投稿者 election.co.jp 日時 2001 年 5 月 22 日 11:16:15:
「金正男不法入国事件」から、日本の外交・国防を考える
「資源がない島国-日本」で、外交・国防は死活問題だ!
フリージャーナリスト:神吉信之
アメリカ、カリフォルニア州サン・マティオ郡にロッキード・タウンがある。
「またまた、今日は何の話し?」
今日は選挙でなかなか話題にならない外交・国防の話をしようと思ってるんだ。
「「資源がない島国」そんな日本が一番強化しなくてはならないなのにね・・・。そ
れは、そうと史上初の女性外相に就いた田中真紀子さんが何かと注目を浴びている
ね」
そうだね。アメリカからアーミテージ副国務長官が来日したのに会わなかったこと
で国会で集中攻撃されるなど、何かと外務大臣としての資質が問われているが、今回
は北朝鮮総書記の長男金正男(キム・ジョンナム)が偽造旅券で日本に不法入国した事件
も合わせて、日本の外交・国防を考えることにしよう。
「でも、それと文頭の「アメリカ・・・」とどう関係があるの?」
君は「軍産複合体(Miritary Industrial Comolex)」という言葉は知っているか
い?
「聞いたことはあるよ」
アイクの愛称で知られるアイゼンハウアー大統領がホワイトハウスを去る際にこう
警鐘している。
「軍産複合体の経済的、政治的、そして精神的とまで言える影響力は、全ての市、
州、連邦政府機関に浸透している」と。
だが、アイクの警告を余所に軍産複合体は巨大化する。ペンタゴン(国防総省)を頂点
に、航空機メーカーのロッキード、ボーイング、マクドネル・ダグラス、コンピュー
ター機器メーカーのIBM、エレクトロニクスのGE、ハウエル、ヒューレット・パッカ
ードなどの約2万社余りの第1契約社と、12万社の下請け契約社、労働組合、全米ライ
フル協会などの圧力団体、CIA、FBIなどの諜報機関、スタンフォード大フーバータワ
ー研究所などのシンク・タンク・・・と、その影響力はアメリカ社会で絶大なものと
なった。
「何となく分かるけど、ピンと来ないなあ」
例えば、フォード社だがジープ、戦車なども製造する。戦闘機のブラックボック
ス、つまりコンピューター制御などはIBM、レーダーはヒューレット・パッカードなど
など・・・、収益の40%はペンタゴンとの契約による。
アメリカの軍事産業は1980年代までアメリカの全産業の25%を占めていた。
「なるほど」
私は以前アメリカでロシア人亡命者元KGB第13課のケース・オフィサーニコライ・
エビジェネビィッキ・コークロフ氏にインタビューしたことがある。ちなみに、13課
は後のV課の前進で暗殺、誘拐、破壊工作を指揮する部署だ。
「へ〜え。それで、何の話をしたの?」
コークロフ氏は南ベトナムのゴ・ディン・ディエムの軍事顧問として働いていたん
だ。具体的には、北ベトナムの南でのゲリラ活動に対するカウンター作戦の準備に取
り掛かっていた。だが、決行されなかった。
「何で?」
ホワイトハウスからストップがかかったそうだ。それで、
「もし、作戦が行われていたら、ベトナム戦争は回避されたと思いますか」
と質問したら、
「そう思う」と返ってきた。
それで、つかさず「ベトナム戦争で軍産複合体は多大な利益を得たと聞きますが、
そう思いますか」と尋ねたら、
「そうだ。GM、IBM、彼らは巨大だ。彼らの利益は国家さえ動かす」
そんな答えだった。
「なるほどね。でも、冷戦終焉後はCIAは組織縮小、軍事産業もリストラで縮小された
んじゃないの?」
確かに、CIAなどは職員募集をしなくては集まらなくなったし、ロスの軍事
産業区で
は2万人の失業者が出るなど軍産複合体も陰りが見えたかに見えた。だが、CIAは経済
スパイなどに、そして軍需はハイテク産業などを中心とした民需にシフトしたが、そ
の影響力は絶大だ。
先ずは、基礎知識としてこのことを頭に入れておいて欲しい。
さて、本題に入ろう。先の金正男の不法入国事件だが、私が一番気になったのは過
去3度入国して何故今回だけリークされたのか? その点だ。
意図的だとしたら、誰が何のため?「誰が得するか」で考えるのが基本だ。
「なるほど、で、ズバリ?」
アメリカだ!
