投稿者 sankei 日時 2001 年 6 月 21 日 16:21:34:
“特権”を満喫 続々引っ越し 在露日本大使館員 破格の住宅手当
平均家賃3000円 20代独身で47万円
在ロシア日本大使館員の一部が住むモスクワの豪華マンション「パーク・プレー
ス」のエントランス部分
二十代前半の住居手当約五十八万円、熟年経験者なら八十万−百二十万
円。半年勤務で二週間の休暇、一年半勤務すれば長期休暇二カ月。勤務地は
モスクワ…。超優良企業の募集広告ではない。在ロシア日本大使館員の「特
権」の上限規定だ。昨年四月、住居手当が一律60%も跳ね上がり、モスクワの
日本人外交官の六割以上が新居へ移った。ロシアでは著名な科学者でさえ月
給三万円以下、平均的住宅費は約三千円という現実の中での優雅な生活で
ある。(モスクワ 斎藤勉)
日本の外務省はロシアをソ連時代から「特勤」地区、つまり「生活不便地域」
に指定し、他の現・旧共産主義諸国やアフリカ諸国などと並び、大使館員に支
給する「在勤俸」や諸手当を割り増ししている。ソ連崩壊十年。世界は大きく変
わり、モスクワの住宅市場も自由化されたが、大使館員の「特権」は冷戦時代
さながらに生き続け、むしろ拡大した。
その住宅手当(ドル建て)の上限は別表の通りだ。独身者は20%引きになる
が、最も若い独身外交官(同大使館では二十四歳)でさえ上限は約四十七万
円。現在、日本大使館には借り上げの公邸に住む丹波実大使、河東哲夫公使
(いずれも特命全権)以外に八十人の外交官(二十人弱の語学研修員は除く)が
いるが、このうち五十三人が家賃の高い新居に引っ越した。
全員が上限価格いっぱいの新居に移ったわけではないが、別表で三等書記
官級以下の上限の「四千八百八ドル」(約五十八万円)前後を支払うと今のモス
クワでどんな住居に住めるか。モスクワ市の南西、日本人学校に車でわずか十
分で実際に日本人外交官二世帯と日本人学校の教師数世帯が住む「パーク・
プレース」を訪れた。
米国・ヒューストンに本社を置く外資系で、九年前の建設。周囲のロシア人に
「お城」と呼ばれる豪華ホテル並みのマンションだ。ここで「五千百八十ドル(約
六十三万円)」の場合、三階造りで床面積は百六十八平方メートル。五つの寝
室と広いリビング、各階にバス・トイレがつく。
昨春の住宅手当大幅増額の理由について大使館の責任者は「外国人、邦人
ビジネスマンの住宅入居状況や先進七カ国の外交官が入居する住宅の質、賃
貸料、安全性、水、光熱のサービス状況などを多面的に調査した」と説明。「確
かにわれわれの家賃は高い」と認めた上で「アパートの大半が建設完了前に
売り切れ、供給が需要に追いつかない現状が住宅価格を釣り上げた」と語っ
た。
しかし、同大使館の内情に精通する複数の消息筋は「昨春はモスクワの不動
産価格が逆に下がった時期だった。突然の増額は新しく赴任した幹部が人心
掌握に携えてきた土産かな、との声も出たほどだ」と指摘。「外交官にふさわし
い新居で交渉相手を呼んだり、盗聴を避けるため、などと言い訳しているが、実
際には大使館員同士が招き合う方が圧倒的に多い。それにモスクワの外交官
が盗聴を恐れてまともな政情分析ができるのか」と手厳しく批判する。
住宅手当と在勤俸のほか、日本でも本給が支給され、在勤半年目の「健康
管理休暇」、在勤一年半での「休暇帰国」には家族全員の旅費が公費から支
給される。