投稿者 こーむいん 日時 2000 年 12 月 24 日 22:46:57:
生活保護法
(昭和二十五年五月四日法律第百四十四号)
第一章 総則
(この法律の目的)
第一条 この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に
困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最
低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。
(無差別平等)
第二条 すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護
(以下「保護」という。)を、無差別平等に受けることができる。
(最低生活)
第三条 この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準
を維持することができるものでなければならない。
(保護の補足性)
第四条 保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆる
ものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
2 民法(明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法
律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
3 前二項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるも
のではない。
(この法律の解釈及び運用)
第五条 前四条に規定するところは、この法律の基本原理であつて、この法律の解
釈及び運用は、すべてこの原理に基いてされなければならない。
(用語の定義)
第六条 この法律において「被保護者」とは、現に保護を受けている者をいう。
2 この法律において「要保護者」とは、現に保護を受けているといないとにかかわ
らず、保護を必要とする状態にある者をいう。
3 この法律において「保護金品」とは、保護として給与し、又は貸与される金銭及
び物品をいう。
4 この法律において「金銭給付」とは、金銭の給与又は貸与によつて、保護を行う
ことをいう。
5 この法律において「現物給付」とは、物品の給与又は貸与、医療の給付、役務
の提供その他金銭給付以外の方法で保護を行うことをいう。
第二章 保護の原則
(申請保護の原則)
第七条 保護は、要保護者、その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に
基いて開始するものとする。但し、要保護者が急迫した状況にあるときは、保護の申
請がなくても、必要な保護を行うことができる。
(基準及び程度の原則)
第八条 保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基
とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度に
おいて行うものとする。
2 前項の基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保
護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分な
ものであつて、且つ、これをこえないものでなければならない。
(必要即応の原則)
第九条 保護は、要保護者の年齢別、性別、健康状態等その個人又は世帯の実
際の必要の相違を考慮して、有効且つ適切に行うものとする。
(世帯単位の原則)
第十条 保護は、世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとする。但し、こ
れによりがたいときは、個人を単位として定めることができる。
第三章 保護の種類及び範囲
(種類)
第十一条 保護の種類は、次のとおりとする。
一 生活扶助
二 教育扶助
三 住宅扶助
四 医療扶助
五 介護扶助
六 出産扶助
七 生業扶助
八 葬祭扶助
2 前項各号の扶助は、要保護者の必要に応じ、単給又は併給として行われる。
(生活扶助)
第十二条 生活扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者