「何で?」
ブッシュ政権に変わり、
1.アジア地域を戦略の中心軸
2.中国がアメリカの利益に脅威的という認識
3.日米同盟重視
その中で、ブッシュ大統領はNMD(アメリカ本土ミサイル防衛)推進を選挙公約に掲
げている。
だが、問題がある。
1.アメリカの軍事的な傘から出て、独自防衛を目指すEU(欧州連合)がミサイル防衛に
巨額投資をするのに反対
2.近年のNMD(アメリカ本土ミサイル防衛)、TMD(戦域ミサイル防衛)に関する論議は、
主に「ならず者国家」北朝鮮の戦略的、地域的な驚異を軸に展開されてきたが、南北
関係改善はミサイル防衛を推進させようとするブッシュ政権には不都合
3.1998年、北朝鮮が日本海域にテポドン1号(今では、衛星ロケットの可能性大とされ
ている)を試射した際に、「アメリカは十分な情報をくれなかった」 として、日本は
独自の情報収集衛星を打ち上げる計画を検討
4.技術的に問題がある
5.ロシアがEU(欧州連合)に接近
6.EU(欧州連合)代表団のソラナEU共同外交安保政策高位代表が訪朝
「EUは今後国際問題に対してより重要な政治的な役割を果たすようになるだ ろう」
と、アジアでのプレゼンサス確立に意欲的
さて、(5)の問題だが、プーチン露大統領がスウエーデンでのEU首脳会談に向かう数
日前に、FBI捜査官のロシアのスパイを逮捕、それを機に在米ロシア外交官55人を大
量追放処分にした。これはロシアに対するカウンターパンチだろう。
(3)では、ニューヨーク・タイムズ誌が「日本独自の情報収集衛星は、アジアが懸念す
る日本の軍事大国化につながる」と攻撃、例の「えひめ丸事故」でもワシントン・ポ
スト誌が「日本は戦争責任を果たしていない」という論調が出るのもアメリカがアメ
リカ主導の日米軍事同盟とするためのものだ。
(1)でも分かるように、アメリカにとって日本はミサイル防衛に巨額の投資をしてくれ
る唯一の国、アメリカにとっては「戦争責任」で日本が韓国、北朝鮮、中国などアジ
ア諸国といざこざが続いていた方が対日軍事戦略上好都合(2)(6)だが、昨年6月の「南
北首脳会談」からというもの、南北融和の動きを見て世界各国が北朝鮮と国交樹立、
アメリカ国内でも民主党を中心にクリントン前大統領の「寛和政策」を支持する声も
ある。
そんな中、金正男の不法入国事件が起こった。その後、アーミテージ国務副長官が
タイミング良く訪日、訪韓、この方程式を解けばアメリカCIAが裏で糸を引いたと考え
てほぼ間違いないだろう。こんなことはCIAにとっては朝飯前のことだ。
「北朝鮮を危険な国」と印象付ける。そうすることで、日本がアメリカのミサイル防
衛に賛成し易くなる。そんな状況を作るためだ。
「なるほどね。状況判断から、アメリカが一番臭いということか」
そうだ。ついでながら、北朝鮮のことにもう少し触れよう。
先ず、金正男が身に付けていた物、そして所有していた札束、それでも判るように
北
朝鮮が今行っている「外交開放」は北朝鮮の経済問題、そして住民の飢餓問題などの
改善とは一切関係ないということだ。
救援食糧の増加で労働党幹部の金遣いが荒くなり、市場では食糧袋が流出してい
るという北朝鮮亡命者の証言もある。
軍の食べ物事情が改善されたことで、国境警備が強化され、中国に出向いている公
安要員に特別手当が支給されているなどなど、金正日は全体主義政権の体制維持に利
用されているだけだ。
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先日は考えられない様なニュースに接しまして、これはいったい背後に何がある
のでしょうか?と考え込んでしまいました。
相変わらずののんびり日本の対応に怒りで一杯です。
政府・外務省の不透明さはいつも感じさせられます事で、一体、闇将軍は何処まで何
をしようとしているのか・・・?と
何としても明るみに出さなければ!!と思います。
大変なことですが皆様に支えられて前進を願っております。
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
川崎市 横田早紀江
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これは、北朝鮮に拉致されたと思われる横田めぐみさんのお母さんからの手紙だ。
他国との外交姿勢の違いで、面白い例を1つ教えよう。
これは某TV局の元アジア支局長から聞いた話だが、ミャンマーの民主化運動でシンボ
ル的な存在であるアウンサー・スーチー女史のことは知っていると思うが、アメリカ
CIAは現地人エージェントを使ってその活動など逐一モニターしているという。だが、
スーチー女史の自宅前に日本大使館があるというのに、日本の外交官は何もしていな
いという。
情報収集は外交の基本中の基本で、彼らは足で稼ぐ、現地人を使うなどの芸当は出
来ない。せいぜい、メディアなどで公式発表されたものを情報として本国へ流すぐら
いだ。これでは何のために海外に駐在しているのか、全く意味がない。
北京で会った外事弁公室の職員(日本の外交職員にあたる)が、
「日本人外交官は扱いやすいですね。彼らは単なる友好が目的ですからね。アメリ
カ人外交官は違う。我々から少しでも貴重な情報を得ようとするから、油断が出来
ない」そう笑って語っていたが、これも日本の外交姿勢を暗に小馬鹿にした発言だ。
こんな外交姿勢で集団的自衛権、憲法改正もないのでは・・・。私には、そう思え
てならない。
国内問題も良いが、国際問題こそ「資源がない島国日本」にとっては死活問題、今
度の参院選を機にもう1度外交・国防問題を有権者には改めた考えてもらいたいもの
だ。
「確かに。では、またね」