投稿者 asahi.com/0311 日時 2001 年 3 月 11 日 08:59:02:
【ワシントン10日=西村陽一】米中央情報局(CIA)は九日、旧ソ連関係の機密文書約一万九千ページを公開した。旧ソ連のミサイル防衛計画や、米国の戦略防衛構想(SDI)の記述の多くは、米本土ミサイル防衛(NMD)をめぐる今の議論とそっくり。「SDIの子供」といわれるNMDが、冷戦時代の論議をそのまま引きずっていることがよくわかる。
「ソ連のABM(弾道弾迎撃ミサイル)防衛−−現状と展望」(一九七〇年)には、「最高機密」の判が押されている。それによると、旧ソ連が六〇年代、十六ケ所に予定していた迎撃ミサイルの発射基地を半減させた背景には、米国から多数の核ミサイルを浴びせられると、それを迎え撃つためのミサイル防衛網はたやすく破られるとの判断があった、という。
三十年後のNMD論議でも、「相手が対抗して核ミサイルを増強すれば、防衛網は突破され、完璧な防衛などありえない」と言われている。旧ソ連のミサイル防衛に対するCIAの分析が、NMD反対派の主張に引き継がれた形だ。
「極秘」扱いの「SDIに対するソ連の反応の選択肢」(八七年)には、@レーガン大統領が八三年にSDIを発表した時、ソ連は、戦略核の近代化と、SDIに対抗できる再先端技術の研究に着手していたAゴルバチョフ書記長がミサイル防衛や戦略核の増強でSDIに立ち向かえば、経済再建は犠牲になるBソ連は軍拡競争を強いられることを恐れ、「SDIによって米国の欧州防衛の熱意は弱まる」などと米欧分断を試みている−−とある。
ロシアのセルゲーエフ国防相は最近、「スターウォ−ズ計画(SDI)に対抗するためにソ連時代に開発された技術」を利用すれば、NMDなどものの数ではない、と語った。文書にあるように、米側が旧ソ連のSDI研究について熟知していることを見越してのけん制だろう。
その一方で、ロシア側は今、「ミサイル防衛は軍拡競争の引き金を引き、軍備管理体制を壊す」と強調する。プーチン大統領は、欧州がNMDに「米国一国中心主義」の疑いを募らせていくのを踏まえ、米欧間にくさびを打ち込むのに懸命だ。米側は「ロシアには本気でNMDに対抗する資金力はない」とみる。