投稿者 1/15 産経 日時 2001 年 1 月 16 日 14:02:35:
■危機管理やっと本腰
廃棄の「ミール」日本横断問題
政府 露にコースなど情報提供要請
正確さ不透明、募る不安
【モスクワ14日=高木桂一】二月末から三月上旬の間に廃棄処分と
なるロシアの宇宙ステーション「ミール」が、廃棄直前に日本の本州
上空を通過する問題で、日本政府がロシア当局に対し、ミールの正確
な通過コースや時間、安全性など詳細な情報を完全提供するよう公式
に要請した。イタル・タス通信が十四日伝えたもので、ロシア側の情
報をもとに文部科学省の専門家が、不測の事態が起きる可能性をコン
ピューターで算出する方針とされ、日本政府もようやく「万が一」の
危機管理対策に重い腰を上げた。
ミールの廃棄にあたり、ロシアの宇宙当局は「安全性は百パーセン
ト保証する」と断言しているが、総重量百三十六トンと、落下物体と
しては宇宙開発史上最大であるうえ、老朽化が激しいだけに、廃棄過
程で事故や故障などの予期せぬ事態も否定できないとされている。
ロシア当局の計画によると、ミールは廃棄直前にユーラシア大陸や
日本の上空を横断し、太平洋を南下、高度約百二十キロで大気圏に突
入する。
その際、機体の大半は焼失するが、エンジンや放射性物質が含まれ
る方向指示装置など約二十五トン分は燃え切らず、南太平洋上の南緯
四五度、西経一四〇度付近の落下予定地点(長さ二千キロ、幅二百キ
ロ)で破片となって「空爆のように海面上を襲う」(イズベスチヤ紙)と
いう。
上空が通過コースとなる日本に燃えかすの残がいが落ちることも
「誤差のうち」(宇宙専門家)と指摘されるうえ、通信機器の故障によ
り地上の管制センターとの交信が途絶え、ミールの自動制御が不可能
となる懸念も捨て切れない。このため、日露関係筋によると、日本政
府は近く、官邸内にミールの廃棄問題をめぐる危機管理対策室を設置
し、情報収集や対策の検討を急ぐ方針だという。
ただ、ロシアのコプチェフ航空宇宙局長は十二日、外務省との間で
ミールの廃棄に関するすべての情報を関係国に流す措置を決定したと
発表したものの、ロシア側がどれだけ正確な情報を開示するのか不透
明な点は否めず、差し迫る「Xデー」に向けて日本も気をもまざるを
得ないのが現実だ。