投稿者 gan 日時 2001 年 3 月 10 日 16:51:00:
スーパーボウルで実施された監視技術
マサチューセッツ州ケンブリッジ発――プライバシーの専門家たちにとって、フロリダ州タンパで開催された第35回『スーパーボウル』は単なるスポーツの試合ではなかった。
市民的自由擁護派の専門家たちによると、警察がスーパーボウル会場で、レイモンド・ジェームズ・スタジアムの入口を通る観客全員の画像を収録し、犯罪者の顔を集めたデータベースと比較したという。顔面認識技術とビデオ監視を連動した、これまで最大規模の活動があったことになる。このシステムはテロリストなどの犯罪者を捕えるために開発されたが、結局はほんの一握りのスリやダフ屋を逮捕するだけに終わってしまったと専門家は述べた。
「このシステムの有効性を疑わなければならない」と『米国自由人権協会』(ACLU)の副理事、バリー・スタインハートは、当地で開催された『2001年コンピューターの自由とプライバシー会議』のパネルディスカッションで述べた。
プライバシーのオブザーバーたちは、スーパーボウルをバイオメトリックス技術が濫用された初の大規模な例として指摘し、スーパー・マーケットに行くことから自動車での移動まで、市民の動きすべてが追跡される時代の到来を予告するものだと警告している。
しかし、スーパーボウルで使用された技術を開発した米ビージージュ(Viisage)の最高経営責任者(CEO)トーマス・コラトスティは、自社システムをプラバシーを侵害するのではなく、保護するものとして弁護し、勇敢にも同システムに反感を持つ群衆と対立した。
「顔面認識は個人のプライバシーを向上させると強く信じている」とビーサージのコラトスティは述べ、身分詐称の防止や銀行口座の保護にも利用可能だと付け加えた。同社のシステムは、スーパーボウルで集めた画像のうち犯罪履歴と合致しないものはすべて廃棄したと説明し、同システムの批判者を警戒心を煽っているとして非難した。
「率直に言うと、ひどく誇張に満ちた雰囲気になってきている。私たちのカメラの前を横切った何千人もの観衆について、私たちは全く何も知らないのだ」とコラトスティ。
その上、顔はプライベートなものではなく、公共の場に居ればいつでもビデオに収められる可能性があるのだ、とコラトスティは続ける。今回の騒ぎと、空港でX線セキュリティーの実施を行う必要性について過去に行われた討論を比較のために引き合いに出した。X線セキュリティーに関する議論でも、市民的権利の擁護団体からの非難が集中した。コラトスティによれば、誰でもすでに、コンビニエンスストアのカメラや空港警備にたずさわる警備員によって公然と追い回されているという。
「顔面認識の大きな利点は公平なことだ」とコラトスティ。
しかしこうした主張で、マイクの前に並んで、コラトスティに質問を投げつける不機嫌な群衆を納得させることはできなかった。中にはこのシステムが容易に不正侵入されてしまうのではないかと怪しむ声もあった。犯行者が必ずしも最初からデータベースに登録されているわけではないため、この技術を使ってもおそらくオクラホマ爆破事件を防ぐことはできなかっただろうと指摘する声もあがった。また、資金的に可能ならば、ビージージュは特定の公共イベントに来た人すべてを登録する巨大データベースを構築し、将来のために保存しておくのか、といった質問がコラトスティに投げかけられた。
コラトスティの答えはノーだった。「適切ではないと思う。私は自分の顔をどこかのデータベースに登録されたくない。犯罪者を狩り出すような活動には、関与したくない」とコラトスティ。
一方で、ACLUのスタインハートは、この技術が公平だというコラトスティの主張の不備を指摘した。監視技術は有色人種、「好ましくない」と考えられている人々、そして――監視カメラを操作しているのはほとんどが男性のため――女性には不公平に利用されてきたとスタインハートは主張している。
「人種差別だけでなく、のぞき主義という問題の要素もはらんでいる」とスタインハート。
スタインハートによると、バイオメトリックス技術を利用した監視技術は、すでに政治運動家の画像を撮るために利用されているという。また将来、たとえば、有色人種の多い界隈にやってくる社会のマイノリティーに警察が手を出し、市民の電子的プロファイルを収集するために利用する可能性もあり得るという。
「このようなことは実際に起こっている」とスタインハート。