投稿者 mainichi/20010506 日時 2001 年 5 月 07 日 09:48:21:
米通信傍受システム:ミサイル防衛で強化 欧州議会調査で判明
【ロンドン5日岸本卓也】ブッシュ米政権がミサイル防衛構想推進の一環として世界の電
話、ファクス、Eメールを盗聴する通信傍受システムの強化を図っていることが5日までに
わかった。米国主導の通信傍受機関(暗号名エシュロン)の実態を調べている欧州議会の調
査によるもので、人工衛星や電算機を使った大規模な通信傍受は産業スパイやプライバシー
侵害の疑いが指摘されている。近く訪米する欧州議会の派遣団は傍受の実態などを米政府に
ただす方針だ。
同議会筋によると、米政府はミサイル防衛で必要な宇宙からの偵察能力を強化させるた
め、写真撮影衛星や通信傍受衛星の機能向上を計画している。新型衛星の開発や交信施設の
改善を目指し、向こう20年間の総費用は約250億ドル(約3兆円)に達する。
欧州議会が注目しているのは通信傍受衛星を含む盗聴能力の強化だ。すでに米国の通信傍
受衛星は少なくとも2基が稼動し、いずれもサッカー場ぐらいの広さがある巨大アンテナで
交信を捉えている。衛星で捉えた通信を地上の電算機で分析する現在の能力は1分間に30
0万件という。
盗聴能力の強化のために通信傍受の数量増大と分析の速度アップを計画の最大目的として
いる。人工衛星など機器の性能向上というハード面だけでなく、傍受した通信の分析を行う
情報機関の専門家の養成や得られた情報を政府内部で広く利用できるような組織改革などソ
フト面の改良も含まれている。
エシュロンは米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国で編成さ
れている。欧州議会は昨年7月に調査委員会を発足させ、通信専門家や企業関係者らからエ
シュロン機関の被害調査を進めてきた。
調査委員会は米政府の通信傍受システムの強化を深刻に受け止め、米政府や米議会の関係
者から直接聴取して実態に迫りたい意向だ。訪米結果は調査委員会が今月末までにまとめる
エシュロンに関する最終報告書に盛り込む。