ミサイル防衛 Bush Bombs Out By NewsWeek 

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投稿者 付箋 日時 2001 年 6 月 06 日 21:42:18:

回答先: ブッシュ政権の対中政策と中国 投稿者 付箋 日時 2001 年 6 月 06 日 21:20:07:

ミサイル防衛
Bush Bombs Out
新防衛計画は打ち上げ失敗
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ブッシュ米大統領が提唱した構想にアジアもヨーロッパも冷たい視線
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ロイ・グートマン(ワシントン)

 ワシントンの米連邦議事堂のS407号室は、上院議員が最高レベルの国家機密にかかわる説明を聞く際に使われる部屋だ。議員たちは、この盗聴対策の徹底された部屋で、安全保障上の脅威や戦争、スパイ活動、テロ行為、和平交渉について報告を受ける。
 先週、国防総省高官が秘密のエレベーターを使って、この秘密の部屋に入った。この日の報告内容は、ジョージ・W・ブッシュ大統領が唱えたミサイル防衛計画に対する世界各国の反応だった。
 ミサイル防衛計画は、発射されたミサイルをレーダーで探知し、発射直後に迎撃ミサイルで撃ち落とそうという構想。従来のNMD(米本土ミサイル防衛)計画をさらに世界規模で展開するものだ。
 先週まで国防総省や国務省の高官は、この構想について説明するために、イギリスやロシア、中国など世界各国を訪問していた。
 しかし、この報告が秘密裏に行われるのは奇妙な話だ。ミサイル防衛計画は、大統領が5月1日に国防大学で演説した際に、安全保障の「新たな枠組みが必要だ」と大々的にぶち上げたものだった。
 今になって秘密主義に方針転換した理由は、説明を受けた国々の反応にあるのかもしれない。

同盟国の反応も冷ややか

 各国政府は、アメリカの構想にきわめて懐疑的だった。説明に訪れた米高官はどこでも丁重な扱いを受けたが、一部同盟諸国の外交筋は、非公式な場ではミサイル防衛計画を辛辣に批判している。
 外交関係者の間では、ミサイル防衛計画の実効性を否定するだけでなく、計画を推進する必要性に疑問を呈する人も多い。北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)やイラク、イランなどの「ならず者国家」の脅威は、アメリカが主張するほど大きくないというのだ。
 この計画は、丸ごと「インチキだ」と、ある西欧外交筋は切って捨てる。
 NATO(北大西洋条約機構)の同盟諸国にして、こうした厳しい反応である。他の国々はもっと冷ややかだった。
 「潜在的な脅威に対抗するために、既存の軍備管理協定をすべて捨てるべきだという主張は、率直に言って説得力に欠ける」と、ロシアのイーゴリ・イワノフ外相は19日、コリン・パウエル米国務長官との会談後に語った。
 中国の軍縮問題責任者、沙祖康(シャー・ツーカン)は、「悪い結果につながるのではないかと、世界中が不安に思っている」と述べている。
 東アジア、南アジア、東南アジアの防衛問題専門家を対象にした最近の調査によると、圧倒的多数がアメリカのミサイル防衛計画に反対している。回答者の3分の2は、この計画はアジアを不安定化させ、新たな軍拡競争に火をつけると恐れている。
 ミサイル防衛計画の導入にあたっては、1972年に核抑止体制を維持するねらいで結ばれたABM(弾道弾迎撃ミサイル)制限条約が大きな障害になる。ブッシュは同条約の見直しを主張しているが、外交関係者の間には、伝統的な核抑止戦略には強い説得力があると指摘する声もある。
 実際、ミサイル防衛計画の大きな恩恵を受けるはずのドイツも、この構想には否定的だ。いつ実現するかわからないミサイル防衛構想をあてにするわけにはいかないと、ドイツ当局者は言う。

具体性を欠くアメリカ案

 ヨーロッパの同盟国にしてみれば、今回のミサイル防衛計画の決定的な問題点は、具体的な内容がはっきりしていないことだ。
 リチャード・アーミテージ国務副長官をはじめ、説明のために各国を訪問した米高官は、構想の全体像を示すことはできなかった。新しいシステムを支えるテクノロジー、実際の運用にあたっての軍事的な基本方針、システム導入のタイムテーブルなど、具体的なことははっきりしなかった。
 ブッシュがなんらかのミサイル防衛システムを導入する意向だという以外には、具体的な計画がまだまとまっていないとわかると、同盟諸国は当惑と安堵の入り交じった反応を見せた。
 アメリカの強力な同盟国のイギリスでは、「会談はきわめて円滑に進んだ」と、英政府関係者は言う。しかしそれは、アメリカ側の提案に批判すべき具体的な内容がなかったからにすぎない。
 イギリスなど、ヨーロッパに基地を置くことになるのか。同盟国は、どういう負担をすることになるのか。アメリカ側は、こうした点について明らかにすることができなかった。
 トニー・ブレア英首相は議会に対して、計画の具体的な内容が明らかになり、そのうえABM制限条約の見直しにロシアが同意するまでは、ミサイル防衛計画への賛否の判断は留保すると述べた。
 外交戦術に関して言えば、北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記のほうがアメリカより一枚上手だったようだ。北朝鮮は先週、ミサイル実験の一時停止をさらに3年間延長すると発表した。
 これにより、ミサイル防衛計画の説得力は弱まり、韓国ではこの構想への不信感が深まった。

脅威など存在しない?

 ソウルを訪れたアーミテージ米国務副長官の車列には、腐った卵が投げつけられた。金大中(キム・デジュン)大統領がアーミテージとミサイル防衛計画について話し合うために費やした時間は、ほんの数分にすぎなかった。
 アメリカは、60年代前半の旧ソ連製スカッド・ミサイルの技術をもとに、北朝鮮などの「ならず者国家」がICBM(大陸間弾道ミサイル)を開発する可能性があると主張。その脅威をミサイル防衛構想推進の根拠としている。
 しかし、この点については、技術上の理由から重大な疑問が唱えられている。
 「スカッド・ミサイルの技術では、アメリカ本土に到達可能なミサイルは開発できない」と、ロシアのイーゴリ・セルゲーエフ前国防相は言う。「スカッドからいきなりICBMをつくるのは無理だ」
 ワシントンの米政府関係者は、セルゲーエフの指摘に反論することはできなかった。
 「言いたいことはわかるが」と、あるホワイトハウス高官は言う。「残念ながら、この意見には同意しかねる」
 この高官は、北朝鮮が98年、スカッド・ミサイルをもとに開発した弾道ミサイル「テポドン」の発射実験を行ったことを指摘。ただし、「これは重要な問題であり、いずれきちんと説明したい」とも言っている。
 どうやらアメリカは各国政府と、もう少しきちんと話し合ったほうがよさそうだ。

ニューズウィーク日本版 2001年5月30日号



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