登場したので、かたいネタに違いないということで。アポとって会いに行ったんです、現役のリモートビューアーに。
 インタビューが中心の取材だったんですが、ちょうどその頃は、オウムの逃走犯が話題になっていたので、林泰男と菊池直子の手配写真を日本から持っていって、二人のリモートビューイングをダメモトで頼んでみたんです。そしたら、二日後にオーケーが出た。
 それから、帰国して一カ月ぐらい経った頃にレポートが届いたんです。詳細な指示と地図四枚。さっそく翻訳したら、地図の地形がどうも近畿地方の地形によく似てる。よく見てみると、大阪の堺市あたりなんです。さっそく大阪のカメラマンを手配して、ライターと一緒に行きましたよ。
 現地に行って、指示にあった「水」「市場」「緑色」「一日二回食事を出すところ」といった潜伏場所の条件に照らし合わせていろいろ地図を辿っていくと、港の近くにある大きな倉庫がどうも怪しい。
 ええ、行きましたよ、その倉庫を所有する会社がすぐ近くにあったんです。総務担当者が面会に応じてくれることになって、通された応接室で、出てきた総務課長に真剣な顔でこう切り出したんです。「じつは、あなたの倉庫にオウムの犯人が隠れている可能性がある」って。そうしたら、課長さんみるみる顔が険しくなって。ええ、剣もホロロですよ。まあ、今考えれば、いきなりどこの馬の骨かも分からない人間に、お前のところにオウムの犯人がいるって言われれば、怒るのも無理ないですけどね。
 でも、こっちだって優秀なリモートビューアーが出したデータの裏付けに大阪まで来たわけですから、このままおめおめ東京に帰るわけにはいかない。なら、とりあえず所轄の警察署にでも行ってみるか、ということで堺北署に行ったんです。だって、もし万が一、あの倉庫に林か菊池がいたら、とんでもないスクープですから。誌面構成まで考えちゃいましたよ。
 受付で副署長を呼んでもらうと、最初は面倒臭そうな顔してましたけど、「じつはオウムが」と言ったとたん、「ちょっとこっちへ来て」って奥に通されました。そこで、「アメリカのちゃんとしたリモートビューアーが、かなりの高い確率でオウムの逃走犯の居所をつかんだんです」と説明したんだけど、よく理解できないらしい。「どういうことをする人なの」と聞かれたんで、「じつは遠隔透視を」って言ったら副署長いきなりのけぞってましたけど、地図を見せたらバカヤローって顔しながらも、わきでメモとってましたよ。
 じつは余談ですが、大阪取材に行く当日の朝、とんでもないことがあったんです。電車に乗っていたら急激な腹痛に襲われて、意識も朦朧としてきたので改札の駅員に救急車を頼んだんです。腹痛に襲われた瞬間から頭の中をよぎったのがVXガス。超常系のライターから「そんな取材したらヤバイことになる」って脅かされてましたから、あのときは本当に「やられた!」って思いましたね。結局、立ち食いソバの玉子がいけなかったみたいで、担ぎ込まれた病院で大便したら、すっきりしちゃったんですけど(笑)。アメリカで会ったリモートビューアーがCIAにも関係してたから、ライターのなかには、「最初からすべてCIAが仕組んだことなんですよ」なんて真顔で言うヤツもいましたけどね。

悲しき「選民意識」

 オウムのVXガスに本気で怯えたことや、ライターがCIAの陰謀説を唱えていたことなんかを考えると、自分たちも超常現象の世界に、少しは染まってたのかなって思います。気持的には、実証主義と職業意識が前面に出ているから、超常現象の世界やヘンな人たちを冷静に見てたつもりなんだけど、よくよく考えてみると、やっぱり一員だったのかなって。仲のいい友達なんかも、マジで「お前、なんでそんな仕事してんの?」って訝しがってましたからね。
 結局、普通の人たちから見たら、我々も仲間なんです。開業医だって、倉庫の総務課長だって、警察だって、こっちは裏付けを求めて取材してるんだっていくら説明しても、同類としか見ないんですから。オカルト雑誌編集者の運命なんですね、これは。
 雑誌をやって少しでも超常現象の世界を科学的に解明できたかと聞かれると、ちょっと困っちゃいます。でも、この仕事をやってみて、あの世界の住人たちのことが少しは分かった気がしますね。彼らは、多くの人が親子関係なんかの家庭の問題を抱えているんですよ、きっと。子どもの頃から、「自分は親に認められていない」「自分は愛されていない」という気持を持ち続けていて、それを大人になるまでずっと引きずっているうちに、ポ〜ンってこの世界に入ってしまう。そのキッカケというのが、要するに「選民意識」なんです。
 UFOや宇宙人からメッセージを受け取ったって主張する人は、だいたい選民意識が強いですね。不思議と、霊を見たという人はあまり選民意識がないのに、その霊にUFOや宇宙人がくっついたりすると、たちどころに選民意識が芽生える。「人間を超えた科学を自分は知ってるんだ。自分を理解しない、認めないのは相手がバカで、自分がはるかに高いところにいるからだ」って。選民になることで、子どもの頃から引きずってきたもやもやから逃げられるんですね。
 でも、あの世界の人たちって、本当は純粋で、みんないい人ばかりなんですよ。コンプレックスを引きずっているぐらいだから、根は内気でおとなしいんです。ところが、そんな善良な人たちが、選民意識を持つと豹変してしまう。おそらく、そういうことなんです。
『インデペンデンス・デイ』の中で、UFOが最初に地上攻撃をかけてくるとき、UFO・宇宙人ウォッチャーたちが「ウエルカム」なんていうプラカードを掲げて歓喜しながら歓迎するシーンがあるんです。ところがあれ、あっけなくUFOのビーム弾でやられちゃって、地球で最初の犠牲者になってしまう。あのシーンは、UFO・宇宙人ウォッチャーを喜劇的に取り上げて、観客も笑うわけですよ、「バカなヤツらだ」って。
 あれを見たとき、笑えなかったんです。「悲しいなぁー」っていう気持です。「根は、いい人たちなのに」って。たしかに、いい人っていうのは、簡単に殺されちゃうくらい弱いんでしょうけど。


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