に対して、左に掲げる事項の範囲内において行われる。
一 衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの
二 移送
(教育扶助)
第十三条 教育扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者
に対して、左に掲げる事項の範囲内において行われる。
一 義務教育に伴つて必要な教科書その他の学用品
二 義務教育に伴つて必要な通学用品
三 学校給食その他義務教育に伴つて必要なもの
(住宅扶助)
第十四条 住宅扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者
に対して、左に掲げる事項の範囲内において行われる。
一 住居
二 補修その他住宅の維持のために必要なもの
(医療扶助)
第十五条 医療扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者
に対して、左に掲げる事項の範囲内において行われる。
一 診察
二 薬剤又は治療材料
三 医学的処置、手術及びその他の治療並びに施術
四 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
五 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
六 移送
(介護扶助)
第十五条の二 介護扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできな
い要介護者(介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第七条第三項に規定する
要介護者をいう。第三項において同じ。)及び要支援者(同条第四項に規定する要
支援者をいう。第三項において同じ。)に対して、次に掲げる事項の範囲内において
行われる。
一 居宅介護(居宅介護支援計画に基づき行うものに限る。)
二 福祉用具
三 住宅改修
四 施設介護
五 移送
2 前項第一号に規定する居宅介護とは、介護保険法第七条第六項に規定する訪
問介護、同条第七項に規定する訪問入浴介護、同条第八項に規定する訪問看護、
同条第九項に規定する訪問リハビリテーション、同条第十項に規定する居宅療養管
理指導、同条第十一項に規定する通所介護、同条第十二項に規定する通所リハビ
リテーション、同条第十三項に規定する短期入所生活介護、同条第十四項に規定
する短期入所療養介護、同条第十五項に規定する痴呆対応型共同生活介護、同条
第十六項に規定する特定施設入所者生活介護及び同条第十七項に規定する福祉
用具貸与並びにこれらに相当するサービスをいう。
3 第一項第一号に規定する居宅介護支援計画とは、居宅において生活を営む要
介護者又は要支援者が居宅介護その他居宅において日常生活を営むために必要
な保健医療サービス及び福祉サービス(以下この項において「居宅介護等」とい
う。)の適切な利用等をすることができるようにするための当該要介護者又は要支援
者が利用
する居宅介護等の種類、内容等を定める計画をいう。
4 第一項第四号に規定する施設介護とは、介護保険法第七条第二十一項に規定
する介護福祉施設サービス、同条第二十二項に規定する介護保健施設サービス及
び同条第二十三項に規定する介護療養施設サービスをいう。
(出産扶助)
第十六条 出産扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者
に対して、左に掲げる事項の範囲内において行われる。
一 分べんの介助
二 分べん前及び分べん後の処置
三 脱脂綿、ガーゼその他の衛生材料
(生業扶助)
第十七条 生業扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者
又はそのおそれのある者に対して、左に掲げる事項の範囲内において行われる。但
し、これによつて、その者の収入を増加させ、又はその自立を助長することのできる
見込のある場合に限る。
一 生業に必要な資金、器具又は資料
二 生業に必要な技能の修得
三 就労のために必要なもの
(葬祭扶助)
第十八条 葬祭扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者
に対して、左に掲げる事項の範囲内において行われる。
