投稿者 長兵衛 日時 2001 年 9 月 04 日 06:08:15:
行政機関の個人情報保護法制を検討してきた政府の研究会の事務局素案が3日、公表された。現行の行政機関個人情報保護法(88年制定)の全面改正に向けた考え方を示したもの。しかし、今年3月閣議決定した個人情報保護法案との比較や電子政府化に伴って急務とされる公的部門の保護強化の観点から素案を検証すると、「官に甘く民に厳しい」姿勢が浮かび上がってくる。これを受けた研究会の最終報告は今月下旬に公表される。
【臺宏士】
素案をまとめたのは、総務省政務官の諮問機関「行政機関等個人情報保護法制研究会」(座長=茂串俊・元内閣法制局長官)の事務局。個人情報保護法案で、公的部門については「この法律の公布後一年を目途として、法制上の措置を講ずる」(附則7条)と盛り込まれたことから設置された。
現行の行政機関個人情報保護法は、成立時から▽対象が、手書きなどのマニュアル情報を除く電算処理情報に限定▽人種や政治的思想・信条など保護の重要度が高い「センシティブ情報」の収集制限がない▽医療、教育、刑事記録情報などが開示請求の対象外▽自己情報コントロール権が不十分▽特殊法人、国会、裁判所が対象外――などの問題点があった。
このため国会が「5年後の見直し」を政府に求めたが、先送りされてきた。日本新聞協会も、個人情報保護法案の策定過程で「公的部門の個人情報保護は、民間部門に先立って強化すべきだ」と主張してきた。
素案によると、保護対象の行政文書にマニュアル情報も加えた。7月に研究会のそれまでの議論をまとめた中間整理では、「一定の事務を達成するため体系的に構成されたもの」
との限定付きで「引き続き検討する」としたが、その後国民から寄せられた意見などを踏まえ、メモとして記述された個人情報などを含めすべての行政文書を対象とした。情報公開法
(今年4月施行)とほぼ同じ範囲だ。
課題だった診療カルテなど医療情報や指導要録など教育分野の個人情報も、開示請求の対象とした。ただし、生存する個人に限ったため、医療過誤訴訟などで問題となる死亡患者の遺族による開示請求は退けられている。
一方、「指紋ファイル」や「前科ファイル」などの刑事記録は、引き続き対象外とされた。研究会のヒアリングに対し、法務省が「本人が開示請求できる対象となると、就職や結婚の際、関係者が本人に『前科を証明せよ』と要求することになる。除外してほしい」などと主張したためだ。
しかし、捜査など刑事関係の個人情報はさまざまだ。高速道路や幹線道路には「Nシステム」と呼ばれる機器が設置され、車両番号や運転者らの顔を撮影している。また、警察は緊急時の連絡先や勤務先など各家庭の個人情報を常時収集している。こうした刑の執行とは密接な関係のない“外延情報”の取り扱いについて言及はなく、最終報告までの議論が注目される。ある委員は「研究会には刑事法の専門家が少ないため、法務省に強く言える委員は少ない」と事情を明かす。
個人情報保護法案と最も異なる点の一つは、不正な手段での収集制限やそれに対する罰則を行政機関に課さない方向となっていることだ。「行政機関の行為は当然適法かつ適正に行われる。個々の職員の違法性は国家公務員法などで担保されている」(中間整理)との理由だ。センシティブ情報の収集制限規定も置かれない見通しだ。また、本人が行政に対して自分の情報を利用しないよう停止(削除)を求める権利についてはなお言及していない。条例でセンシティブ情報に関する収集制限や利用の停止請求ができる規定を置いている多くの地方自治体より後退する可能性が強い。
本人の訂正請求は、現行法では「申し出る」との表現だが、「できる」と“格上げ”した。しかし、訂正できる対象は「開示された個人情報」に限るため、訴訟記録など他の方法で知った場合の採り扱いについてはまだ結論が出ていない。罰則が明記されていないことについて、日本弁護士連合会は「国家機関の無謬性を大前提としている。公務員が不正なことを行わない保障はどこにもない」と批判している。
第三者による不服申し立て制度は、情報公開法と同様に創設する。しかし、そこでも解決できず、訴訟に持ち込まれる場合の裁判管轄規定が不明確だ。個人情報を保有する省庁の所在地に限られれば、官庁が集中する東京高裁までいちいち足を運ばなくてはならない。情報公開法では、原告が所在する地域の高裁で訴訟を起こせる特例措置がある。この点は、司法制度改革論議にゆだねるという。
特殊法人、独立行政法人、認可法人は行政機関に準じた法整備を図ることにした。しかし、個人情報保護法案を制定する直接のきっかけとなった住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)の個人情報は、保有主体が総務省の外郭団体である地方自治情報センター(東京都千代田区)。同センターは公益法人なので規制は及ばず、民間事業者と同じ扱いに過ぎない。
【行政機関等個人情報保護法制研究会委員】
コメント:元・現職警官からの情報漏洩事件(あるいは国公立病院からの医療データの漏洩)に見るがごとく、「国家機関」や「公務員」は全然無謬ではない。
また、刑事記録を「本人にすらも開示しない」のは某前首相を守ることが目的ですか?>行政機関等個人情報保護法制研究会委員の諸君
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