投稿者 たけしくん 日時 2001 年 2 月 12 日 22:27:09:
破産国家ニッポン「構造改革リミットあと3年」跡田阪大教授に聞く(東京新聞)
「負債 1000兆円超債務超過は 500兆
「国全体の負債総額は、既に一千兆円超。負債が資産を上回る債務超過も五百兆円規模に膨らんでいる」――。財政学の専門家・大阪大学大学院の跡田直澄教授は、自らの試算を基に国家財政の惨状を推察した。「破滅的な状況です。このままでは日本発の世界大恐慌だってあり得る」とまで警告する。今、まさに財政再建をめぐる国会論戦の真っ最中だ。跡田教授とともに“破産国家ニッポン”の現状を点検したい。(桐山桂一)
売却できる資産少ない 議事堂売れても道路は売れない
旧大蔵省は昨秋、国の資産と負債のバランスシート(貸借対照表)を公表したが、公的年金の算定方法によって、債務超過額は最小で百三十三兆円、最大で七百七十六兆円とあまりにも大きな幅が出た。
いったい日本の財政危機を、どんな数字で考えるのが妥当なのか。跡田教授は国連で定めた“世界基準”に基づき、PHP研究所と共同で一昨年、一九九六年度の国全体のバランスシートを作った。
「九六年度末では、国全体の負債は七百四兆円で、資産は九百十六兆円。差し引き二百十二兆円の黒字でした(表(1)参照)。それは公共事業費として中央が支出する地方交付税が、地方から見ると収入となり、地方の財政が見かけ上は黒字になるからです。でも実態は地方も赤字ですよ」
“世界基準”とは、国全体の会計を中央政府と地方政府、社会保障基金の三つに区分し、将来払うべき公務員の年金や退職金なども加味した計算方法を指している。
「しかし、資産は売れないと意味がありません。例えば国会議事堂は売れても、道路は売れないものです。そこで売却可能な資産を算定してみたら、三百三十六兆円にとどまりました。これを基にすると、中央も地方も社会保障基金もすべて赤字。表面上は良さそうに見えても、国全体では三百六十八兆円もの債務超過となってしまうのです」
九六年度末の数字でこれである。その後の負債の膨張は著しいはずだが……。
「ええ、財務省資料によれば、九六年度末から二〇〇一年度末までに、国と地方の長期債務は二百十七兆円増えています。私の計算した九六年度末時点の負債額七百四兆円にこれをプラスすると、九百二十一兆円。既にこれだけの借金はあるのです」
さらに跡田教授は、かつて金融機関の不良債権処理などのために用意した六十兆円の公的資金枠を挙げて、こう説明する。
「六十兆円のうち、まだ三十二兆円分の国債は未発行です。必要な時にいつでも発行される性質のものです。また、中小企業の救済策として、一昨年に二十兆円の特別保証をし、昨年にも十兆円が追加されました。このうち二十兆円ほどが焦げ付く恐れがあるとされます」
表面化せぬ不良債権も
地方の公営企業債などへの政府保証は四十八兆円(九五年時点)あるうえ、都市基盤整備公団や国民生活金融公庫など財政投融資を使う財投機関には、まだ表面化していない不良な債権が数多く存在するという。
「国鉄清算事業団などがいい例で、巨額な債務の利子だけ払うのにやっとの状態ですが、これも倒産しない限り、表には出てきません。こんな財政は尋常ではありません。私は現在、国全体で負債は一千兆円を超え、しかも五百兆円規模もの債務超過を起こしているとみています。日本のGDP(国内総生産)が五百兆円強だから、つまりGDPを帳消しにしてしまうほどの巨額さなのです」
もう破たん 状態と同じ 『収益生まぬ投資やめよ』
跡田教授は五四年生まれ。専門は財政学で、昨年まで旧経済企画庁の経済審議会企画部会委員、現在も財務省の財務総合政策研究所の特別研究官を務めている。
「国民の金融資産は、千四百兆円あるとされています。国の借金がその範囲内であればいいのですが、それを超えると大変です。ニュージーランドは数年前、深刻な財政危機に陥りました。その結果、郵便事業は米国の民間企業に売却。国営航空会社もオーストラリアに売却するという、資産の切り売りをしたのです。日本は対外債務がない点は救われているのですが、一千兆円もの負債とは、GDPの二倍です。もう破たん状態と同じようなものですよ」
一方、財務省が明らかにした国と地方の長期債務は、来年度予算案分も含めて、六百六十六兆円。GDPと比べると、一・二九倍である(表(2)参照)。跡田教授は続ける。
「G7先進国の中で、かつてはイタリアの財政が最悪でしたが、現在は対GDP比は一・一倍にすぎません。イタリアが健全化しつつある一方、日本は悪化の一途。落ちこぼれの“劣等国”なのです」
『インフレ政策 絶対だめ』
日本の国債は、かつては最も安全な投資対象とされた。だが、米国の格付け会社・ムーディーズは、九八年と昨年秋の二回にわたり、格付けを二段階落とした。たまりにたまった国債残高への懸念からの判断だといわれる。
「家計で考えると、借金しても、建てた住宅は資産として残ります。国債を発行しても、残高に見合う資産があれば問題ないのです。ところが、九二年から九九年にかけ、景気対策として百二十四兆円に上る公共投資をしましたが、本来、投資した百二十四兆円以上は増えていいはずのGDPは、四十四兆円しか増えませんでした(表(3)参照)。つまり収益とならない資産ばかりつくっていたのです。土建業の雇用ばかり増やし、他の民間企業が委縮してしまった。国による“民間押しのけ効果”だと思いますよ」
仮に国全体の負債が、国民の金融資産千四百兆円を超えたら、どういう事態を迎えるのだろうか。
日本発の大恐慌も
「ええ、海外からお金を借りるしかなくなります。対外債務を抱える国へと転落するわけです。将来、日本がIMF(国際通貨基金)管理に陥る可能性だってないわけではありません。むしろ、問題なのは、国民の貯金である千四百兆円のうち、百兆円ほどある米国の国債。もし、国全体の借金が増え続けると、米国債を売らねばならなくなる事態も出てきます。すると米国債が暴落し、世界の金融マーケットを壊してしまう……。すなわち世界大恐慌です」
では、この財政危機にどう対処したらいいのか。
「インフレ政策などは絶対だめだと思います。だれも日本の国債を買ってくれなくなります。とにかくもうムダな支出はさせないことが一番ですよ。来年度予算案をみても、公共事業費は今までとほとんど変わらない。景気維持のため需要をつくるのはいいが、今は将来収益を生み出す投資、経済が良くなる公共投資をやらねばならないのです」
跡田教授は、公共事業から「人への投資」へ転換すべきだと強調する。
失業者には職得る教育
「失業者にIT(情報技術)など、他の職を得る教育を与えるのです。これは経済波及効果は少なくとも、確実に需要を生み出します。冗談と思うかもしれませんが、『中年海外協力隊』でも、『福祉奉仕隊』でもいいけれど、百万人の失業者に研修費や給料として一人に年間五百万円を出し、海外協力活動や福祉活動
をしてもらったらどうでしょう。それでも支出は五兆円です。このように中身がころっと変わらないと、構造改革にはならないのです」
跡田教授は、国民の金融資産千四百兆円が、まさに負債のデッドラインと説くが、このまま借金が雪だるま式に増え続けると……。
「数年間で二百兆円も負債が増える、この伸びはすさまじいものがあります。早く構造改革を実行すべきです。私はあと三年がタイムリミットとみています」
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