一 検案
二 死体の運搬
三 火葬又は埋葬
四 納骨その他葬祭のために必要なもの
2 左に掲げる場合において、その葬祭を行う者があるときは、その者に対して、前
項各号の葬祭扶助を行うことができる。
一 被保護者が死亡した場合において、その者の葬祭を行う扶養義務者がないと
き。
二 死者に対しその葬祭を行う扶養義務者がない場合において、その遺留した金
品で、葬祭を行うに必要な費用を満たすことのできないとき。
第四章 保護の機関及び実施
(実施機関)
第十九条 都道府県知事、市長及び社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)
に規定する福祉に関する事務所(以下「福祉事務所」という。)を管理する町村長は、
次に掲げる者に対して、この法律の定めるところにより、保護を決定し、かつ、実施し
なければならない。
一 その管理に属する福祉事務所の所管区域内に居住地を有する要保護者
二 居住地がないか、又は明らかでない要保護者であつて、その管理に属する福
祉事務所の所管区域内に現在地を有するもの
2 居住地が明らかである要保護者であつても、その者が急迫した状況にあるとき
は、その急迫した事由が止むまでは、その者に対する保護は、前項の規定にかか
わらず、その者の現在地を所管する福祉事務所を管理する都道府県知事又は市町
村長が行うものとする。
3 第三十条第一項ただし書の規定により被保護者を救護施設、更生施設若しくは
その他の適当な施設に入所させ、若しくはこれらの施設に入所を委託し、若しくは私
人の家庭に養護を委託した場合又は第三十四条の二第二項の規定により被保護
者に対する介護扶助(施設介護に限る。)を介護老人福祉施設(介護保険法第七条
第二十一項に規定する介護老人福祉施設をいう。以下同じ。)に委託して行う場合
においては、当該入所又は委託の継続中、その者に対して保護を行うべき者は、そ
の者に係る入所又は委託前の居住地又は現在地によつて定めるものとする。
4 前三項の規定により保護を行うべき者(以下「保護の実施機関」という。)は、保
護の決定及び実施に関する事務の全部又は一部を、その管理に属する行政庁に限
り、委任することができる。
5 保護の実施機関は、保護の決定及び実施に関する事務の一部を、政令の定め
るところにより、他の保護の実施機関に委託して行うことを妨げない。
6 福祉事務所を設置しない町村の長(以下「町村長」という。)は、その町村の区
域内において特に急迫した事由により放置することができない状況にある要保護者
に対して、応急的処置として、必要な保護を行うものとする。
7 町村長は、保護の実施機関又は福祉事務所の長(以下「福祉事務所長」とい
う。)が行う保護事務の執行を適切ならしめるため、左に掲げる事項を行うものとす
る。
一 要保護者を発見し、又は被保護者の生計その他の状況の変動を発見した場合
において、すみやかに、保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を通報するこ
と。
二 第二十四条第六項の規定により保護の開始又は変更の申請を受け取つた場
合において、これを保護の実施機関に送付すること。
三 保護の実施機関又は福祉事務所長から求められた場合において、被保護者等
に対して、保護金品を交付すること。
四 保護の実施機関又は福祉事務所長から求められた場合において、要保護者に
関する調査を行うこと。
(権限の委任)
第二十条 都道府県知事は、この法律に定めるその職権の一部を、その管理に属
する行政庁に委任することができる。
(補助機関)
第二十一条 社会福祉法に定める社会福祉主事は、この法律の施行について、都
道府県知事又は市町村長の事務の執行を補助するものとする。
(民生委員の協力)
第二十二条 民生委員法(昭和二十三年法律第百九十八号)に定める民生委員
は、この法律の施行について、市町村長、福祉事務所長又は社会福祉主事の事務
の執行に協力するものとする。
(事務監査)
第二十三条 厚生労働大臣は都道府県知事及び市町村長の行うこの法律の施行
に関する事務について、都道府県知事は市町村長の行うこの法律の施行に関する
事務について、その指定する官吏又は吏員に、その監査を行わせなければならな
い。
2 前項の規定により指定された官吏又は吏員は、都道府県知事又は市町村長に
対し、必要と認める資料の提出若しくは説明を求め、又は必要と認める指示をするこ
とができる。
3 第一項の規定により指定すべき官吏又は吏員の資格については、政令で定め
る。
(申請による保護の開始及び変更)
第二十四条 保護の実施機関は、保護の開始の申請があつたときは、保護の要
否、種類、程度及び方法を決定し、申請者に対して書面をもつて、これを通知しなけ
ればならない。
2 前項の書面には、決定の理由を附さなければならない。
3 第一項の通知は、申請のあつた日から十四日以内にしなければならない。但
し、扶養義務者の資産状況の調査に日時を要する等特別な理由がある場合には、
これを三十日まで延ばすことができる。この場合には、同項の書面にその理由を明
示しなければならない。
4 保護の申請をしてから三十日以内に第一項の通知がないときは、
申請者は、保
護の実施機関が申請を却下したものとみなすことができる。
5 前四項の規定は、第七条に規定する者から保護の変更の申請があつた場合に
準用する。
6 保護の開始又は変更の申請は、町村長を経由してすることもできる。町村長
は、申請を受け取つたときは、五日以内に、その申請に、要保護者に対する扶養義
務者の有無、資産状況その他保護に関する決定をするについて参考となるべき事
項を記載した書面を添えて、これを保護の実施機関に送付しなければならない。
(職権による保護の開始及び変更)
第二十五条 保護の実施機関は、要保護者が急迫した状況にあるときは、すみや
かに、職権をもつて保護の種類、程度及び方法を決定し、保護を開始しなければな
らない。
2 保護の実施機関は、常に、被保護者の生活状態を調査し、保護の変更を必要と
すると認めるときは、すみやかに、職権をもつてその決定を行い、書面をもつて、これ
を被保護者に通知しなければならない。前条第二項の規定は、この場合に準用す
る。
3 町村長は、要保護者が特に急迫した事由により放置することができない状況に
あるときは、すみやかに、職権をもつて第十九条第六項に規定する保護を行わなけ
ればならない。
(保護の停止及び廃止)
第二十六条 保護の実施機関は、被保護者が保護を必要としなくなつたときは、す
みやかに、保護の停止又は廃止を決定し、書面をもつて、これを被保護者に通知し
なければならない。第二十八条第四項又は第六十二条第三項の規定により保護の
停止又は廃止をするときも、同様とする。
(指導及び指示)
第二十七条 保護の実施機関は、被保護者に対して、生活の維持、向上その他保
護の目的達成に必要な指導又は指示をすることができる。
2 前項の指導又は指示は、被保護者の自由を尊重し、必要の最小限度に止めな
ければならない。
3 第一項の規定は、被保護者の意に反して、指導又は指示を強制し得るものと解
釈してはならない。
(相談及び助言)
第二十七条の二 保護の実施機関は、要保護者から求めがあつたときは、要保護
者の自立を助長するために、要保護者からの相談に応じ、必要な助言をすることが
できる。
(調査及び検診)
第二十八条 保護の実施機関は、保護の決定又は実施のため必要があるときは、
要保護者の資産状況、健康状態その他の事項を調査するために、要保護者につい
て、当該吏員に、その居住の場所に立ち入り、これらの事項を調査させ、又は当該
要保護者に対して、保護の実施機関の指定する医師若しくは歯科医師の検診を受
けるべき旨を命ずることができる。
2 前項の規定によつて立入調査を行う当該吏員は、厚生労働省令の定めるところ
により、その身分を示す証票を携帯し、且つ、関係人の請求があるときは、これを呈
示しなければならない。
3 第一項の規定による立入調査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと
解してはならない。
4 保護の実施機関は、要保護者が第一項の規定による立入調査を拒み、妨げ、
若しくは忌避し、又は医師若しくは歯科医師の検診を受けるべき旨の命令に従わな
いときは、保護の開始若しくは変更の申請を却下し、又は保護の変更、停止若しく
は廃止をすることができる。
(調査の嘱託及び報告の請求)
第二十九条 保護の実施機関及び福祉事務所長は、保護の決定又は実施のため
に必要があるときは、要保護者又はその扶養義務者の資産及び収入の状況につ
き、官公署に調査を嘱託し、又は銀行、信託会社、要保護者若しくはその扶養義務
者の雇主その他の関係人に、報告を求めることができる。
(行政手続法の適用除外)
第二十九条の二 この章の規定による処分については、行政手続法(平成五年法
律第八十八号)第三章(第十二条及び第十四条を除く。)の規定は、適用しない。
第五章 保護の方法
(生活扶助の方法)
第三十条 生活扶助は、被保護者の居宅において行うものとする。ただし、これに
よることができないとき、これによつては保護の目的を達しがたいとき、又は被保護
者が希望したときは、被保護者を救護施設、更生施設若しくはその他の適当な施設
に入所させ、若しくはこれらの施設に入所を委託し、又は私人の家庭に養護を委託
して行うことができる。
2 前項ただし書の規定は、被保護者の意に反して、入所又は養護を強制すること
ができるものと解釈してはならない。
3 保護の実施機関は、被保護者の親権者又は後見人がその権利を適切に行わ
ない場合においては、その異議があつても、家庭裁判所の許可を得て、第一項但書
の措置をとることができる。
4 前項の許可は、家事審判法(昭和二十二年法律第百五十二号)の適用に関し
ては、同法第九条第一項甲類に掲げる事項とみなす。
第三十一条 生活扶助は、金銭給付によつて行うものとする。但し、これによること
ができないとき、これによることが適当でないとき、その他保護の目的を達するため
に必要があるときは、現物給付によつて行うことができる。
2 生活扶助のための保護金品は、一月分以内を限度として前渡するものとする。
但し、これによりがたいときは、一月分をこえて前渡することができる。
3 居宅において生活扶助を行う場合の保護金品は、世帯単位に計算し、世帯主
又はこれに準ずる者に対して交付するものとする。但し、これによりがたいときは、被
保護者に対して個々に交付することができる。
4 介護老人福祉施設、介護老人保健施設(介護保険法第七条第二十二項に規定
する介護老人保健施設をいう。以下同じ。)又は介護療養型医療施設(同条第二十
三項に規定する介護療養型医療施設をいう。以下同じ。)であつて第五十四条の二
第一項の規定により指定を受けたもの(同条第二項の規定により同条第一項の指
定を受けたものとみなされた介護老人福祉施設を含む。)において施設介護を受け
る被保護者に対して生活扶助を行う場合の保護金品を前項に規定する者に交付す
ることが適当でないときその他保護の目的を達するために必要があるときは、同項
の規定にかかわらず、当該介護老人福祉施設の長又は当該介護老人保健施設若
しくは介護療養型医療施設の管理者に対して交付することができる。
5 前条第一項ただし書の規定により生活扶助を行う場合の保護金品は、被保護
者又は施設の長若しくは養護の委託を受けた者に対して交付するものとする。
(教育扶助の方法)
第三十二条 教育扶助は、金銭給付によつて
行うものとする。但し、これによること
ができないとき、これによることが適当でないとき、その他保護の目的を達するため
に必要があるときは、現物給付によつて行うことができる。
2 教育扶助のための保護金品は、被保護者、その親権者若しくは未成年後見人
又は被保護者の通学する学校の長に対して交付するものとする。
(住宅扶助の方法)
第三十三条 住宅扶助は、金銭給付によつて行うものとする。但し、これによること
ができないとき、これによることが適当でないとき、その他保護の目的を達するため
に必要があるときは、現物給付によつて行うことができる。
2 住宅扶助のうち、住居の現物給付は、宿所提供施設を利用させ、又は宿所提供
施設にこれを委託して行うものとする。
3 第三十条第二項の規定は、前項の場合に準用する。
4 住宅扶助のための保護金品は、世帯主又はこれに準ずる者に対して交付するも
のとする。
(医療扶助の方法)
第三十四条 医療扶助は、現物給付によつて行うものとする。但し、これによること
ができないとき、これによることが適当でないとき、その他保護の目的を達するため
に必要があるときは、金銭給付によつて行うことができる。
2 前項に規定する現物給付のうち、医療の給付は、医療保護施設を利用させ、又
は医療保護施設若しくは第四十九条の規定により指定を受けた医療機関にこれを
委託して行うものとする。
3 前項に規定する医療の給付のうち、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師
等に関する法律(昭和二十二年法律第二百十七号)又は柔道整復師法(昭和四十
五年法律第十九号)の規定によりあん摩マツサージ指圧師又は柔道整復師(以下
「施術者」という。)が行うことのできる範囲の施術については、第五十五条の規定に
より準用される第四十九条の規定により指定を受けた施術者に委託してその給付を
行うことを妨げない。
4 急迫した事情がある場合においては、被保護者は、前二項の規定にかかわら
ず、指定を受けない医療機関について医療の給付を受け、又は指定を受けない施術
者について施術の給付を受けることができる。
5 医療扶助のための保護金品は、被保護者に対して交付するものとする。
(介護扶助の方法)
第三十四条の二 介護扶助は、現物給付によつて行うものとする。ただし、これによ
ることができないとき、これによることが適当でないとき、その他保護の目的を達する
ために必要があるときは、金銭給付によつて行うことができる。
2 前項に規定する現物給付のうち、居宅介護及び施設介護は、介護機関(その事
業として居宅介護を行う者及びその事業として居宅介護支援計画を作成する者並び
に介護老人福祉施設、介護老人保健施設及び介護療養型医療施設をいう。以下同
じ。)であつて、第五十四条の二第一項の規定により指定を受けたもの(同条第二項
の規定により同条第一項の指定を受けたものとみなされた介護老人福祉施設を含
む。)にこれを委託して行うものとする。
3 前条第四項及び第五項の規定は、介護扶助について準用する。この場合にお
いて、同条第四項中「急迫した事情」とあるのは、「急迫した事情その他やむを得な
い事情」と読み替えるものとする。
(出産扶助の方法)
第三十五条 出産扶助は、金銭給付によつて行うものとする。但し、これによること
ができないとき、これによることが適当でないとき、その他保護の目的を達するため
に必要があるときは、現物給付によつて行うことができる。
2 前項但書に規定する現物給付のうち、助産の給付は、第五十五条の規定により
準用される第四十九条の規定により指定を受けた助産婦に委託して行うものとす
る。
3 第三十四条第四項及び第五項の規定は、出産扶助について準用する。
(生業扶助の方法)
第三十六条 生業扶助は、金銭給付によつて行うものとする。但し、これによること
ができないとき、これによることが適当でないとき、その他保護の目的を達するため
に必要があるときは、現物給付によつて行うことができる。
2 前項但書に規定する現物給付のうち、勤労のために必要な施設の供用及び生
業に必要な技能の授与は、授産施設若しくは訓練を目的とするその他の施設を利
用させ、又はこれらの施設にこれを委託して行うものとする。
3 生業扶助のための保護金品は、被保護者に対して交付するものとする。但し、
施設の供用又は技能の授与のために必要な金品は、授産施設の長に対して交付
することができる。
(葬祭扶助の方法)
第三十七条 葬祭扶助は、金銭給付によつて行うものとする。但し、これによること
ができないとき、これよることが適当でないとき、その他保護の目的を達するために
必要があるときは、現物給付によつて行うことができる。
2 葬祭扶助のための保護金品は、葬祭を行う者に対して交付するものとする。
第六章 保護施設
(種類)
第三十八条 保護施設の種類は、左の通りとする。
一 救護施設
二 更生施設
三 医療保護施設
四 授産施設
五 宿所提供施設
2 救護施設は、身体上又は精神上著しい障害があるために日常生活を営むことが
困難な要保護者を入所させて、生活扶助を行うことを目的とする施設とする。
3 更生施設は、身体上又は精神上の理由により養護及び生活指導を必要とする
要保護者を入所させて、生活扶助を行うことを目的とする施設とする。
4 医療保護施設は、医療を必要とする要保護者に対して、医療の給付を行うことを
目的とする施設とする。
5 授産施設は、身体上若しくは精神上の理由又は世帯の事情により就業能力の
限られている要保護者に対して、就労又は技能の修得のために必要な機会及び便
宜を与えて、その自立を助長することを目的とする施設とする。
6 宿所提供施設は、住居のない要保護者の世帯に対して、住宅扶助を行うことを
目的とする施設とする。
(保護施設の基準)
第三十九条 保護施設は、その施設の設備及び運営並びにその施設における被
保護者の数及びこれとその施設における利用者の総数との割合が厚生労働大臣の
定める最低の基準以上のものでなければならない。
(都道府県及び市町村の保護施設)
第四十条 都道府県は、保護施設を設置することができる。
2 市町村は、保護施設を設置しようとするときは、あらかじめ、厚生労働省令で定
める事項を都道府県知事に届け出なければならない。
3 保護施設を設置し
た都道府県及び市町村は、現に入所中の被保護者の保護に
支障のない限り、その保護施設を廃止し、又はその事業を縮少し、若しくは休止する
ことができる。
4 都道府県及び市町村の行う保護施設の設置及び廃止は、条例で定めなければ
ならない。
(社会福祉法人及び日本赤十字社の保護施設の設置)
第四十一条 都道府県及び市町村の外、保護施設は、社会福祉法人及び日本赤
十字社でなければ設置することができない。
2 社会福祉法人又は日本赤十字社は、保護施設を設置しようとするときは、あら
かじめ、左に掲げる事項を記載した申請書を都道府県知事に提出して、その認可を
受けなければならない。
一 保護施設の名称及び種類
二 設置者たる法人の名称並びに代表者の氏名、住所及び資産状況
三 寄附行為、定款その他の基本約款
四 建物その他の設備の規模及び構造
五 取扱定員
六 事業開始の予定年月日
七 経営の責任者及び保護の実務に当る幹部職員の氏名及び経歴
八 経理の方針
3 都道府県知事は、前項の認可の申請のあつた場合に、その施設が第三十九条
に規定する基準の外、左の各号の基準に適合するものであるときは、これを認可し
なければならない。
一 設置しようとする者の経済的基礎が確実であること。
二 その保護施設の主として利用される地域における要保護者の分布状況からみ
て、当該保護施設の設置が必要であること。
三 保護の実務に当る幹部職員が厚生労働大臣の定める資格を有するものである
こと。
4 第一項の認可をするに当つて、都道府県知事は、その保護施設の存続期間を
限り、又は保護の目的を達するために必要と認める条件を附することができる。
5 第二項の認可を受けた社会福祉法人又は日本赤十字社は、同項第一号又は
第三号から第八号までに掲げる事項を変更しようとするときは、あらかじめ、都道府
県知事の認可を受けなければならない。この認可の申請があつた場合には、第三
項の規定を準用する。
(社会福祉法人及び日本赤十字社の保護施設の休止又は廃止)
第四十二条 社会福祉法人又は日本赤十字社は、保護施設を休止し、又は廃止し
ようとするときは、あらかじめ、その理由、現に入所中の被保護者に対する措置及び
財産の処分方法を明らかにし、かつ、第七十条、第七十二条又は第七十四条の規
定により交付を受けた交付金又は補助金に残余額があるときは、これを返還して、
休止又は廃止の時期について都道府県知事の認可を受けなければならない。
(指導)
第四十三条 都道府県知事は、保護施設の運営について、必要な指導をしなけれ
ばならない。
2 社会福祉法人又は日本赤十字社の設置した保護施設に対する前項の指導に
ついては、市町村長が、これを補助するものとする。
(報告の徴収及び立入検査)
第四十四条 都道府県知事は、保護施設の管理者に対して、その業務又は会計
の状況その他必要と認める事項の報告を命じ、又は当該吏員に、その施設に立ち
入り、その管理者からその設備及び会計書類、診療録その他の帳簿書類の閲覧及
び説明を求めさせ、若しくはこれを検査させることができる。
2 第二十八条第二項及び第三項の規定は、前項の規定による立入検査について
準用する。
(改善命令等)
第四十五条 厚生労働大臣は都道府県に対して、都道府県知事は市町村に対し
て、次に掲げる事由があるときは、その保護施設の設備若しくは運営の改善、その
事業の停止又はその保護施設の停止を命ずることができる。
一 その保護施設が第三十九条に規定する基準に適合しなくなつたとき。
二 その保護施設が存立の目的を失うに至つたとき。
三 その保護施設がこの法律若しくはこれに基づく命令又はこれらに基づいてする
処分に違反したとき。
2 都道府県知事は、社会福祉法人又は日本赤十字社に対して、左に掲げる事由
があるときは、その保護施設の設備若しくは運営の改善若しくはその事業の停止を
命じ、又は第四十一条第二項の認可を取り消すことができる。
一 その保護施設が前項各号の一に該当するとき。
二 その保護施設が第四十一条第三項各号に規定する基準に適合しなくなつたと
き。
三 その保護施設の経営につき営利を図る行為があつたとき。
四 正当な理由がないのに、第四十一条第二項第六号の予定年月日(同条第五
項の規定により変更の認可を受けたときは、その認可を受けた予定年月日)までに
事業を開始しないとき。
五 第四十一条第五項の規定に違反したとき。
3 前項の規定による処分に係る行政手続法第十五条第一項又は第三十条の通
知は、聴聞の期日又は弁明を記載した書面の提出期限(口頭による弁明の機会の
付与を行う場合には、その日時)の十四日前までにしなければならない。
4 都道府県知事は、第二項の規定による認可の取消しに係る行政手続法第十五
条第一項の通知をしたときは、聴聞の期日及び場所を公示しなければならない。
5 第二項の規定による認可の取消しに係る聴聞の期日における審理は、公開に
より行わなければならない。
(管理規程)
第四十六条 保護施設の設置者は、その事業を開始する前に、左に掲げる事項を
明示した管理規程を定めなければならない。
一 事業の目的及び方針
二 職員の定数、区分及び職務内容
三 その施設を利用する者に対する処遇方法
四 その施設を利用する者が守るべき規律
五 入所者に作業を課する場合には、その作業の種類、方法、時間及び収益の処
分方法
六 その他施設の管理についての重要事項
2 都道府県以外の者は、前項の管理規程を定めたときは、すみやかに、これを都
道府県知事に届け出なければならない。届け出た管理規程を変更しようとするとき
も、同様とする。
3 都道府県知事は、前項の規定により届け出られた管理規程の内容が、その施
設を利用する者に対する保護の目的を達するために適当でないと認めるときは、そ
の管理規程の変更を命ずることができる。
(保護施設の義務)
第四十七条 保護施設は、保護の実施機関から保護のための委託を受けたとき
は、正当の理由なくして、これを拒んではならない。
2 保護施設は、要保護者の入所又は処遇に当たり、人種、信条、社会的身分又
は門地により、差別的又は優先的な取扱いをしてはならない。
3 保護施設は、これを利用する者に対して、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事
に
参加することを強制してはならない。
4 保護施設は、当該吏員が第四十四条の規定によつて行う立入検査を拒んでは
ならない。
(保護施設の長)
第四十八条 保護施設の長は、常に、その施設を利用する者の生活の向上及び更
生を図ることに努めなければならない。
2 保護施設の長は、その施設を利用する者に対して、管理規程に従つて必要な指
導をすることができる。
3 都道府県知事は、必要と認めるときは、前項の指導を制限し、又は禁止すること
ができる。
4 保護施設の長は、その施設を利用する被保護者について、保護の変更、停止
又は廃止を必要とする事由が生じたと認めるときは、すみやかに、保護の実施機関
に、これを届け出なければならない。
第七章 医療機関、介護機関及び助産機関
(医療機関の指定)
第四十九条 厚生労働大臣は、国の開設した病院若しくは診療所又は薬局につい
てその主務大臣の同意を得て、都道府県知事は、その他の病院、診療所(これらに
準ずるものとして政令で定めるものを含む。)若しくは薬局又は医師若しくは歯科医
師について開設者又は本人の同意を得て、この法律による医療扶助のための医療
を担当させる機関を指定する。
(指定医療機関の義務)
第五十条 前条の規定により指定を受けた医療機関(以下「指定医療機関」とい
う。)は、厚生労働大臣の定めるところにより、懇切丁寧に被保護者の医療を担当し
なければならない。
2 指定医療機関は、被保護者の医療について、都道府県知事の行う指導に従わ
なければならない。
(変更の届出等)
第五十条の二 指定医療機関は、当該指定医療機関の名称その他厚生労働省令
で定める事項に変更があつたとき、又は当該指定医療機関の事業を廃止し、休止
し、若しくは再開したときは、厚生労働省令で定めるところにより、十日以内に、その
旨を第四十九条の指定をした厚生労働大臣又は都道府県知事に届け出なければな
らない。
(指定の辞退及び取消し)
第五十一条 指定医療機関は、三十日以上の予告期間を設けて、その指定を辞退
することができる。
2 指定医療機関が、第五十条の規定に違反したときは、厚生労働大臣の指定し
た医療機関については厚生労働大臣が、都道府県知事の指定した医療機関につい
ては都道府県知事が、その指定を取り消すことができる。
(診療方針及び診療報酬)
第五十二条 指定医療機関の診療方針及び診療報酬は、国民健康保険の診療方
針及び診療報酬の例による。
2 前項に規定する診療方針及び診療報酬によることのできないとき、及びこれによ
ることを適当としないときの診療方針及び診療報酬は、厚生労働大臣の定めるとこ
ろによる。